メルクマニュアル18版 日本語版
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はじめに

Sidney Cohen, MD

胃酸は胃の近位3分の2(胃体部)に存在する壁細胞から分泌される。胃酸は,ペプシンおよび胃リパーゼの至適pHにすること,膵重炭酸塩分泌を刺激することによって消化を助ける。酸分泌は食物によって引き起こされる:胃の遠位3分の1(胃前庭部)に存在するガストリン分泌G細胞は,食物について考えること,食物のにおい,食物の味によって迷走神経刺激を受ける。蛋白質が胃に到達するとさらにガストリン分泌が刺激される。循環血液中のガストリンは,胃体部に存在する腸クロム親和性細胞様細胞からのヒスタミン遊離を誘発する。ヒスタミンは,H2受容体を介して壁細胞を刺激する。壁細胞は酸を分泌し,結果として起こるpH低下によって前庭部D細胞からソマトスタチンが分泌され,ガストリン放出が抑制される(負のフィードバック制御)。

酸分泌は出生時にみられ,2歳までに成人レベル(体重ベース)に達する。慢性胃炎を起こした高齢患者において酸分泌量の減少が認められるが,そうでなければ酸分泌量は生涯を通して維持される。

正常では,消化管粘膜は次の複数の異なる機序によって保護されている:(1)粘膜から分泌される粘液およびHCO3によって,胃内腔(低pH)から粘膜(中性)のpH勾配が形成される。粘液は,酸およびペプシンの拡散に対する障壁となる。(2)上皮細胞は,膜輸送系を介して過剰な水素イオン(H+)を除去し,また,密着結合を有し,これがH+の逆拡散を防ぐ。(3)粘膜血流は,上皮層に拡散した過剰な酸を除去する。複数の成長因子(例,上皮成長因子,インスリン様増殖因子Ⅰ)およびプロスタグランジンが粘膜修復および粘膜構造の維持に関連している。

これらの粘膜防御を妨げる因子(特に,NSAIDおよびリコバクター-ピロリ感染症)は,胃炎および消化性潰瘍の素因となる。

NSAIDは,粘膜炎症および潰瘍形成(時に消化管出血を伴う)を局所的および全身的に促進する。NSAIDは,酵素シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害によるプロスタグランジン生合成抑制によって,胃血流量の減少,粘液およびHCO3分泌の低下,細胞修復および複製の低下を引き起こす。また,NSAIDは弱酸で,胃液pHではイオン化していないため,粘液バリアを越えて胃上皮細胞に自由に拡散し,そこでH+は遊離され,結果として細胞傷害が起こる。胃のプロスタグランジン生合成にはCOX-1が関与しているため,COX-2を選択的に阻害するNSAIDは他のNSAIDよりも胃の副作用が少ない。

最終改訂月 2007年1月

最終更新月 2005年11月

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