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膿瘍は腹腔および後腹膜のどこにでも生じる。主に,術後,外傷後,または腹部感染および炎症に伴って発生し,特に腹膜炎または穿孔が起こった場合に形成される。症状は,倦怠感,発熱,腹痛である。診断はCTにより行う。治療は外科的または経皮的ドレナージのいずれかを行う。抗生物質は補助的に用いる。
病因と病態生理
腹部膿瘍は,腹腔内,後腹膜,内臓膿瘍に分類される(急性腹症と消化器外科: 腹部膿瘍表 4: を参照)。多くの腹部膿瘍は中空臓器の穿孔(急性腹症と消化器外科: 急性穿孔を参照 )または結腸悪性腫瘍に続いて発生する。他の膿瘍は,虫垂炎,憩室炎,クローン病,膵炎,骨盤内炎症性疾患などの病態または汎発性腹膜炎を引き起こすあらゆる病態に起因する感染または炎症の周囲への波及によって発生する。開腹術,特に消化管または胆道の手術は,別の重大な危険因子である:吻合部縫合不全などにより術中または術後に腹膜が汚染されることがある。外傷性腹部損傷,特に肝臓,膵臓,脾臓,腸の裂傷および血腫は,外科的治療の有無にかかわらず,膿瘍を形成することがある。
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表 4
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腹部膿瘍
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部位
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病因
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起炎菌
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腹腔内
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術後;消化管の穿孔,虫垂炎,憩室,腫瘍;クローン病;骨盤内炎症性疾患;あらゆる病因による汎発性腹膜炎
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腸内細菌叢,しばしば多菌性
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後腹膜
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虫垂炎,憩室炎,腫瘍の穿孔;クローン病;膵炎
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腸内細菌叢,しばしば多菌性
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腎実質膿瘍の広がり(腎盂腎炎,まれに遠隔部位からの血行性膿瘍)
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好気性グラム陰性桿菌
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内臓
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外傷,上行性胆管炎,経門脈性菌血症
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胆汁由来であれば,好気性グラム陰性桿菌;経門脈性菌血症であれば,多菌性腸内細菌叢;アメーバ感染が起こることがある(腸内原虫: アメーバ症を参照 )
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外傷,急性膵炎
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腸内細菌叢,しばしば多菌性
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外傷,血行性,梗塞(鎌状赤血球症,マラリアなどの場合)
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ブドウ球菌,レンサ球菌,嫌気性菌,好気性グラム陰性桿菌(サルモネラなど),免疫不全患者におけるカンジダ
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起炎菌は通常,正常な腸内細菌叢を反映し,嫌気性菌および好気性菌が複雑に混合している。最も多い分離株は,好気性グラム陰性桿菌(例,大腸菌およびクレブシエラ)ならびに嫌気性菌(特に,バクテロイデス-フラジリス)である。
排膿されていない膿瘍は,隣接構造にまで及び,隣接血管に侵食し(出血または血栓症を引き起こす),破裂して腹腔内または腸内に流入し,皮膚瘻を形成することがある。横隔膜下膿瘍は,胸腔に及び,膿胸,肺膿瘍,肺炎を引き起こすことがある。脾膿瘍は,心内膜炎における持続性菌血症のまれな原因であり,適切な化学療法にもかかわらず持続する。
症状と徴候
膿瘍は穿孔または重症腹膜炎から1週間以内に形成されうるが,術後膿瘍は術後2〜3週間まで,まれに数カ月間形成されないことがある。症状は様々であるが,大部分の膿瘍は発熱および軽微から重度の腹部不快感(通常,膿瘍付近)を引き起こす。広汎性または限局性の麻痺性イレウスが発現することがある。悪心,食欲不振,体重減少がよくみられる。
結腸に隣接するダグラス窩膿瘍が下痢を引き起こすことがあり,これが膀胱へ波及すると尿意切迫および頻尿が起こることがある。
横隔膜下膿瘍は,乾性咳嗽,胸痛,呼吸困難,肩痛などの胸部症状を引き起こすことがある。ラ音,摩擦音が聞こえることがある。肺基底部の無気肺,肺炎,胸水が起こると,通常,打診濁音および呼吸音減弱が認められる。
一般に,膿瘍部に圧痛がある。大きな膿瘍は腫瘤として触知できることがある。
診断
膿瘍が疑われる場合には,経口造影剤使用による腹部および骨盤部CTが望ましい診断法である。他の画像診断を行った場合,異常が認められることがある;単純腹部X線で膿瘍内の腸管外ガス,隣接臓器の偏位,膿瘍を示す軟部組織濃度,腰筋陰影消失を認めることがある。横隔膜付近の膿瘍は,胸部X線上,同側胸水,片側横隔膜の挙上または不動,下葉浸潤,無気肺などの異常所見として認められることがある。
CBCおよび血液培養を実施すべきである。大部分の患者で白血球増加がみられ,貧血も一般的にみられる。
時に,インジウム111標識白血球を使用する放射性核種スキャンが腹部膿瘍の同定に有用なことがある。
予後と治療
腹部膿瘍による死亡率は10〜40%である。転帰は,膿瘍の特異的な性質および位置ではなく,主に患者の基礎疾患または損傷および全身状態によって決まる。
経皮的カテーテル法または外科手術によって全ての腹部膿瘍の排膿を行う必要がある。カテーテルドレナージ(CTまたは超音波ガイド下で留置)は,次のような場合に適切であろう:膿瘍腔がほとんどない場合;排膿路が腸や汚染されていない臓器,胸膜,腹膜を横切らない場合;汚染源がコントロールされている場合;膿がカテーテルを通過するほど薄い場合。
抗生物質は治癒的ではないが,血行性の広がりを抑えると考えられ,介入前後に投与すべきである。治療には,アミノ配糖体(例,ゲンタマイシン1.5mg/kg,8時間毎)とメトロニダゾール500mg,8時間毎の併用など,腸内細菌叢に抗菌力を示す薬物の投与が必要である。セフォテタン2g,12時間毎の単剤療法も妥当である。抗生物質の使用歴がある患者または院内感染患者には,耐性好気性グラム陰性桿菌(例,シュードモナス)および嫌気性菌に抗菌力を示す薬物を投与すべきである。
栄養補給は重要であり,経腸栄養法が望ましい。経腸的に投与できない場合には,早期に経静脈栄養法を開始すべきである。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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