メルクマニュアル18版 日本語版
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坐骨神経痛

坐骨神経痛は,坐骨神経に沿った痛みである。坐骨神経痛は通常,腰部の神経根圧迫から起こる。一般によくある原因には,椎間板疾患,骨棘,脊柱管の狭小化(脊柱管狭窄症)がある。症状には,殿部から下肢に向かって放散する痛みがある。診断は,MRIまたはCTにより行う。筋電図検査や神経伝導検査は,侵されたレベルの確認に役立つ。治療には対症療法と,ときに(特に神経学的欠落所見がある場合)手術がある。

病因

坐骨神経痛は一般に神経根圧迫によって起こり,通常は椎間板突出(脊髄障害: 脊髄圧迫を参照 ),骨変形(例,変形性脊椎症の骨棘,脊椎すべり症),または脊椎内の腫瘍または膿瘍により起こる。圧迫は,脊柱管内または椎間孔内で起こりうる。神経はさらに脊柱外の骨盤や殿部において圧迫されることもある。L5-S1,L4-L5,L3-L4の神経根は,最も多く侵される(脊髄障害: 髄節レベルによる脊髄機能障害の影響を参照 表 1: 表)。

症状と徴候

痛みは,坐骨神経の走行に沿って,最も多くは殿部から下方に下肢後面から膝下まで放散する。痛みは,一般的に灼けつくような電撃性の刺すような痛みである。坐骨神経痛は腰痛が伴うことも伴わないこともある。ヴァルサルヴァ手技は痛みを増悪することがある。

神経根の圧迫は,感覚障害,運動障害,最も他覚的な所見としては腱反射の欠除(末梢神経系障害: 症状と徴候も参照 )を生じることがある。L5-S1椎間板ヘルニアはアキレス腱反射に影響することがあるのに対し,L3-L4椎間板ヘルニアは膝蓋腱反射に影響することがある。下肢伸展挙上試験は,下肢を60°以上,およびときにそれより少なく挙上するとき,痛みは下肢の下方に放散する。この試験は坐骨神経痛に対して感度が高く;対側の下肢を挙上(交差下肢伸展挙上試験)するにつれて患側の下肢の下方に放散する痛みは,坐骨神経痛の場合により特異的である。

診断

坐骨神経痛は,特徴的な痛みがある場合に疑われる。坐骨神経痛が疑われる場合,知覚,筋力,反射を試験すべきである。神経学的欠落所見がある場合,または症状が6週間を超えて持続する場合,画像診断と電気診断検査を実行すべきである。坐骨神経痛の原因である構造的異常(脊柱管狭窄症を含む)は,最も正確にはMRIまたはCTによって診断する。電気診断検査は神経根圧迫の存在と程度を確認することができ,多発神経障害や神経絞扼のような,坐骨神経痛に似た病態を除外しうる。この検査は,病変が単一または複数の神経レベルを侵しているか,そして臨床所見がMRIの異常と関連するかの判定に有用である(特に手術の前に有用)。

治療

急性の痛みは,ベッドの頭側を約30°上げて臥位(セミファーラー位)で24〜48時間床上安静することにより軽減することがある。治療は,NSAIDやアセトアミノフェンのような非オピオイド性鎮痛薬の投与を含めた,腰痛を治療するための6週間の療法から始める。さらに症状は,例えばガバペンチンもしくはその他の抗痙攣薬または低用量三環系抗うつ薬(別の薬剤より勝る三環系抗うつ薬はない)のような,神経障害性疼痛を減少させる薬物(疼痛: 治療を参照 )で改善する可能性がある。ガバペンチンは就寝時に100〜300mgの経口投与から始めるべきであるが,用量は一般的にかなり高くなければならない(3600mg/日まで)。高齢者で,転倒の危険があり,不整脈を有する場合は,全ての鎮静薬と同様に注意して投与しなければならない。

筋痙攣は治療的に加温または冷却することにより軽減することがあり(リハビリテーション: 温熱を参照 ),理学療法が有用でありうる。急性根性痛にコルチコステロイドを使用することに関しては議論がある。硬膜外に投与すると,コルチコステロイドは痛みの軽減を加速しうるが,痛みが重症または持続性でない限り使用すべきではない。

手術の適応症は,筋力低下または進行性の神経学的欠落症状を伴う明白な椎間板ヘルニアと,情緒の安定した患者の仕事や個人的活動を妨げる耐えられない難治性疼痛で,6週間の保存療法で改善されない場合である。もう1つの方法として,一部の患者では硬膜外コルチコステロイドが助けとなる。

椎間板ヘルニアに対する限定的な椎弓切開術による古典的な椎間板切除術は,標準的手技である。ヘルニアが限局する場合,顕微鏡下椎間板切除術を行えば小さな皮膚切開および椎弓切開術ですむ。キモパパインの椎間板内注入を行う化学的髄核融解術を支持する人は減っている。

不良な手術成績が予想される場合としては,精神医学的に顕著な要因,6カ月間を超える症状の持続,厳しい肉体労働,背部痛(非神経根性)の発生,二次性利得(すなわち訴訟や補償の可能性)などがある。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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