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David B. Sachar, MD
Aaron E. Walfish, MD
潰瘍性大腸炎は,大腸粘膜に起こる慢性炎症性潰瘍性疾患で,ほとんどの場合血性下痢を特徴とする。腸管外症状,特に関節炎が起こることがある。大腸癌の長期リスクは高い。診断は大腸内視鏡検査による。治療は5-ASA,コルチコステロイド,免疫調節薬,抗サイトカイン薬,抗生物質,および時として手術による。
病態生理
潰瘍性大腸炎(UC)は通常,直腸から始まる。UCは,直腸に限局するか(潰瘍性直腸炎),近位に及び,時に結腸全体を侵す。まれに,大腸の大部分を一度に侵す。
UCの炎症は粘膜および粘膜下層を侵し,正常組織と罹患組織の間にはっきりとした境界がある。重症例に限り筋層が侵される。初期の症例では,粘膜は紅斑性,微細顆粒状でもろく,正常な血管パターンを欠き,しばしば出血部が散在している。おびただしい化膿性滲出液を伴う大きな粘膜の潰瘍が重症例の特徴である。比較的正常なまたは過形成の炎症性粘膜の島(偽ポリープ)が,潰瘍のできた粘膜の上に飛び出している。瘻孔および膿瘍は発生しない。
潰瘍が腸壁全層に及び,結果として限局性イレウスおよび腹膜炎が起こった場合に,劇症大腸炎が発症する。数時間から数日以内に,結腸は弛緩し,拡張し始める。
中毒性巨大結腸症(または中毒性大腸拡張症)は,重度の全層性炎症が原因となって結腸の拡張および時に穿孔が生じる救急疾患である。増悪時に横行結腸の直径が6cmを越える場合,中毒性巨大結腸症の合併が考えられる。この病態は通常,非常に重度の大腸炎の経過中に自然に発生するが,オピオイドまたは抗コリン性止瀉薬によって引き起こされることもある。結腸穿孔によって死亡率が著明に上昇する。
症状と徴候
血性下痢の程度や持続期間は様々であり,無症状の中断期間がはさまれる。通常,侵襲は便意切迫,軽度の下腹部痙攣,粘血便を伴い潜行性に始まる。一部の症例は感染(例,アメーバ症,細菌性赤痢)後に発症する。
潰瘍形成が直腸S状結腸に限局している場合は,便は正常便または乾燥した硬便で,排便に伴って,または排便と排便の間に直腸から赤血球および白血球を含む粘液が分泌される。全身症状は全くないか軽度である。潰瘍が近位に及ぶと,軟便となり,患者の排便回数は10回/日を越えることがあり,しばしば激しい痙攣と苦痛な直腸しぶりを伴い,夜通し続く。便は水様便または粘液便で,しばしばほぼ完全に血液および膿から成ることがある。重症例では,患者は数時間にわたって出血し,緊急輸血が必要となることがある。
劇症大腸炎は,突然の激しい下痢,40°C(104°F)の発熱,腹痛,腹膜炎の徴候(例,反跳痛),および重症の毒血症を呈する。
重度のUCに起こることが多い全身症状として,倦怠感,発熱,貧血,食欲不振,および体重減少などがある。腸管外発現(特に関節と皮膚の合併症―炎症性腸疾患: 腸管外発現を参照 )は,全身症状がある場合に最も多くみられる。
診断
初発症状:
典型的な徴候および症状は,特に腸管外発現または類似した発作の既往歴を伴う場合に,診断を示唆する。UCはクローン病(炎症性腸疾患: クローン病と潰瘍性大腸炎の鑑別表 1: および上述参照)および急性大腸炎の他の原因(例,感染;高齢患者では虚血)と鑑別する必要がある。
全ての患者において,腸内病原菌の便培養を行うべきであり,新鮮便検体の検査により赤痢アメーバを除外すべきである。疫学的な病歴または旅行歴からアメーバ症が疑われる場合は,血清抗体価を調べ,生検を行うべきである。抗生物質の使用歴または最近の入院歴があれば,クロストリジウム-ディフィシレ毒素の便検査を行うべきである。リスクのある患者にHIV,淋病,ヘルペスウイルス,クラミジア,およびアメーバ症の検査を行うべきである。免疫抑制患者では,日和見感染(例,サイトメガロウイルス,鳥型非定型抗酸菌)またはカポジ肉腫についても検討する必要がある。経口避妊薬を使用している女性では,避妊薬起因性大腸炎の可能性がある;これは通常ホルモン療法中止後に自然に消失する。
S状結腸鏡検査を行うべきである;これによって,大腸炎の視覚的確認が可能になり,培養,顕微鏡検査,病変部の生検のための直接サンプリングが可能になる。しかしながら,異なる種類の大腸炎の間で外観にかなりの重複があるので,視診および生検はともに診断の決め手とはならないことがある。重度の肛門周囲病変,直腸病変非合併,出血がみられない,結腸の非対称性または区域性病変は,UCではなくクローン病を示唆する(炎症性腸疾患: クローン病と潰瘍性大腸炎の鑑別表 1: )。
大腸内視鏡検査は通常,初期には不必要であるが,炎症がS状結腸鏡の届く範囲より近位に及んでいる場合は,待機的に行うべきである。
貧血,低アルブミン血症,および電解質異常をスクリーニングするために,臨床検査を行うべきである。肝機能検査を行うべきである;アルカリホスファターゼおよびγ‑グルタミルトランスペプチターゼ値の上昇は,原発性硬化性胆管炎の可能性を示唆する。核周囲抗好中球細胞質抗体は比較的UCに特異的である(60〜70%)。抗サッカロミセス-セレヴィシア抗体はクローン病に比較的特異的である。しかしながら,これらの検査は2つの疾患を確実に鑑別できる方法ではなく,ルーチンの診断法として推奨されない。
X線は診断の決め手とはならないが,時として異常を示す。腹部単純X線では,病変部腸管の粘膜浮腫,ハウストラの消失,および有形便の欠如を認めることがある。バリウム注腸はより明確ではあるが,同様の変化を示し,また,潰瘍を証明することもあるが,急性期に行ってはならない。発症から数年後には,粘膜の萎縮や偽ポリープを伴う短縮硬化した大腸がしばしば認められる。拇指圧痕像および区域性分布のX線所見はUCではなく,腸管虚血またはおそらくクローン結腸炎を示唆している。
再発症状:
既知の疾患および典型的な症状の再発のある患者の検査を行うべきであるが,広範囲の検査は必ずしも必要でない。症状の期間および重症度により,S状結腸鏡検査または大腸内視鏡検査,およびCBCを行う。再発に非典型的な特徴がある場合,または長期寛解後,伝染病流行時,抗生物質暴露後に悪化した場合,または臨床医が疑いを抱いたときはいつでも,培養,寄生虫卵検査,およびクロストリジウム-ディフィシル毒素の検査を行うべきである。
劇症型の症状:
重度の急性増悪期に,患者をさらに評価する必要がある。臥位および立位腹部X線検査を行うべきである;検査では筋緊張消失の結果である巨大結腸または結腸の長くつらなった麻痺部分に蓄積した腔内ガスを認めることがある。大腸内視鏡検査およびバリウム注腸は,穿孔のリスクがあるため避けるべきである。CBC,赤血球沈降速度,電解質,プロトロンビン時間,部分トロンボプラスチン時間の測定,血液型検査および交差試験を行うべきである。
進行性の腹膜炎または穿孔がないかどうか,患者を注意深く観察する必要がある。特に高用量のコルチコステロイドによって腹膜炎の徴候が隠されている患者においては,肝濁音界の消失が遊離穿孔の最初の臨床徴候であることがあるので,肝臓の打診が重要である。結腸拡張の経過を観察し,遊離ガスまたは壁内ガスを検出するために,1〜2日ごとに腹部X線検査を行う。
予後
通常,UCは再燃と寛解を繰り返す慢性疾患である。約10%の患者において,初回発作が,大量出血,穿孔,または敗血症および毒血症を伴い,劇症化する。別の10%は1回の発作のみで,その後完全に回復する。
限局性潰瘍性直腸炎患者の予後は最もよい。重度の全身性症状,中毒性合併症,および悪性変性が起こる可能性は低く,疾患の遅延性拡大は約20〜30%にしか起こらない。外科手術はめったに必要ではなく平均余命は正常である。しかしながら,症状は頑固で難治性である可能性がある。さらに,広範なUCは直腸から始まって近位に波及することがあるため,6カ月以上観察するまで限局性直腸炎とみなしてはならない。後になって広がる限局性疾患の方がしばしば重症で治療抵抗性である。
大腸癌:
大腸癌のリスクは,罹病期間と侵された大腸の量に比例するが,必ずしも疾患の活動性に比例するとは限らない。広範囲の大腸炎を有する患者においては,発症から7年までに癌が発症し始める。癌の累積尤度は15年で約3%,20年で約5%,25年で約9%であり,10年目以降の年間リスクは約0.5〜1%である。罹病期間の長期化と無関係な小児期発症大腸炎患者では,おそらく癌の絶対リスクは増加しない。
罹病期間が8〜10年以上の患者には,できれば寛解期に,定期的な大腸内視鏡検査によるサーベイランスが勧められる(孤立性直腸炎以外)。内視鏡生検は10cm毎に大腸全体にわたって行うべきである。大腸炎病変部の明らかな異形成は,異型度にかかわらず,より進行した腫瘍および場合によっては癌に進行する傾向があり,異形成が孤立性で完全に切除可能なポリープに厳密に限局している場合を除いて,大腸全摘術を行うことが強く勧められる。明らかな腫瘍性異型と,炎症に続発する反応性または再生性異型を鑑別することが重要である。しかしながら,明らかな異型を認める場合に,結腸切除を行わないでフオローアップサーベイランスを繰り返すことは危険である。偽ポリープは予後を左右するものではないが,腫瘍性ポリープとの鑑別が困難なことがある;したがって,疑わしいポリープは全て切除生検すべきである。
大腸内視鏡検査によるサーベイランスの至適頻度は確立されていないが,一部の専門家は,発症から11〜20年の間は2年毎,それ以降は毎年行うよう勧めている。
大腸炎関連癌診断後の長期生存率は約50%で,この数字は,一般集団の結腸直腸癌の数字に匹敵する。
治療
具体的な薬物およびレジメンの詳細については前述参照。
一般的な管理:
生の果物や野菜を避けることによって,大腸の炎症粘膜の外傷が最小限に抑えられ,症状が緩和することがある。牛乳を含まない食事が役立つこともあるが,特に改善がみられなければ続ける必要はない。ロペラミド2.0mg,経口にて1日2回から4回は比較的軽度の下痢に適応となる;より激しい下痢にはより高用量の経口投与(朝4mg,排便後毎回2mg)が必要となることがある。中毒性大腸拡張症を起こす恐れがあるので,重症例に対して止瀉薬を使用する際には細心の注意を払う必要がある。
軽度の左側大腸炎型:
直腸炎,または脾彎曲部を越えて近位に広がっていない大腸炎を有する患者には,5-アミノサリチル酸(5-ASA,メサラミン)を重症度により1日1回または2回注腸投与する。坐薬はより遠位の疾患に有効で,通常,患者の好みによる。コルチコステロイドおよびブデソニド注腸はやや効果が劣るが,5-ASAが成功しない場合またはそれに耐えられない場合に使用すべきである。寛解が得られたら,用量を維持量まで徐々に漸減する。経口5-ASAによって,理論的には疾患が近位に広がる可能性がさらに低下する。
中等度または広範囲の疾患:
P脾弯曲部より近位の炎症,または局所薬に反応しない左側大腸炎を有する患者には,5-ASA注腸に加えて5-ASAの経口剤を投与すべきである。より重度の症状には,高用量のコルチコステロイドを追加する;1〜2週間後に1日量を約5〜10mg/週の割合で減量する。
重度の疾患:
1日10回を越える血便,頻脈,高熱,または激しい腹痛がある患者は,高用量のコルチコステロイドの静注のため入院を必要とする。5-ASAは継続してもよい。脱水および貧血に対して,必要に応じて静脈内輸液および輸血を行う。中毒性巨大結腸症の発症がないかどうか患者を注意深く観察する必要がある。経静脈高カロリー輸液は栄養補給のために時々用いられるが,主な治療法として有用ではない;食物を経口摂取できる患者は摂取すべきである。
3〜7日以内に反応しない患者では,静注シクロスポリンまたは手術を考慮すべきである。奏効患者については,約1週間以内にプレドニゾン60mg,1日1回経口投与に切り替え,臨床反応に基づいて自宅で徐々に減量してもよい。
劇症大腸炎:
劇症型大腸炎または中毒性巨大結腸症が疑われる場合:(1)全ての止瀉薬を中止する;(2)絶食とし,長いイレウス管を挿入し間欠的に吸引;(3)積極的静脈内輸液および0.9%塩化ナトリウムによる電解質療法を行い,必要に応じて,塩化カリウム投与および輸血を行う;(4)高用量の静注コルチコステロイドを投与する;(5)抗生物質(例,メトロニダゾール500mg,8時間毎に静脈内投与およびシプロフロキサシン500mg,12時間毎に静脈内投与)を投与する。
患者に仰臥位から腹臥位へと2〜3時間毎に体位変換してもらうことは,大腸ガスの再分布および進行性腹部膨満の予防に有用なことがある。柔らかい直腸管の挿入も有用なことがあるが,腸穿孔を避けるために細心の注意を払って行う必要がある。
内科的集中治療で24〜48時間以内に明らかな改善がみられない場合には,直ちに外科的手術を行う必要があり,さもなければ,患者は穿孔によって引き起こされる敗血症で死亡するであろう。
維持療法:
急性増悪の改善後,コルチコステロイドは臨床反応に基づいて漸減し,中止する;それらは維持療法としては効果がない。維持療法の中止によってしばしば疾患が再発するので,患者は5-ASA製剤(病変部位に応じて,経口または直腸製剤)を無期限に継続すべきである。直腸製剤の投与間隔は2日または3日毎へと徐々に延長してもよい。
コルチコステロイドを中止できない患者にはアザチオプリンまたは6-メルカプトプリンを投与すべきである。
手術:
広範なUCのある患者の3分の1近くが,最終的に手術を必要とする。大腸全摘術は治癒的である:平均余命と生活の質が正常に回復し,疾患は再発せず(クローン病とは異なる),大腸癌のリスクがなくなる。
大量出血,劇症中毒性大腸炎,穿孔は,緊急大腸切除術の適応となる。最重症の患者はより広範囲な手術に耐えられないため,回腸瘻造設術と直腸S状結腸閉鎖または粘液瘻造設術を伴う大腸亜全摘術が通常,第1選択手技である。直腸S状結腸断端は後日,待機的に切除するか,または回腸嚢作製を伴う回腸肛門吻合術に用いることがある。疾患の活動化と悪性化のリスクがあるので,無傷の直腸断端を,無期限に残しておくべきではない。
2人の病理学者によって確認された粘膜の高度異形成,明確な癌,全ての症候性狭窄,小児の発育遅滞,または最も一般的には,病弱またはコルチコステロイド依存症につながる難治性慢性疾患が待機的手術の適応となる。まれに,重症の大腸炎関連腸管外発現(例,壊疽性膿皮症)も手術の適応となる。正常な括約筋機能を有する患者に対する第1選択の待機的手技は,回腸肛門吻合術を伴う肛門機能温存直腸結腸切除術である。この手技では遠位回腸から骨盤内リザーバーまたは回腸嚢を作製し,肛門に吻合する。無傷の括約筋は排便の随意調節が可能であり,排便回数は通常,1日8〜10回である。回腸嚢炎は,この手技を受けた患者の約50%に起こる炎症反応である。これは腸内細菌異常増殖に関連していると考えられ,抗生物質(例,キノロン系)で治療する。プロバイオティクスは予防的であろう。大部分の回腸嚢炎症例は容易にコントロールされるが,5〜10%は全ての薬物療法に抵抗性を示す可能性がある。代わりの外科的手技として,随意型回腸瘻造設術(コック嚢)または,より多くは,従来の(ブルック)回腸瘻造設術を行う。
どんな形の大腸切除であれ,それによって引き起こされる身体的および感情的負担を認識する必要があり,手術前後に必要なあらゆる教育と心理的サポートを患者が受けられるよう配慮すべきである。.
最終改訂月 2007年1月
最終更新月 2005年11月
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