メルクマニュアル18版 日本語版
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原発性硬化性胆管炎(PSC)

原発性硬化性胆管炎は,斑状の炎症,線維化,肝内および肝外胆管の狭窄を特徴とする慢性の胆汁うっ滞性症候群である。患者の80%に炎症性腸疾患,しばしば潰瘍性大腸炎がみられる。倦怠感,そう痒といった症状が後に発現する。胆管造影(ERCPによる)または磁気共鳴胆管膵管造影に基づき診断する。最終的には胆管が完全に閉塞し,肝硬変,肝不全,そしてときに胆管細胞癌を伴う。進行例には肝移植が適応とされる。

病因

原因は不明である。しかしながら,原発性硬化性胆管炎(PSC)は炎症性腸疾患と強く関連しており,潰瘍性大腸炎患者の約5%,クローン病患者の約1%に起こる。この関連および数種類の自己抗体(例,抗平滑筋抗体,核周囲に局在する抗好中球抗体[p-ANCA])の存在により,免疫が介在する機序が示唆される。Tリンパ球が胆管の破壊に関与していると思われることから,細胞性免疫の障害が示唆される。この疾患は複数の家族に発現する傾向があり,自己免疫疾患としばしば相関するHLA-B8およびHLA-DR3を有する者で発生率がより高いことから,遺伝的素因が示唆される。遺伝的素因のある患者では,原因不明の誘因(例,細菌感染または虚血性の胆管損傷)がPSCを引き起こすと考えられる。HIV感染患者の硬化性胆管炎はクリプトスポリジウム症またはサイトメガロウイルスによるものと考えられる。

症状と徴候

診断時の平均年齢は40歳であり,患者の70%が男性である。発症は通常潜行性であり,徐々に進行する倦怠感およびそう痒を伴う。黄疸はより遅くに発現する傾向がある。右上腹部痛および発熱の発作を頻回に来すのは,上行性の細菌性胆管炎によると考えられ,発症時に患者の10〜15%にみられる。脂肪便および脂溶性ビタミンの欠乏を来すことがある。持続性の黄疸は疾患の進行を示す前兆である。患者の約13に有症状の胆石症および総胆管結石症が発現する傾向がある。患者のなかには疾患晩期まで無症状で,最初に現れるのが肝腫大や肝硬変である場合もある。末期段階は非代償性肝硬変,門脈圧亢進症,腹水および肝不全を伴う。

PSCと炎症性腸疾患とは関連しているにもかかわらず,この2つの疾患は別々の経過をたどる傾向がある。潰瘍性大腸炎はPSCに数年先行して現れうるが,PSCと関連するときはより軽症の経過をたどる傾向がある。両疾患の存在は,PSCに肝移植を施行しているかどうかにかかわらず,直腸結腸癌のリスクを増大させる。また,全結腸切除術を実施してもPSCの経過に変化はない。PSC患者の10〜15%に胆管癌が発現する。

診断

PSCは,肝生化学検査で原因不明の異常がみられる患者で疑われ,もし患者に炎症性腸疾患があれば,さらに疑いが強くなる。肝化学検査では胆汁うっ滞性パターンが典型的にみられ,アルカリホスフォターゼおよびγグルタミルトランスフェラーゼが通常,アミノトランスフェラーゼ以上に上昇する。γグロブリンおよびIgMが上昇する傾向があり,抗平滑筋抗体およびp-ANCAは通常陽性である。原発性胆汁性肝硬変では陽性の抗ミトコンドリア抗体が,陰性なのが特徴的である。

肝胆道系の画像診断は通常,肝外性の胆管閉塞を除外するため超音波検査から始める。PSCの診断では,肝内および肝外胆管に多発する狭窄および拡張を明らかにする必要があるため,胆管造影を要する(超音波検査はその種の損傷を示唆するにとどまる)。直接胆管造影法(例,ERCPによる)はゴールドスタンダードである;しかしながら,磁気共鳴胆管膵管造影(MRCP)でも優れた画像が得られ,非侵襲的な代替手法の第一選択肢になりつつある。肝生検は一般に診断には必要ではない。他の理由により施行すると,胆管増殖,胆管周囲の線維化,炎症および胆管の消失が明らかにされる。疾患が進行するにつれて,線維化が門脈領域から広がり最終的には胆汁性肝硬変に至る。

ERCP下での擦過細胞診により監視すれば,胆管癌の発現を予測する上で有用でありうる。

予後と治療

患者の中には何年も無症状である者もいるが,疾患は進行する傾向がある。診断から肝不全に至るまでの期間は約12年である。

一般に,無症状の患者にはモニタリング(例,身体診察および肝機能検査を年2回)のみでよい。ウルソデオキシコール酸はそう痒を緩和し,生化学的マーカーを改善する。慢性胆汁うっ滞(肝疾患がある患者へのアプローチ: 胆汁うっ滞性抱合型高ビリルビン血症を参照 )および肝硬変は治療を要する。再発性の細菌性胆管炎は,必要に応じて抗生物質およびERCPにより治療する。

もし大きな狭窄が1つ存在するならば(約20%),症状を緩和し,擦過細胞診で腫瘍の発現を除外するため,内視鏡的拡張術が必要となる。基礎疾患としての感染(例,クリプトスポリジウム症,サイトメガロウイルス)があれば治療する。

特発性のPSCにおいては肝移植が余命を改善する唯一の治療法であり,治癒しうる。再発性の細菌性胆管炎または肝疾患末期の合併症,例えば難治性の腹水,門脈-体循環性脳症または食道静脈瘤からの出血などは,肝移植が妥当な適応である。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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