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門脈-体循環性脳症

門脈-体循環性脳症は神経精神学的な症候群である。これはほとんどの場合,門脈-体循環性シャントを呈する患者における腸内高蛋白または急性代謝性ストレス(例,消化管出血,感染症,電解質異常)が原因で発症する。主に神経精神病学的な症状がみられる(例,錯乱,羽ばたき振戦,昏睡)。診断は臨床所見に基づく。治療は通常,急性症状の原因補正,食事中の蛋白制限,およびラクツロースの経口投与を行う。

(See also the American College of Gastroenterology's practice guideline Hepatic Encephalopathy.)肝性脳症や肝性昏睡と比較して,門脈-体循環性脳症は病態生理を適格に表しているが,これら3つの用語は互換的に用いられる。

病因

門脈-体循環性脳症は,ウイルス,薬物,あるいは毒物を原因とする劇症肝炎で生じることもあるが,門脈圧亢進症により門脈-体循環性の側副血行路が広範に生じている肝硬変やその他の慢性疾患のために起こる方が一般的である。脳症は,門脈と大静脈の外科的吻合(門脈下大静脈シャントまたは経頸静脈的肝内門脈体循環シャント術[TIPS])などの門脈-体循環吻合術を行った後にも生じる。

慢性肝疾患患者では,可逆的な原因よって脳症が急性発症するのが通常である。多くみられるものとして,代謝性ストレス(例,感染;電解質異常,特に低カリウム血症;脱水;利尿薬の使用),腸内蛋白を増加させる疾患(例,消化管出血,高蛋白食),および非特異的な脳抑制剤(例,アルコール,鎮静薬,鎮痛薬)がある。

病態生理

門脈-体循環シャントでは,本来ならば肝臓で解毒される吸収物がそのまま全身循環へ入り,脳(特に大脳皮質)に毒性を及ぼす。脳に毒性を及ぼす物質は正確には明らかではない。蛋白の消化産物であるアンモニアは原因として重要であるが,その他の因子(例,脳内のベンゾジアゼピン受容体の変化やγアミノ酪酸[GABA]による神経伝達)も関与しているものと考えられる。血清中の芳香族アミノ酸濃度は通常高く,また分枝鎖アミノ酸の濃度は低いが,これらはおそらく脳症の原因ではない。

症状と徴候

脳症の症状と徴候は進行期に生じる傾向がある(肝疾患がある患者へのアプローチ: 門脈-体循環性脳症の臨床病期表 2: 表参照)。通常,脳機能障害が中程度に進行するまでは症状は明らかにならない。構成失行症は初期にみられ,患者は簡単なデザイン(例,星印)さえも再現することができなくなる。興奮や躁病が起こりうるが一般的ではない。特徴的な羽ばたき振戦は,患者の腕をいっぱいに伸ばし手首を背屈させると誘発される。神経学的欠損は左右対称である。通常,昏睡の神経学的徴候はびまん性の両側半球障害を反映する。脳幹機能不全の徴候は,進行した昏睡でのみ生じ,しばしば死亡の数時間から数日前の時期にみられる。かび臭く甘い呼気臭(肝性口臭)は脳症におけるどの病期でも起こりうる。

表 2

門脈-体循環性脳症の臨床病期

病期

認識と行動

神経筋機能

0 (無症状)

無症候性の認識能力低下

なし

1

睡眠障害;集中力の障害;抑うつ,不安,過敏

抑揚のない声;振戦;下手な字;構成失行

2

嗜眠;見当識障害;短期記憶の障害;抑制の利かない行動

運動失調;構音障害;羽ばたき振戦;自動性(あくび,瞬き,吸啜)

3

傾眠;錯乱;健忘;怒り,パラノイア,その他奇異な行動

眼振;筋硬直;反射亢進または低下

4

昏睡

瞳孔散大;頭位変換眼球反射または眼球前庭反射;除脳姿勢

診断

最終的な診断は臨床所見に基づいて行うが,検査も有用なことがある。微妙な神経精神学的障害は精神測定によって認められることがあり,初期の脳症を確定するのに役立つ。一般にアンモニア値は脳症の検査マーカーとなるが,特異性もなければ高感度でもなく,脳症の重症度を評価することはできない。通常EEGでは,軽度の例でもびまん性の徐波がみられ,感度はあるが初期の脳症においては特異性がない。CSF検査はルーチンに行う必要はない;通常認められる唯一の異常は,軽度の蛋白上昇である。

類似の症状を起こしうるその他の可逆的な障害(例,感染,硬膜下血腫,低血糖,中毒)を除外するべきである。門脈-体循環性脳症であることが確定したら,原因を追求する。

予後

慢性肝疾患では,原因の治療を行うことで永久的な神経学的後遺症を残すことなく脳症は回復する。一部の患者,特に門脈下大静脈シャントまたはTIPS患者は継続的な治療が必要であり,非可逆的な錐体外路性の徴候や痙性対麻痺の発症はまれである。劇症肝炎に関連する昏睡(脳症の第4期)は集中治療にかかわらず,最大80%の患者で致死的である;進行した慢性肝不全と門脈-体循環性脳症が併発するとしばしば致死的となる。

治療

通常軽度の症例では原因を治療することにより回復する。もう1つの目標は有毒な腸内産物を除去することであり,これは数種類の方法を用いて行うことができる。腸管を空にするために浣腸,または最もしばしばラクツロースシロップの経口投与(昏睡状態の患者にも経管的に投与可能)が行われる。この合成二糖類は浸透圧性下剤として作用する。この二糖類はまた結腸pHおよび便中のアンモニア産生を低下させる。初回投与量は30〜45mL,1日3回を経口投与し,1日当たり2〜3回の軟便が続くように調節する。食事性蛋白を制限し(軽度の症例の場合は1日当たり20〜40gは可とする),不足したカロリーは炭水化物を経口または静注で補う。

鎮静薬は脳障害を悪化させるため,可能な限り避けるべきである。劇症肝炎による昏睡では,合併症の予防や治療とともに,慎重な支持療法および看護を行うことによって生存の確率が上がる。高用量のコルチコステロイド投与,血漿交換,およびその他の循環中の毒素を除去するための複雑な手技を行っても,一般に転帰は改善しない。劇症肝不全が悪化した患者は,肝移植によって助かる場合がある。

その他の治療法として,レボドパ,ブロモクリプチン,フルマゼニル,安息香酸ナトリウム,また分枝鎖アミノ酸,必須アミノ酸のケト類似物質およびプロスタグランジンの輸液があるが,効果は証明されていない。複雑な血漿濾過装置(人工肝)の効果が有望とされているが,さらなる研究が必要である。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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