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Larry E. Johnson, MD, PhD
ビタミンA(レチノール)は,網膜の光受容色素であるロドプシンの生成に必要である。ビタミンAは,上皮組織の維持を補助している。正常では,肝臓は身体のビタミンAの90%を貯蔵している。ビタミンAを利用するために,体はビタミンAをプレアルブミン(トランスサイレチン)やレチノール結合蛋白と結合した形で循環系へ放出する。緑色葉野菜および黄色野菜や濃くて鮮やかな色の果物に含まれる βカロチンや他のビタミン前駆物質であるカロチノイドは,ビタミンAに変換される。カロチノイドは,調理,または細かく砕いて,脂肪分や油とともに摂取した野菜から,よりよく吸収される。
レチノール1μgは,ビタミンA3.3IU(国際単位)に相当し,βカロチン10IUに相当する。その他のビタミン前駆物質カロチノイドは,βカロチンの活性の半分である。
合成ビタミン類似物質(レチノイド)は,皮膚科領域での利用が増えつつある。βカロチン,レチノール,およびレチノイドが一部の上皮癌に対して防御的に作用する可能性については,目下研究中である。しかしながら,βカロチン補給後,特定の癌のリスクが上昇する可能性もある。
ビタミンA欠乏症
欠乏症は,不十分な摂取,脂肪吸収不良,肝臓疾患によって起こりうる。欠乏症により免疫が損なわれ,皮膚発疹や典型的な眼への影響(例,眼球乾燥症,夜盲症)を引き起こす。診断は,典型的な眼所見や低ビタミンAレベルに基づいて行う。治療はビタミンAの経口投与によるが,症状が重度,または吸収不良が原因であれば,非経口により投与する。
病因
原発性ビタミンA欠乏症は通常,長期の摂食不足によって発症する。これは,南アジアや東アジアのように,βカロチンを欠いた米を主食とする地域に特有のものである。原発性欠乏症による眼球乾燥症は,発展途上国の幼児が失明する一般的な原因である。
二次性ビタミンA欠乏症は,βカロチンのビタミンAへの変換が不十分か,ビタミンAの吸収,貯蔵,または輸送が阻害されていることによって起こることがある。スプルー,嚢胞性線維症,膵機能不全,十二指腸バイパス,慢性下痢,胆管障害,ジアルジア症,肝硬変などで,吸収や貯蔵が妨げられる可能性が高い。ビタミンA欠乏症は,長引く蛋白-エネルギー栄養不良では一般的にみられるものだが,これは食物にビタミンAが不足しているだけではなく,ビタミンAの貯蔵や輸送に障害が生じるからである。
症状と徴候
眼の暗順応障害は,初期症状であり夜盲症に至る可能性がある。眼球乾燥症(ほとんど疾病特徴的である)は,眼の角質化により起こる。眼球乾燥症は,結膜や角膜の乾燥(乾燥症)と肥厚を伴う。角膜はもやがかかったようになって,びらんとなり,角膜の破壊(角膜軟化症)へと至る可能性がある。進行した欠乏症では,上皮残屑および外気にさらされた眼球結膜上の分泌物からなる表層性の泡状斑(ビトー斑)が現れる。
皮膚の角質化のほか,呼吸器,消化管,および尿路の粘膜の角質化が生じることがある。皮膚の乾燥,鱗屑,毛包性の肥厚が生じ,気道感染が起こることがある。免疫は一般に損なわれる。
患者が若ければ若いほど,ビタミンA欠乏の影響は深刻となる。小児では,成長遅滞がよくみられる。重度のビタミンA欠乏症を有する小児において,死亡率が50%を超える可能性がある。
診断
眼所見が診断を示唆する。他の疾患(例,亜鉛欠乏症,網膜色素変性,重度の屈折障害,白内障,糖尿病性網膜症)において,暗順応障害が出ることがある。杆状体暗点測定や網膜電図検査が,ビタミンA欠乏症の検査に使用される。
血漿中のビタミンA値とレチノール結合蛋白値は,ビタミンA欠乏症のほか,急性感染症の際にも低下する。肝臓は大量にビタミンAを貯蔵しているので,感染症がなければ,欠乏状態が進むまでビタミンAレベルは低下しない。正常範囲は,20〜80μg/dL (0.7〜2.8μmol/L)である。試験的なビタミンA投与が診断の確定に役立つことがある。
予防
食事には濃緑色葉野菜や,濃くて鮮やかな色の果物(例,パパイヤ,オレンジ),ニンジン,黄色野菜(例,カボチャ,パンプキン)を加えるべきである。ビタミンAを強化した牛乳やシリアル類,レバー,卵黄,および魚肝油は,補給に有用である。食物脂肪とともに摂ると,カロチノイドはよく吸収される。牛乳アレルギーの疑いのある乳児は,十分なビタミンAが添加されている人工栄養を摂るべきである。発展途上国では,1歳を超える全ての小児に,予防投与量である66,000 μg(200,000IU)の油性のビタミンAパルミチン酸塩を4〜6カ月毎に1回,経口投与することが奨められており,6カ月未満の乳児には,17,000μg(50,000IU)を,6〜12カ月の乳児には,33,000μg (100,000IU)をそれぞれ1回投与できる。
治療
食事性欠乏症の治療には,伝統的に油性のビタミンAパルミチン酸塩20,000μg(60,000IU)を経口で1日1回2日間投与し,その後1500 μg(4500IU)を1日1回経口投与する。嘔吐,吸収不良,または眼球乾燥症があれば,6カ月未満の乳児には17,000μg(50,000IU)を,6〜12カ月の乳児には33,000μg(100,000IU)を,または12カ月を越えた小児および成人には,66,000μg(200,000IU)を2日間投与し,少なくとも2週以上経過後に3度目の投与をするべきである。長期にわたる大量の連日投与は,特に乳児に対しては,中毒症を生じる可能性があるため避けるべきである。
妊娠,授乳期間は胎児や乳児に対する障害の可能性を避けるため,予防的または治療のための服用は,4500μg(13,500IU)/日を超えるべきではない。
ビタミンA中毒症
ビタミンAの摂取により,急性(通常,小児の誤飲による)または慢性の中毒症を引き起こすことがある。急性,慢性ともに通常,頭痛および頭蓋内圧亢進が起こる。急性中毒症により悪心および嘔吐も起こる。慢性中毒症では,皮膚,毛髪,爪に変化が起こり,肝臓検査で異常値がみられ,また胎児においては先天性欠損症がみられる。診断は通常臨床的に行う。先天性欠損が認められないかぎり,用量の調整によりほぼ常に完全な回復に至る。
小児における急性中毒症は,通常誤って大量に(100,000μg [300,000IU]以上)服用することによって起こる。成人における急性中毒症は,北極探検家が北極グマ,またはアザラシの肝臓を摂取した際に生じたことがあるが,これらの肝臓には数百万単位のビタミンAが含まれていた。
年長の小児や成人における慢性中毒症は通常,33,000μg(100,000IU)/日以上の服用を何カ月も続けると生じる。結節性のニキビ,または他の皮膚疾患の患者にビタミンA,またはその代謝物を毎日多量投与(50,000〜120,000μg [150,000〜350,000IU])する場合のように,大量投与による治療が慢性中毒症の原因となる可能性がある。ビタミンAを1500μg(4500IU)/日以上摂取する成人は,骨粗鬆症を発症することがある。水混和性ビタミンAの過剰投与(6000〜20,000μg
[18,000〜60,000IU]/日)を受けた乳児は,数週間以内に中毒症の症状を発現する。先天異常は,妊娠中にニキビ治療のため,イソトレチノイン(ビタミンAに関係する)投与を受けた女性の小児に発症する。
カロチンは体内でビタミンAに変換されるにもかかわらず,カロチン過剰摂取により,カロチン血症は引き起こされるが,ビタミンA中毒症は起こらない。カロチン血症は通常,無症候性だが,皮膚カロチン症に至る場合があり,その場合,皮膚は黄変する。
症状,徴候,診断
症状は様々だが,通常,頭痛や発疹が急性または慢性中毒症時に起こる。急性中毒症は,頭蓋内圧亢進を引き起こす。眠気,いらいら,腹痛,悪心,および嘔吐が一般的にみられる。ときに,皮膚の剥離が続くことがある。
慢性中毒症の初期症状は,まばらで荒れた髪,まつ毛の脱毛,乾燥してざらざらした皮膚,ドライアイ,ひび割れた唇などである。その後,激しい頭痛,仮性脳腫瘍,および全身的脱力が起こる。皮質性過骨症や関節痛が起こることがあるが,特に小児によくみられる。容易に骨折することがあるが,特に高齢者によく起こる。小児では,毒性により,そう痒,食欲不振,発育不良を引き起こすことがある。肝脾腫が起こることもある。
皮膚カロチン症では,皮膚(強膜には起こらない)が濃黄色になり,特に手掌や足底に顕著である。
診断は臨床的に行う。ビタミンの血中濃度は,中毒症とはあまり相関しない。しかしながら,臨床診断が紛らわしければ,臨床検査が有用である。ビタミンA中毒症において,空腹時血漿レチノール値は,正常値(20〜80μg/dL
[0.7〜2.8μmol/L])から100μg/dL(3.49μmol/L)を超えるまで上昇し,ときとして2000μg/dL(69.8μmol/L)を超えることがある。高カルシウム血症がよくみられる。
ビタミンA中毒症と他の疾患とを鑑別することは,困難なことがある。皮膚カロチン症は,重度の甲状腺機能低下症や神経性食欲不振症においても生じることがあるが,これはおそらくカロチンがよりゆっくりとビタミンAに変換されるためである。
予後と治療
ビタミンAの摂取を止めると,通常は完全に回復する。慢性中毒症の症状と徴候は,通常1〜4週間で消失する。しかしながら,母親がビタミンAを大量に摂取したために起きた胎児の先天異常は,不可逆性である。
最終改訂月 2007年4月
最終更新月 2005年11月
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