メルクマニュアル18版 日本語版
検索のヒント
ABCDEFGHI
JKLMNOPQR
STUVWXYZ
記号

セクション

トピック

線維症

肝線維症は,肝臓における結合組織の蓄積であり,ほぼ全ての原因による肝細胞損傷に対する反応である。これは細胞外基質の過剰生産や分解低下による。線維症自体が症状を引き起こすことはないが,門脈圧亢進症または肝硬変に至ることがある。診断は肝生検に基づく。治療では,可能ならば根底にある原因を改善する。線維症自体を可逆的に治療する試みについては研究中である。

肝血管周囲の星細胞(伊東細胞,脂肪貯蔵細胞)の活性化により線維化が始まる。これらと隣接した細胞とが増殖し,筋線維芽細胞とよばれる収縮性細胞となる。これらの細胞は正常基質の分解を増強し,また部分的に基質コラーゲン代謝を調節するメタロプロテイナーゼ酵素を変性させて,異常基質を過剰に生産する。クッパー細胞(在住マクロファージ),損傷した肝細胞,血小板,および白血球は凝集して,線維化を促進する活性酸素や炎症メディエーター(例,血小板由来増殖因子,トランスフォーミング増殖因子,および結合組織増殖因子)を放出する。

エンドセリン1に刺激された筋線維芽細胞は,さらに門脈抵抗上昇の原因となり,これにより異常基質の密度が上昇する。線維性の血管は,求心性の門脈枝および遠心性の肝静脈枝に合流し,肝細胞を迂回しこれらへの血液供給を制限する。したがって,線維症は肝細胞虚血(および肝細胞機能不全)と門脈圧亢進症の両者の原因となる。これらのプロセスが広がる程度によって,肝臓がどのように障害を受けるかが決まる。例えば,先天性肝線維症は実質の大部分に影響を及ぼさずに門脈枝を障害する。その結果,肝細胞機能が保持された門脈圧亢進症を発症する。

症状,徴候,診断

肝線維症そのものは症状を引き起こさない。症状は原発性疾患や門脈圧亢進症に続いて二次的に生じる。しかし,門脈圧亢進症はしばしば肝硬変が生じるまで無症状である。

肝線維症の診断や検出は肝生検が唯一の方法である。通常,他の原因で肝生検を行った時に診断される。特殊染色(例,アニリンブルー,トリクローム,銀染色)によって,線維組織が強調される。

治療

線維症は肝障害の徴候であるため,通常,治療は根底にある原因に対して行う。線維症そのものを可逆的に治療する試みは研究中であり,次のような戦略が目標となっている(1)炎症を抑える(例,ウルソデオキシコール酸,コルチコステロイド),(2)肝星状細胞活性の抑制(例,γインターフェロン,抗酸化剤としてビタミンE,チアゾリジンジオンなど活性を低下させるペルオキシソーム過酸化還元酵素[PPAR]―γリガンド),(3)コラーゲン合成や代謝の抑制(例,ペニシラミン,コルヒチン,コルチコステロイド),(4)星状細胞の収縮抑制(例,エンドセリン拮抗薬や一酸化窒素供与体),(5)細胞外基質分解の促進(例,トランスフォーミング成長因子βやいくつかの実験的薬剤によるメタロプロテイナーゼ介在性の分解)。残念ながら,多くの薬剤は通常長期使用には毒性が強すぎるか(例,コルチコステロイド,ペニシラミン)有効性が証明されていない(例,コルヒチン)。複数の抗線維薬による治療が最も有益だと考えられる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

ページの先頭へ

前へ: はじめに

次へ: 肝硬変

イラスト
個人情報の取扱いご利用条件