メルクマニュアル18版 日本語版
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膵癌

膵癌は,主として膵管腺癌であり,米国では毎年,症例数は約30,500例,死亡数は約29,700例である。症状には体重減少,腹痛,および黄疸などがある。診断はCTによる。治療は外科的切除,補助化学療法および放射線療法である。膵癌はしばしば診断時に進行癌であるので,予後は不良である。

ほとんどの膵癌は,膵管細胞および腺房細胞から発生する外分泌腫瘍である。膵内分泌腫瘍については後述する。

膵外分泌腺の膵管細胞由来の腺癌は,膵外分泌腺の腺房細胞由来の腺癌よりも9倍多い;80%は膵頭部に発生する。腺癌は平均年齢55歳で発生し,男女比は1.5〜2倍と男性に多い。顕著な危険因子には,喫煙,慢性膵炎の既往,および,おそらく長期の糖尿病(主に女性)などがある。遺伝が何らかの役割を演じる。アルコールおよびカフェインの摂取は危険因子ではないようである。

症状と徴候

症状は末期に起こる;診断時点で90%の患者は,後腹膜組織浸潤,所属リンパ節転移,または,肝もしくは肺転移を認める局所進行腫瘍患者である。

ほとんどの患者は,激しい上腹部痛があり,通常,背部に放散する。痛みは身体を前屈するか,または胎児型姿勢をとることで軽減することがある。体重減少が起こることが多い。膵頭部の腺癌は80〜90%の患者において閉塞性黄疸(しばしば,そう痒の原因となる)を引き起こす。体部および尾部の癌は,脾静脈閉塞を引き起こすことがあり,その結果,脾腫,胃および食道の静脈瘤,および消化管出血が生じる。25〜50%の患者において糖尿病が起こり,グルコース不耐性の症状(例,多尿および多飲)を呈するに至る。

診断

望ましい検査は腹部のヘリカルCTまたは膵臓のMRI(MRCP)である。CTまたはMRCPにより,切除不能または転移性病変が見つかった場合には,組織診断を得るために,到達可能な病変の経皮的針吸引を考慮することがある。CTによって潜在的に切除可能な腫瘍が見つかった場合,または全く腫瘍が見つからなかった場合には,疾患の病期分類またはCTでは描出されない小さな腫瘍の検出を目的としてMRCPまたは超音波内視鏡検査を行うことがある。閉塞性黄疸の患者では,最初の診断法としてERCPを用いることがある。

ルーチンの臨床検査を行うべきである。アルカリホスファターゼおよびビリルビンの上昇は,胆管閉塞または肝転移を示唆する。膵癌と診断された患者の経過観察,および高リスク患者のスクリーニングのために膵癌関連抗原CA19-9を用いることがある。しかしながら,本試験は集団スクリーニングに使用できるほど,感度や特異度は高くない。高値の症例では治療の奏効に伴って低下する;治療後の上昇は進行を示唆する。アミラーゼおよびリパーゼ値は通常,正常である。

予後と治療

予後は病期によって異なるが,多くの患者が診断時に進行例であるため,全体としては不良である(5年生存率:2%未満)。

転移または主要血管浸潤のため,診断時に約80〜90%の患者が外科的切除不能例とみなされる。腫瘍の部位にもよるが,第1選択手技は,最も一般的にはホウィップル式手術(膵頭十二指腸切除術)である。5-フルオロウラシル(5-FU)+外照射療法による補助療法が典型的に行われるが,2年生存率は約40%で,5年生存率は約25%である。この併用療法はまた,限局性であるが切除不能の腫瘍を有する患者に用いられ,生存期間の中央値は約1年である。より新しい薬物(例,ゲムシタビン)は5-FUベースの化学療法よりも有効なことがあるが,単独投与でも併用療法でも,明らかに優れた成績を示す薬物はない。肝または遠隔転移のある患者は,治験プログラムの一環として化学療法を受けることがあるが,このような治療の有無にかかわらず,予後は不良であるため,治療を見合わせる患者もいる。

手術時に切除不能な腫瘍が見つかり,胃十二指腸もしくは胆管が閉塞またはほぼ閉塞している場合には,閉塞を解除するために,通常,胃および胆道の二重バイパス術を行う。手術不能病変および黄疸のある患者は,内視鏡的胆管ステント留置術で黄疸が軽減する。しかしながら,ステントに関連する合併症のため,平均余命が6〜7カ月を越える場合には,切除不能病変を有する患者に対して,外科的バイパス術を検討すべきである。

対症療法: 最終的に,ほとんどの患者は痛みを経験して死亡する。したがって,対症療法は病勢コントロールと同じくらい重要である。適切な終末期医療について検討すべきである(臨死患者も参照 )。

中等度から重度の疼痛患者には,疼痛を緩和するのに十分な用量の経口オピオイドを投与すべきである。耽溺性に対する懸念が,効果的な疼痛管理の障壁になってはならない。慢性疼痛には,持続性製剤(例,経皮フェンタニル,オキシコドン,オキシモルホン)が通常最もよい。経皮的または外科的内臓神経(腹腔)ブロックは,ほとんどの患者で効果的に痛みを抑制する。耐え難い痛みがある症例では,オピオイドの皮下投与,静脈内注入,硬膜外注入または髄腔内注入によってさらに鎮痛効果が得られる。

緩和手術または内視鏡的胆管ステント留置術で閉塞性黄疸に続発するかゆみが軽減しない場合には,コレスチラミン(4g,経口にて1日1〜4回)によって管理できる。フェノバルビタール30〜60mg,経口にて1日3〜4回が役に立つことがある。

膵外分泌機能不全は,ブタの膵酵素(パンクレリパーゼ)の錠剤で治療する。患者は,16,000〜20,000リパーゼ単位を補充するのに十分な量を,毎回の食事または間食前に服用すべきである。食事が長引く場合は(レストランなど),一部の錠剤を食事中に服用すべきである。酵素の管腔内至適pHは8である;したがって,プロトンポンプ阻害薬またはH2ブロッカーを1日2回投与する臨床医もいる。糖尿病を厳重に監視し,コントロールすべきである。

嚢胞腺癌

嚢胞腺癌は,粘液性嚢胞腺腫の悪性変性として発生し,上腹部痛および触知可能な腹部腫瘤として現れるまれな膵腺癌である。診断は腹部CTまたはMRIによって下され,これらの検査で通常壊死組織片を含む嚢胞性腫瘤を認める;この腫瘤は,壊死性腺癌または膵仮性嚢胞と誤解されることがある。膵管腺癌とは異なり,嚢胞腺癌は予後が比較的良好である。手術時に転移が認められる患者は20%に過ぎない;膵尾部切除術,膵全摘術またはホウィップル式手術による腫瘍の完全切除によって,5年生存率は65%となる。

腺管内乳頭-粘液腫瘍

腺管内乳頭-粘液腫瘍(IPMT)は,粘液の過剰分泌および管の閉塞をもたらす,まれな癌である。組織学的に良性,境界型,または悪性のいずれもありうる。ほとんどが女性(80%)および膵尾部(66%)に発生する。

症状には痛みおよび再発性の膵炎発作がある。診断はCTによって行うが,時に超音波内視鏡検査,MRCPまたはERCPを併施する。外科的切除は第1選択療法であるが,この手技を行わなければ,良性と悪性の鑑別はできない。手術をすれば,5年生存率は,良性または境界型の症例では95%を越えるが,悪性腫瘍では50〜75%である。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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