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病因と病態生理
正中線上の胸痛には,消化器疾患および循環器疾患(心疾患患者へのアプローチ: 胸痛を参照 )など,多くの原因がある。食道疾患は狭心症とよく似た胸痛を起こしうる。
胸痛を評価するために食道の検査を受ける患者の約50%に胃食道逆流症(GERD)が認められる。疼痛を引き起こす他の食道疾患として,感染症(細菌,ウイルス,真菌),腫瘍,および運動障害(例,食道の運動亢進,アカラシア,びまん性食道痙攣)などがある。
食道神経受容体の感受性亢進(内臓過敏症),脊髄や中枢神経系による正常な求心性入力の増幅(異痛症)は食道胸痛の一因となりうる。
評価
症状が重複していることから,多くの食道疾患患者が心疾患を除外するために心臓の評価(冠動脈造影など)を受ける;食道疾患を除外するために消化管の検査を受ける冠動脈疾患患者もいる。
病歴:
食道疾患による胸痛と心疾患による胸痛は酷似していることがある。いずれの場合も,疼痛は重度で労作に関連していることがある。疼痛は数分から数時間持続し,数日間再発しうる。
胸焼けは,胸部に起こる胸骨下の灼熱痛で,頸部,咽喉,顔面に放散することがある。通常,食後または横になったときに起こる。胸焼けは,胃内容の口腔内逆流,およびそれに続く呑酸(胃酸が下部食道を刺激する際に迷走神経の刺激を介して起こる唾液分泌過多)を伴うことがある。典型的な胸焼けは,胃食道逆流(食道および嚥下の障害: 胃食道逆流症(GERD)を参照 )を示唆する;しかしながら,胸部中央のあらゆる不快感に対して“胸焼け”を用いる患者もいるので,特異的な症状について尋ねる必要がある。
嚥下痛は,(特に,非常に熱いまたは冷たい飲食物)嚥下時に発現する疼痛で,食道疾患を示唆する。嚥下障害を伴う場合もあり伴わない場合もある。疼痛は,灼熱感または胸骨下の絞扼感と表現される。
嚥下障害は,嚥下が困難な感覚で,食道疾患を強く示唆する。食道運動障害のある患者は,しばしば嚥下障害および嚥下痛の両方を有する。
身体診察:
身体所見で胸痛の原因として食道疾患が示唆されることはほとんどない。心血管所見については,心疾患患者へのアプローチ: 身体診察で考察。
検査:
胸部不快感がある場合は,心電図および胸部X線に加えて,患者の年齢,症状,危険因子に応じて,負荷心電図または負荷画像検査を行うべきである。心疾患が除外された場合は,しばしば以後の検査を延期して対症療法を行う。
治療が奏効しない場合または嚥下障害がある場合は,内視鏡検査または造影検査により上部消化管を評価すべきである。(GERDを除外するための)携帯型pHモニタリングおよび(エドロホニウム使用の有無にかかわらず)食道内圧検査は,食道運動障害の同定に有用である(食道および嚥下の障害: 運動障害を参照 )。
一部の医療機関では,バルーンバロスタットによる感覚閾値の評価で内臓過敏症を同定できる。治療可能な精神障害(例,パニック障害,うつ病)に対して心理社会的評価が有用なことがある。
治療
病因が見つからない場合,対症療法として,食道運動障害の可能性にはカルシウム拮抗薬,GERDの可能性にはH2ブロッカーまたはプロトンポンプ阻害薬がある。不安が要因である場合,精神療法(例,弛緩法,催眠法,認知行動療法)が有用であろう。最後に,症状が高頻度に発現する場合または日常生活に支障を来すような場合には,作用機序は不明であるが,低用量の抗うつ薬が有効なことがある。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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