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原発性肝癌は通常,肝細胞癌である。ほとんどの肝癌では症状が非特異的であり,診断が遅れる。予後は通常,不良である。
肝細胞癌
肝細胞癌(肝癌)は通常,肝硬変患者に発症し,B型およびC型肝炎ウイルスによる感染が多い地域ではよくみられる。症状と徴候は通常,非特異的である。診断はαフェトプロテイン(AFP)値,画像検査のほか,ときに肝生検に基づいて下される。ハイリスク患者については,定期的なAFP測定および超音波検査によるスクリーニングが推奨されることがある。予後は不良だが,腫瘍が小さく限局していれば,ときに外科的切除または肝移植により治癒しうる。
病因と疫学
肝細胞癌は通常,肝硬変の合併症である。原発性肝癌では最もよくみられる型であり,米国では毎年約14,000人が死に至る。本疾患は米国以外の方が頻度が高く,特に東南アジア,日本,朝鮮およびサハラ砂漠以南のアフリカによくみられる。発生率は一般に,慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染症の有病率と地理的に対応しており,HBVキャリアではリスクが100倍以上高い。HBVのDNAが宿主のゲノムに組み込まれると,慢性肝炎または肝硬変がなくても悪性形質転換を引き起こすと考えられる。肝細胞癌を引き起こす疾患にはこのほか,慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染症による肝硬変,ヘモクロマトーシスおよびアルコール性肝硬変がある。他の原因により肝硬変を来した患者もリスクが高い。環境発癌物質が一役かっている場合がある;例えば,亜熱帯地域で肝癌の発生率が高いのは,真菌のアフラトキシンによって汚染された食物の摂取が一因だと考えられている。
症状と徴候
最もよくみられる臨床像には腹痛,体重減少,右上腹部腫瘤のほか,以前は安定した状態にあった肝硬変患者の原因不明の状態悪化などがある。発熱を来すことがある。ときに腫瘍の出血が血性腹水,ショックまたは腹膜炎を引き起こし,これが肝細胞癌の初発症状となることがある。ときに肝の摩擦音または血管雑音が聴取される。低血糖,赤血球増多症,高カルシウム血症および高脂血症など,全身性の代謝性合併症を来すことがある。このような合併症は臨床的に現れる。
診断
AFP測定および画像検査に基づいて診断する。成人にAFPが存在すれば肝細胞の脱分化の現れであり,最もしばしば肝細胞癌を示すものである;患者の60〜90%にAFP高値が認められる。本疾患以外では,はるかに頻度が低い睾丸の奇形癌である場合を除いて,400μg/Lを超えることはまれである。これより低値であれば特異度が低くなり,肝細胞の再生(例,肝炎)でも認められる。デス-γ-カルボキシプロトロンビンおよびα-l-フコシダーゼなど,他の血液検査の役割が大きくなりつつある。
各地域医療施設での選択優先度および設備に応じて,最初の画像検査は造影CT,超音波検査またはMRIとする。肝動脈造影は,決定的とはいえない症例の診断に有用となることがあるほか,手術の計画時には血管の解剖学的形態の概略を知るためにも用いることができる。
画像が特徴的な所見を示し,AFPが高値である場合は,診断は明白である。肝生検は,超音波ガイド下で行うのが望ましく,確定診断に適応とされる。
予後と治療
腫瘍が2cm未満で肝の一葉に限局しているときを除いて,2年生存率は5%未満である。外科的切除が最も有望な手段だが,腫瘍が小さく限局したわずかな症例にのみ適した方法である。治療法にはこのほか,肝動脈化学塞栓療法,腫瘍内へのエタノール注入法,冷凍アブレーションおよび高周波アブレーションがあるが,いずれも結果がきわめて良好というわけではない。放射線照射および全身化学療法は一般に有用ではない。もし腫瘍が小さく,肝外転移がなく肝臓予備力が低下していれば,外科的切除ではなく肝移植が考慮の対象となり,一般にその方が良好な結果が得られる。
予防とスクリーニング
HBVに対してワクチンを投与すると,特にHBV罹患者が多い地域では最終的に発生率が低下する。原因が何であれ肝硬変の発症を予防することも著しい効果がある(例,慢性HCVの治療,ヘモクロマトーシスの早期発見,アルコール依存の管理による)。
肝硬変患者のスクリーニングは理にかなっているが,この手段については見解が一致しておらず,死亡率が低下することが明白に示されていない。よく使用されるプロトコルの1つでは,6カ月または12カ月毎にAFPを測定し,超音波検査を実施する。このほか,多くの専門家が,長期のHBV患者については肝硬変がなくてもスクリーニングを勧めている。
その他の原発性肝癌
線維層板状癌,胆管細胞癌,肝芽腫および血管肉腫はあまりみられないか,まれである。診断には通常,肝生検を要する。予後は通常,不良である。なかには,限局している場合は切除可能なものもある。切除または肝移植によって延命しうる。
線維層板状癌は,肝細胞癌の明瞭に区別できる亜型であり,層板状の線維組織に埋没する特徴的な悪性肝細胞の形態を示す。通常,若年の成人にみられ,すでに存在する肝硬変,B型またはC型肝炎ウイルス(HBVまたはHCV)など既知の危険因子との相関はない。AFP値の上昇はまれである。予後は肝細胞癌よりもよく,腫瘍の切除後,数年にわたり生存する患者が多い。
胆管細胞癌は,胆管上皮から発生する腫瘍であり,中国ではよくみられる疾患で肝吸虫の寄生が原因の一部であると考えられている。中国以外では,肝細胞癌より頻度が低い。両者の間には組織学的に共通する病理像がみられる。長期にわたり潰瘍性大腸炎や硬化性胆管炎に罹患している患者は,胆管細胞癌のリスクが高い。
肝芽腫はまれであるが,乳児では,特に家族に家族性腺腫性ポリポーシス(消化管の腫瘍: 家族性腺腫性ポリポーシスを参照 )が認められるときは,最もよくみられる原発性肝癌の1つである。小児にも発現することがある。肝芽腫ではときに,異所性ゴナドトロピン産生による思春期早発がみられるが,通常は全身健康状態の悪化および右上腹部の腫瘤によって発見される。AFP値の高値および画像検査結果の異常がみられれば診断の一助となる。
血管肉腫はまれであり,工業生産される塩化ビニルなど特定の化学発癌物質によるものである。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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