メルクマニュアル18版 日本語版
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静脈瘤

静脈瘤は,門脈圧亢進症に起因する下部食道または近位胃の静脈拡張で,原因疾患は通常,肝硬変である。大量に出血することがあるが,他には何も症状を引き起こさない。診断は上部消化管内視鏡検査によって行い,治療は主に内視鏡的結紮術およびオクトレオチド静脈内投与によって行う。時に経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術を行う必要がある。

門脈圧亢進症(肝疾患がある患者へのアプローチ: 門脈圧亢進症を参照 )は,多くの病態,主に肝硬変に起因する。門脈圧がかなりの期間下大静脈圧よりも高ければ,静脈側副血行路が発達する。最も危険な側副血行路は下部食道および胃底部に発達し,静脈瘤として知られるうっ血した蛇行性の粘膜下血管が形成される。これらの静脈瘤は部分的に門脈圧を減圧するが,破裂すると大量の消化管出血を引き起こす。静脈瘤破裂の要因は不明であるが,門脈圧/全身血圧勾配が12mmHg以上でない限り,出血はほとんど起こらない。肝疾患による凝固障害は出血を促進しうる。静脈瘤患者に対する経鼻胃管挿入が出血の誘因となるということは証明されていない。

症状と徴候

患者は通常,突然の無痛性上部消化管出血を示し,大出血であることが多い。ショックの徴候がみられることもある。出血源は通常,下部食道で,それより頻度は低いが胃底部が出血源であることもある。胃静脈瘤による出血も急性のことがあるが,亜急性または慢性の方が多い。

肝機能障害患者では,消化管出血が肝性脳症を引き起こすことがある。

診断

食道および胃静脈瘤の診断には内視鏡検査が最適であり,この検査で出血のリスクが高い静脈瘤(例,赤い斑点がある)も同定されることがある。内視鏡検査はまた,静脈瘤があると分かっている患者でも,急性出血の他の原因(例,消化性潰瘍)を除外するために極めて重要である;静脈瘤があると分かっている上部消化管出血患者の3分の1の出血源は静脈瘤以外であろう。

静脈瘤は通常,重大な肝疾患に関連しているので,凝固障害の評価が重要である。臨床検査として,血小板数を含むCBC,プロトロンビン時間,部分トロンボプラスチン時間,肝機能検査などがある。出血患者に対して血液型検査および6単位の濃厚赤血球の交差適合試験を実施すべきである。

予後

患者の約80%において,静脈瘤出血は自然に止まる。それにもかかわらず,死亡率は高く,しばしば50%を上回る。死亡率を左右するのは出血そのものではなく主に関連する肝疾患の重症度である;重症肝細胞障害(例,進行した肝硬変)患者では,出血は致死的なことが多いが,肝臓予備能が良好な患者は通常回復する。

生存患者は静脈瘤出血再発のリスクが高く,一般に1〜2年以内の再発率は50〜75%である。継続的な内視鏡治療または薬物療法でこのリスクは有意に低下するが,長期死亡率に対する全体的効果は,恐らく肝臓の基礎疾患のため,ほんのわずかであるように思われる。

治療

循環血液量減少および出血性ショックの管理については,上記およびショックおよび輸液蘇生術ショックおよび輸液蘇生術を参照 を参照)に記載のとおりである。凝固異常(例,INR上昇)患者に対しては,新鮮凍結血漿1〜2単位静脈内投与およびビタミンK 2.5〜10mg筋肉内投与(重症の場合は静脈内投与)を行うべきである。

静脈瘤は内視鏡検査時に必ず診断されるので,最初の治療は内視鏡治療である。静脈瘤の内視鏡治療としては,注入硬化療法よりも内視鏡的結紮術の方が望ましい。同時に,オクトレオチド(ソマトスタチンも使用されることがあるが,オクトレオチドはこのソマトスタチンの合成類似体である)静脈内投与を行うべきである。オクトレオチドは,内臓の血管拡張ホルモン(例,グルカゴンおよび血管作動性腸管ペプチド)の放出を抑制することによって内臓の血管抵抗を増加させる。常用量は,50 μg静脈内ボーラス投与後,50 μg/時間注入である。副作用がより少ないので,バソプレシンおよびテルリプレシンなどの以前使用されていた薬剤よりもオクトレオチドの方が望ましい。

これらの治療にもかかわらず,出血が持続または再発する場合には,門脈系から大静脈への血流を迂回させる緊急手術で門脈圧を低下させ,出血を減少させることができる。経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)は第一選択の緊急介入である:この手技は侵襲的放射線手技で,ガイドワイヤを大静脈から肝実質を経由して門脈循環に進める。得られた通路をバルーンカテーテルで拡張し,金属ステントを挿入し,門脈と肝静脈循環の間にバイパスを形成する。ステントの口径は非常に重要である:大きすぎれば,肝臓からの過剰な門脈血流の分流によって,肝性脳症が生じる。一方,小口径のステントは閉塞する可能性が高い。遠位脾腎静脈シャント術などの門脈大静脈シャント術は,同様の機序で機能するが,侵襲性および直死率がより高い。

セングスターケン-ブレークモアチューブまたはその一種による出血静脈瘤の機械的圧迫はかなり多くの合併症を伴い,第1選択の管理として施行してはならない。しかしながら,そのような管を用いたタンポナーデはTIPSまたは外科手術による減圧まで生命をつなぎ止めうる。この管は,胃と食道用の2つのバルーンが付いた軟性経鼻胃管である。挿入後,胃バルーンを一定量の空気で膨らまし,バルーンが胃食道接合部にぴったり合うまでチューブを牽引する。止血にはこれで十分なことが多いが,そうでなければ,食道バルーンを25mmHgまで膨らます。この手技は極めて不快で,食道穿孔および誤嚥を引き起こすことがある;したがって,気管内挿管および静脈内鎮静法がしばしば推奨される。

肝移植も門脈圧を減圧しうるが,これはすでに移植順番待ちの患者だけに現実的な選択肢である。

門脈圧亢進症に対する長期薬物療法(β遮断薬および硝酸薬による治療)については,肝疾患がある患者へのアプローチ: 予後と治療で考察。肝性脳症の治療を要することがある(肝疾患がある患者へのアプローチ: 治療を参照 )。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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