メルクマニュアル18版 日本語版
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線維筋痛症

(筋筋膜痛症候群;結合組織炎;線維筋炎)

線維筋痛症は,うずく痛み,圧痛,さらに筋,腱付着部領域,隣接した軟部組織のこわばりによって特徴づけられるよくある原因不明の非関節性疾患である。診断は臨床的に行う。治療は,運動,局所の加温,鎮痛薬および睡眠薬の投与である。

いずれの線維筋性組織も罹患しうるが,特に後頭,頸部,肩関節,胸部,腰部,大腿の線維筋性組織が侵されることがある。

限局性の軟部組織の痛みと圧痛(すなわち筋筋膜痛症候群[顎関節疾患: 筋筋膜痛症候群も参照 ])は,使いすぎや顕微外傷にしばしば関連する。線維筋痛症では,症状および徴候はより全身性であり,特異的な組織学的異常はみられない。線維筋痛症はときに全身性リウマチ性疾患の患者に発生し,それが診断を難しくする。線維筋痛症は一般によくみられ,女性に最も多く;小児や青年にさえ起こりうる。原因は不明であるが,感情的ストレスと同様に,Ⅳ期の睡眠の破壊の原因となりうる。線維筋痛症は,ウイルス性またはその他の全身性の感染症(例,ライム病)によって誘発されることがある。

症状,徴候,診断

線維筋痛症のこわばりと痛みはしばしば徐々に,散在性に,うずくように開始する。症状は,環境上のストレスまたは感情的ストレス,浅眠,外傷,湿気または寒さへの暴露や,患者に対し“全て気持ちの問題”という誤ったメッセージを与える医師によって悪化することがある。患者はストレスを感じ,緊張し,不安があり,疲労し,奮闘し,ときには落胆している傾向がある。多くの患者が過敏性大腸症状または緊張性頭痛をも有する。

線維筋痛症は,(特に身体所見に不釣合いな)全身性の痛みや圧痛のある患者;広範囲の症状にかかわらず検査結果が陰性の患者;疲労が主症状である患者に疑われる。 検査には,赤沈(ESR)またはC反応性蛋白,クレアチンキナーゼ(CK),およびおそらくは甲状腺機能低下症とC型肝炎(同様の症状を生じることがある)のスクリーニングを含むべきである。診断は明示的な圧痛点と診断基準を満たすその他の所見によって裏づけられる(滑液包炎,腱炎,線維筋痛症: 線維筋痛症の診断。図 1: イラスト参照)。診断基準のいくつか(全てではないが)を満たす患者は,やはり線維筋痛症を有することがある。慢性疲労症候群(原因不明症候群: 慢性疲労症候群を参照 )は,同様の全身性筋肉痛を生じることがある。リウマチ性多発筋痛症(脈管炎: リウマチ性多発筋痛症(PMR)を参照 )は,全身性筋肉痛を生じることがあるが,特に高齢者では近位筋を選択的に侵し,ESRが高値となる傾向がある。

図 1

線維筋痛症の診断。

線維筋痛症の診断。

診断には,患者は以下の特徴をもつ傾向がある:(1)触診の際に18の圧痛点のうちの少なくとも11に痛みがある。指診は約4kgの荷重で行うべきである。圧痛点を陽性とみなすには,触診で痛みを感じなくてはならない。(2)少なくとも3カ月間の広範な痛みを有した病歴がある。患者の痛みが体の左側と右側, 腰より上と下,体軸骨格(頸椎,胸部前方,胸椎,腰)にある場合は,痛みが広範であるとみなす。

予後と治療

線維筋痛症はストレスが減少すれば自然に軽減することがあるが,頻繁に再発するかまたは慢性化することがある。症状はある程度続く傾向にあるが,総合的な支持プログラムによって機能的な予後は通常は良好である。

線維筋痛は,ストレッチ運動,有酸素運動,十分な睡眠,局所の加温,穏やかなマッサージにより軽減することがある。総合的なストレス対策は重要である。

罹患した筋肉は,毎日の穏やかなストレッチ運動(約30秒間のストレッチを約5回反復)を長く続けるべきである。有酸素運動(例,速歩,水泳,エクササイズバイク)は,症状を改善しうる。

睡眠を改善することは重要である。就寝時の低用量経口三環系抗うつ薬(例,アミトリプチリン10〜50mg,トラゾドン50〜150mg,ドキセピン10〜25mg)または薬理学的に同様のシクロベンザプリン10〜40mgは深い睡眠を促進し,筋肉の痛みを軽減する。最小有効量を用いるべきである。眠気,口渇,その他の副作用が,特に高齢者で,これらの薬物の1つ以上を不耐にすることがある。

非オピオイド鎮痛薬は個々の患者に役立つ可能性があるが,一般的には有効性が示されていない。オピオイドは避けるべきである。局所の耐え難い圧痛のある領域に,0.5%ブピバカインまたは1%リドカイン1〜5mLをまれに注射することがあるが,この方法が治療の第一焦点であってはならない。不眠症を誘発しうる薬物による睡眠障害を悪化させないように注意が必要である。不安または抑うつ症があれば,治療を必要とすることがある。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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イラスト
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