メルクマニュアル18版 日本語版
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肝肉芽腫

肝肉芽腫には多数の原因が考えられ,通常,無症候性である。しかしながら,肉芽腫を引き起こす障害は肝外症状および/または肝の炎症,線維化および門脈圧亢進症を引き起こすことがある。肝生検に基づいて診断するが,生検が必要となるのは治療可能な基礎疾患(例,感染症)が疑われるか,他の肝疾患を除外するときに限られる。治療は基礎疾患によって決まる。

肝肉芽腫は重篤ではないが,臨床的に関連のある疾患を反映することが多い。病態を表すためしばしば肉芽腫性肝炎という用語が用いられるが,この障害は真の肝炎ではなく,肉芽腫の存在が肝細胞の炎症を意味するわけではない。

病因と病態生理

肉芽腫は慢性炎症性細胞が類上皮細胞および多核巨細胞とともに局所的に集積したものである。乾酪壊死または異物組織(例,住血吸虫卵)がみられることがある。肉芽腫のほとんどが肝実質に形成されるが,原発性胆汁性肝硬変では門脈三角領域に生じる。

肉芽腫形成については十分に解明されていない。難溶性の外因性または内因性の刺激物に反応して肉芽腫が発現すると考えられる。免疫学的機序が関与している。

肝肉芽腫には多くの原因があり(肝腫瘤および肉芽腫: 肝肉芽腫の原因表 1: 表参照),原発性の肝疾患に比して薬物および全身疾患(しばしば感染症)に起因することが多い。感染症は特異的な治療を要するため,認識することが重要である。結核および住血吸虫症は世界的に最も重要な感染性の原因であり,ウイルス性の原因はあまりみられない。サルコイドーシスは最も重要な非感染性の原因である;患者の約23が肝を侵され,ときにこれが主要な臨床像となる。

表 1

肝肉芽腫の原因

薬物(例,アロプリノール,フェニルブタゾン,キニジン,スルホンアミド系)

感染症

細菌性(放線菌症,ブルセラ症,猫ひっかき熱,梅毒,結核*などのマイコバクテリア,野兎病)

真菌性(ブラストミセス症,クリプトコッカス症,ヒストプラスマ症)

寄生虫性(住血吸虫症*,トキソプラズマ症,内臓幼虫移行症)

ウイルス性(サイトメガロウイルス,伝染性単核球症,Q熱)

肝疾患(原発性胆汁性肝硬変)

全身疾患(ホジキンリンパ腫,リウマチ性多発筋痛などの結合組織疾患,サルコイドーシス*)

* 最もよくみられる原因。

原発性肝疾患では肉芽腫がみられることははるかに少なく,原発性胆汁性肝硬変が唯一の重要な原因である。他の肝疾患ではときに小さな肉芽腫が生じるが,臨床的に重要ではない。

特発性肉芽腫性肝炎は肝肉芽腫によるまれな症候群であり,再発性の発熱,筋肉痛,疲労をはじめとする全身症状をしばしば何年にもわたり間欠的に発症する。専門家の一部はサルコイドーシスの変異型であると考えている。

肝肉芽腫が肝細胞機能に影響を及ぼすことはまれである。しかしながら,肉芽腫が肝臓を含む広範囲の炎症性反応(例,薬物反応,感染性単核球症)の一部であるときは,肝細胞機能不全がみられる。場合によっては炎症が進行性の肝線維症および門脈圧亢進症を引き起こし,典型的には住血吸虫症を伴うほか,ときに広範囲に及ぶサルコイド浸潤を伴うことがある。

症状,徴候,診断

肉芽腫自体は典型的に無症候性であり,浸潤が広範囲にわたっても通常,軽微な肝腫大を呈するにとどまり,黄疸はほとんどか全くみられない。症状を認める場合は,基礎疾患(例,感染症での全身症状,住血吸虫症での肝脾腫)を反映している。

肝肉芽腫が疑われるときは,一般に肝機能検査を実施するが,結果は非特異的で,診断に役立つことはまれである。アルカリホスファターゼ(およびγグルタミルトランスフェラーゼ)がしばしば軽度の上昇を示すが,ときに著明な上昇を来すことがある。これ以外の検査結果は正常であることもあれば,さらに別の肝障害(例,薬物反応による広範な肝の炎症)を反映する異常を示すこともある。超音波検査,CTまたはMRIなどの画像検査は通常,診断の決め手とはならない;石灰化(慢性の場合)または陰影欠損が,特に融合性病変を伴ってみられることがある。

肝生検に基づいて診断する。しかしながら,生検は通常,治療可能な原因(例,感染症)の診断,または非肉芽腫性疾患(例,慢性ウイルス性肝炎)との鑑別にのみ適応とされる。ときに生検により特異的な原因(例,住血吸虫卵,結核の乾酪壊死,真菌)であることを示す証拠が得られることがある。しかしながら,これ以外の検査(例,培養,皮膚試験,臨床検査,X線検査,その他組織標本)をしばしば要する。

感染を示唆する全身症状などの症状(例,FUO)がみられる患者では,感染症に対する生検の診断感度を上げるため,特異的な方法を用いる(例,新鮮な生検標本の一部を培養検査に提出し,抗酸菌,真菌,その他微生物の特殊染色を実施する)。しばしば原因は確定できない。

予後と治療

薬物または感染による肝肉芽腫は,治療後は完全に退縮する。サルコイド肉芽腫は自然に消失することもあれば何年も持続することもあるが,通常,臨床的に重要な肝疾患を伴うことはない。進行性の線維症および門脈圧亢進症をまれに発症する(サルコイド肝硬変)。住血吸虫症では進行性の門脈瘢痕化がみられるのが典型的である(パイプ軸様線維化);肝機能は通常保たれるが,著明な脾腫および静脈瘤出血を来す可能性がある。

治療は基礎原因に対して実施する。原因が不明の場合は,通常治療を差し控え,定期的な肝機能検査によるフォローアップを始める。しかしながら,もし結核の症状(例,熱の持続)および健康状態の悪化がみられれば,経験的抗結核療法が妥当だと考えられる。進行性の肝サルコイドーシス患者はコルチコステロイドにより改善しうるが,この種の薬物が肝の線維化を阻止するかどうかは明らかではない。しかしながら,コルチコステロイドはサルコイドーシス患者のほとんどには適応ではなく,結核などの感染症が確実に除外できるときに限り使用できる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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