|
脂肪肝(肝脂肪変性)は肝細胞内の過剰な脂肪蓄積であり,損傷に対する最も一般的な肝臓の反応である。
脂肪肝の原因は様々で,多様な生化学的メカニズムが関与し,種々のタイプの肝障害を引き起こす。臨床的には脂肪肝を,妊娠に起因する場合,アルコール性肝疾患に起因する場合(アルコール性肝疾患を参照 ),そして妊娠やアルコール依存症のない場合に発現する脂肪肝(非アルコール性脂肪肝炎[NAFLD])とに識別することが最も有用である。後者には単純な脂肪浸潤(良性の病態)およびまれではあるがより重要な変異型である非アルコール性脂肪肝炎が含まれる。(See
also the American Gastroenterological Association's Medical
Position Statement and Technical
Review on nonalcoholic fatty liver disease.)
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
非アルコール性脂肪肝炎は非アルコール依存症患者に生じる症候群で,アルコール性肝炎と組織学的に鑑別できない肝障害を生じる。これは中年女性に最もしばしば生じ,その多くは肥満であるか,血中の糖や脂質が上昇している。病因はほとんど分かっていないが,インスリン抵抗性(例,肥満またはメタボリックシンドロームにみられる)に関連すると思われる。ほとんどの患者は無症候性である。検査所見ではアミノトランスフェラーゼ値の上昇がみられる。確定診断には生検を行う必要がある。治療法としては原因と危険因子の除去が含まれる。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH-脂肪壊死とよばれることもある)は最もしばしば40〜60歳の女性でみられ,その多くは肥満,2型糖尿病,または高脂血症を呈するが,全ての年齢の男女に起こりうる。
病態生理学的には,脂肪の蓄積(脂肪変性),炎症,そしてときに線維症が認められる。脂肪変性は肝蔵にトリグリセリドが蓄積した結果である。脂肪変性のメカニズムとして,超低比重リポ蛋白(VLDL)の合成低下および肝トリグリセリド合成促進(おそらく脂肪酸酸化の減少または肝へ運ばれる遊離脂肪酸の上昇による)が可能性として考えられる。炎症は脂質の過酸化に伴う細胞膜の損傷が原因として考えられる。これらの変化は肝星状細胞を刺激し,線維症を引き起こす。もしもNASHがさらに進行すると肝硬変や門脈圧亢進症を引き起こす。
ほとんどの患者は無症候性である。しかし一部の患者では疲労,倦怠,または右上腹部の不快感を生じることがある。患者の約75%に肝腫大が生じる。進行した肝線維症が存在する場合,脾腫を生じることがあり,通常これは門脈圧亢進症が生じたことを最初に示唆するものである。NASHによる肝硬変を伴う患者はしばしば無症候性で,慢性肝疾患の通常の徴候を欠いていることもある。
診断
最も多くみられる検査所見の異常はアミノトランスフェラーゼ値の上昇である。アルコール性肝疾患とは異なり,NASHにおけるAST/ALT比は通常1未満である。アルカリホスファターゼおよびγグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)はときに上昇する。高ビリルビン血症,PTの延長,低アルブミン血症はまれである。
診断では,アルコール摂取量が過量ではない(例,1日20g未満)という確証(例えば友人や親戚からの証言)が必要である。血清学的検査でB型およびC型肝炎を除外すべきである(すなわち,B型肝炎の表面抗原およびC型肝炎ウイルス抗体が陰性)。肝生検では,アルコール性肝炎に類似した障害がみられ,通常,大きな脂肪滴(大滴性脂肪浸潤)が認められる。生検の適応例としては,原因不明の門脈圧亢進症の徴候(脾腫または血球減少を含む)および原因不明のアミノトランスフェラーゼ値上昇が6カ月を超えて持続する患者で,糖尿病,肥満,または高脂血症を伴う場合などが挙げられる。超音波,CT,そして特にMRIなどの画像診断で,肝脂肪症を同定できる場合がある。しかしながら,これらの検査はNASH特有の炎症を特定できないため,NASHと他の原因による肝脂肪症を鑑別することはできない。
予後と治療
予後については様々な議論がなされている。おそらく,患者のほとんどは肝不全や肝硬変に陥ることはない。しかしながら,ある種の薬剤(例,細胞毒性のある薬剤)および代謝性疾患はNASHの加速に関与している。合併症(例,静脈瘤出血)が発現しないかぎり,予後はしばしば良好である。
唯一広く認められている治療目標は,潜在的原因や危険因子を除去することである。具体的な目標として,薬剤や毒物の継続中止,体重減少,および高脂血症または高血糖に対する治療などが挙げられる。その他多くの治療方法(例,ウルソデオキシコール酸,ビタミンE,メトロニダゾール,メトホルミン,ベタイン,グルカゴン,グルタミン輸液)の効果は証明されていない。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
|