メルクマニュアル18版 日本語版
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腸閉塞

腸閉塞は,腸内容の腸管内通過の著しい障害または完全停止を来した状態である。症状として,痙攣痛,嘔吐,重度の便秘,排ガスの停止などがある。診断は臨床的に行い,腹部X線検査で診断を確定する。治療として,輸液蘇生術,経鼻胃管吸引,大部分の完全閉塞に対して手術を行う。

機械的閉塞は,小腸閉塞(十二指腸を含む)と大腸閉塞に分類される。閉塞は,部分または完全閉塞である。小腸の部分閉塞の約85%は非手術的治療で治癒するが,小腸の完全閉塞の約85%は手術を要する。

病因

概して,機械的閉塞の最も一般的な原因は,癒着,ヘルニア,腫瘍である。他の一般的な原因は,憩室炎,異物(胆石を含む),腸捻転(腸間膜を軸として腸管がねじれた病態),腸重積(腸管の一部が腸管の別の部分に嵌入した状態―新生児および乳児における消化器疾患: 腸重積を参照 ),宿便である。原因は腸の部位によって異なるy(急性腹症と消化器外科: 腸閉塞の原因表 3: 表を参照)。

表 3

腸閉塞の原因

部位

原因

結腸

腫瘍(通常,脾弯曲またはS状結腸曲),憩室炎(通常,S状結腸),S状結腸捻転または盲腸捻転,宿便,ヒルシュスプルング病

十二指腸

 

成人

十二指腸癌または膵頭部癌

新生児

先天性閉鎖症,腸捻転,帯,輪状膵

空腸および回腸

 

成人

ヘルニア,癒着(一般的),腫瘍,異物,メッケル憩室,クローン病(珍しい),回虫寄生,中腸軸捻転,腫瘍による腸重積(珍しい)

新生児

胎便性イレウス,腸回転異常による腸捻転,先天性閉鎖症,腸重積

病態生理

単純性機械的閉塞では,血行障害を伴わずに閉塞が起こる。摂取した水分および食物,消化分泌液,ガスが閉塞部より上部に蓄積する。近位腸管は拡張し,遠位腸管は虚脱する。粘膜の正常な分泌吸収機能は低下し,腸壁は浮腫状およびうっ血状態となる。重度の腸管拡張は永続性かつ進行性で,蠕動障害および分泌障害を強め,脱水のリスクおよび絞扼性閉塞への進行のリスクを増加させる。

絞扼性閉塞は血行障害を伴う閉塞で,小腸閉塞患者のほぼ25%に起こる。通常,ヘルニア,腸捻転,腸重積に関連している。絞扼性閉塞は早ければ6時間で梗塞および壊疽に進行しうる。最初に静脈閉塞,続いて動脈閉塞が起こり,結果として急激な腸壁虚血が起こる。虚血腸管は浮腫状になり,梗塞を起こし,壊疽および穿孔を来す。大腸閉塞では,絞扼性閉塞はまれである(腸捻転による閉塞を除く)。

虚血部分(特に小腸)または著明な拡張が起こった場合に穿孔が起こりうる。盲腸は直径13cm以上に拡張した場合にリスクが高い。閉塞部位では,腫瘍または憩室の穿孔も起こりうる。

症状と徴候

小腸閉塞では,発症直後に次の症状が起こる:臍周囲または心窩部を中心とする腹部痙攣,嘔吐,完全閉塞患者では重度の便秘。部分閉塞患者は下痢を発症することがある。持続性の激痛は,絞扼されていることを示唆する。絞扼されていない限り,腹部の圧痛はない。亢進した高ピッチの蠕動および痙攣と同時に起こる急速で長い蠕動が典型的である。時に,拡張した腸係蹄を触知できる。梗塞がある場合,腹部に圧痛を認め,聴診では腸雑音消失または蠕動微弱を認める。ショックおよび乏尿は,末期の単純性閉塞または絞扼を示す重篤な徴候である。

大腸閉塞では,通常,小腸閉塞で起こる症状よりも軽度の症状が徐々に発現する。便秘が悪化すると,重度の便秘および腹部膨満を来す。嘔吐が起こることがあるが(通常,他の症状の発現から数時間後),あまり一般的ではない。排便のない下腹部痙攣が起こる。身体診察では通常大きな腹鳴を伴う腹部膨満を認める。圧痛はなく,通常直腸は空である。閉塞性腫瘍の部位に一致して腫瘤を触知できることがある。全身症状は比較的軽度で,水分および電解質の不足はまれである。

腸捻転はしばしば突発する。疼痛は持続性で,時に疝痛の波が併発する。

診断

仰臥位および立位腹部X線検査を行うべきであり,閉塞を診断するには通常これらの検査で十分である。開腹術は絞扼の確定診断を下すことができる唯一の方法であるが,慎重な一連の診察および検査(例,CBCおよび乳酸値を含む血清化学的検査)が早期警告を発することがある。

はしご様の一連の拡張した小腸係蹄は小腸閉塞に特有の単純X線所見であるが,右側結腸閉塞でもみられることがある。立位像で腸に液性鏡面像を認める。イレウスでは,同様であるがおそらくそれほど劇的でないX線所見および症状が認められ(閉塞を伴わない腸麻痺―急性腹症と消化器外科: イレウスを参照 ),鑑別が困難なことがある。拡張した係蹄および液性鏡面像を認めず,空腸上部閉塞または閉鎖係蹄の絞扼性閉塞(腸捻転で起こることがある)を認めることがある。X線上,腸梗塞による腫瘤効果を認めることがある。腸壁のガス(腸管気腫症)は壊疽を示す。

大腸閉塞では,腹部X線で閉塞部の近位にある結腸の拡張が認められる。盲腸捻転では,腹部中央または左上腹部に大きな気泡が認められることがある。注腸造影では,盲腸捻転およびS状結腸捻転の閉塞部位は,捻転部位での典型的な“鳥のくちばし”様変形によって示される;この手技によってS状結腸捻転が実際に整復されることがある。注腸造影を行わない場合,S状結腸捻転については減圧に大腸内視鏡を使用できるが,盲腸捻転でうまくいくことはめったにない。

治療

腸閉塞の可能性のある患者は入院させるべきである。急性腸閉塞の治療は診断と同時に進める必要がある。外科医は常に関与すべきである。

小腸閉塞と大腸閉塞に対する支持療法は類似している:経鼻胃管吸引,静脈内輸液(血管内容量の補充に0.9%生理食塩液または乳酸加リンゲル液),水分排出量をモニタリングするための尿道カテーテル。電解質補給は検査結果に基づいて行うべきであるが,繰り返し嘔吐がある場合には血清NaおよびKは枯渇している可能性がある。腸の虚血または梗塞が疑われる場合には,抗生物質を投与すべきである(例,セフォテタン2g静脈内投与など,第3世代セファロスポリン)。

具体的な治療法: 成人における十二指腸閉塞に対しては切除術を行うが,病変を切除できない場合には緩和的胃空腸吻合術を行う(小児の治療については先天性消化管異常: 十二指腸閉塞を参照 )。

小腸完全閉塞には早期開腹術を行うことが望ましいが,極めて状態の悪い脱水患者については体液状態および尿量の改善を目的として手術を2または3時間遅らせることができる。原因病変を可能な限り切除する。胆石が閉塞の原因である場合は,同時にまたは後で胆嚢摘除術を施行できる。ヘルニア修復術,異物の除去,癒着剥離術など,再発を予防するための手技を行うべきである。癒着が原因の術後早期閉塞または繰り返し起こる閉塞のある患者には,腹膜炎の徴候がなければ,手術ではなく長いイレウス管による単純な挿管(多くの人に標準的経鼻胃管は同等に有効であると考えられている)を試みてもよい。

小腸を閉塞する癌性腹膜炎は消化管悪性腫瘍成人患者の主な死因である。外科的にまたは内視鏡的ステント留置によって閉塞部をバイパスすることで症状が一時的に緩和することがある。

閉塞性結腸癌はしばしば一期的切除および吻合で治療できる。他の選択肢として,回腸瘻造設術および遠位側吻合術などがある。時に,人工肛門造設術施行後,二期的に切除術を行う必要がある。

憩室炎が閉塞の原因である場合,穿孔がしばしば認められる。病変部の切除は非常に困難なことがあるが,穿孔および汎発性腹膜炎がある場合には適応となる。切除術および人工肛門造設術施行後,二期的に吻合術を行う。

宿便は通常直腸にみられ,指および浣腸で取り除ける。しかしながら,完全閉塞を引き起こす硬便または混入便(すなわち,バリウムまたは制酸薬混入便)は開腹術を要する。

盲腸捻転の治療として,病変部の切除術および吻合術を行い,虚弱な患者については盲腸吻合術によって盲腸を正常位置に固定する。S状結腸捻転では,内視鏡または長い直腸管でしばしば係蹄を減圧できるので,切除術および吻合術を数日間延期できる。切除しなければ,再発はほぼ必然的に起こる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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