メルクマニュアル18版 日本語版
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感染症

一般によくある細菌性の手の感染症は,爪周囲炎(爪の疾患: 爪囲炎を参照 ),感染咬傷,ひょう疽,手掌の膿瘍,感染性屈筋腱腱鞘炎がある。ヘルペス性ひょう疽は,ウィルス性の手の感染症である。感染症は,絶え間ない強度のズキズキする痛みでしばしば始まり,通常は身体診察で診断される。一部の感染症(例,咬傷,感染性屈筋腱腱鞘炎)では,隠れた異物を検出するためにX線検査を行うが,小さい物体およびX線透過性の物体は検出できない。

細菌感染症の治療には,外科処置と抗生物質療法がある。経験的抗生物質療法の適用範囲には,ブドウ球菌や連鎖球菌を含めるべきであり;感染した咬傷には,さらに他の微生物も追加して含める必要がある。

感染した咬傷

小さな刺創は,特に人や猫の咬傷の場合,腱,関節包,関節軟骨にかなりひどい損傷がありうる。ヒト咬傷の最も多い原因は,口へのパンチの結果として,歯により起こる中手指節関節への損傷である(握りこぶし外傷)。ヒトの口腔菌叢には,Eikenella corrodens,ブドウ球菌,連鎖球菌,嫌気性菌などが含まれる。手拳損傷の患者は,創傷を負ってから治療を受けるまでに何時間または何日も過ごしてしまう傾向があり,それが感染症の重症度を増す。動物咬傷は,Pasteurella multocida(特にネコ咬傷で),ブドウ球菌,連鎖球菌,嫌気性菌を含めて,通常は複数の病原体が存在する。重篤な合併症には,感染性関節炎と骨髄炎がある。

症状,徴候,診断

発赤および咬傷に限局した痛みは,感染症を示唆する。腱の走行に沿った圧痛は,腱鞘への広がりを示唆する。運動で著明に悪化する痛みは,関節または腱鞘の感染症を示唆する。

診断は臨床的に行うが,皮膚に傷があれば,X線検査をして,継続して感染巣となりうる骨折または,歯もしくはその他の異物を検出すべきである。

治療

治療は,外科的デブリドマン,創傷の継続的開放,抗生物質療法がある。外来患者の治療は,経験的な抗生物質療法であり,通常,アモキシシリン/クラブラン酸500mg,1日3回経口投与による単独療法か,またはペニシリン500mg,1日4回経口投与(E. corrodens P. multocida ,連鎖球菌,嫌気性菌に対して)に加えてセファロスポリン(例,セファレキシン500mg,1日4回経口投与)または合成ペニシリン(例,ジクロキサシリン500mg,1日4回経口投与)(ブドウ球菌に対して)の併用療法である。患者がペニシリンに対してアレルギー性の場合,クリンダマイシン300mgを6時間毎に経口投与しうる。手は,機能肢位で副木を添え,挙上すべきである(手の障害: 機能肢位での副子固定(20°の手関節の伸展,60°の中手指節関節の屈曲,指節間関節のわずかな屈曲)。図 3: イラスト参照)。

図 3

機能肢位での副子固定(20°の手関節の伸展,60°の中手指節関節の屈曲,指節間関節のわずかな屈曲)。

機能肢位での副子固定(20°の手関節の伸展,60°の中手指節関節の屈曲,指節間関節のわずかな屈曲)。

感染していない咬傷は,外科的デブリドマンの実施と,感染した咬傷の治療に使用する抗生物質を50%の用量で予防的に投与する必要があるかもしれない。

ひょう疽

ひょう疽は,指先の指腹腔の,通常ブドウ球菌や連鎖球菌による感染症である。

最も多いのは遠位指腹部であり,その中心や側方,先端部が侵される。通常,指腹腔の隔壁が感染の拡散を制限し,膿瘍を形成するが,それが隣接組織への圧迫と壊死を生じさせる原因となる。深部にある骨,関節,屈筋腱が感染することがある。強度のズキズキする痛みがあり,指腹は腫脹し熱感があり強度の圧痛がある。治療は,迅速な切開および排膿(線維性の隔壁を適切に切る中外側切開術を使用)と,抗生物質の経口投与である。セファロスポリンによる経験的療法は,適切である。

手掌膿瘍

手掌膿瘍は,手掌の深部腔の化膿性感染症であり,一般的にはブドウ球菌または連鎖球菌による。

手掌膿瘍は,カラーボタン膿瘍,母指球隙膿瘍,手掌中央隙膿瘍が含まれる。膿瘍は手掌の深部区画のいずれにも発生し,手掌中央から背側に向かって,中手骨の間に広がり,手の背側に感染の様相を呈する。腫脹と触診での重度の圧痛とともに,強度の拍動痛を生じる。X線検査をして隠れた異物を検出すべきである。多くの重要な組織を注意深く避けながら手術室で行う切開と排膿(細菌培養も)と,抗生物質療法(例,セファロスポリン)が必要とされる。

屈筋腱の感染性腱鞘炎

屈筋腱の感染性腱鞘炎は,屈筋腱腱鞘内の急性感染症である。

通常の原因は,腱鞘への穿通と細菌の接種である。屈筋腱の感染性腱鞘炎は,Kanavelの徴候を示す:すなわち,患指の屈曲した安静時の位置,紡錘状の腫脹,屈筋腱腱鞘に沿った圧痛,および指の他動的伸展による痛みである。X線検査をして隠れた異物を検出すべきである。急性石灰性腱炎とRAは,運動が制限され,腱鞘に痛みを生じることがあるが,通常感染性の屈筋腱腱鞘炎とは,より緩徐な発症とKanavelの徴候の一部の欠如により鑑別される。

治療は,外科的ドレナージである(例,カニューレを片側の端から挿入し,灌流液が腱鞘に沿ってもう一方の端まで流れるようにして,腱鞘を灌流する)。抗生物質療法(経験的にセファロスポリンより開始)と培養が必要とされる。

ヘルペス性ひょう疽

ヘルペス性ひょう疽は,単純ヘルペスウイルスが原因である手指の遠位側面の皮膚感染症である。

ヘルペス性ひょう疽は,激痛を生じることがある。指の指腹部はあまり緊張していない。小疱は,末節骨の掌側または背側に発現するが,痛みが始まってからしばしば2,3日経過してからである。激痛はひょう疽の場合と似ていることがあるが,ヘルペス性ひょう疽は通常指腹部の緊張の欠如または小疱の存在によって鑑別しうる。

病態は限定された過程を経るが,再発しうる。切開とドレナージは禁忌である。局所用の5%アシクロビルは,最初のエピソードの期間を短くしうる。経口アシクロビル(800mg,1日2回経口投与)を発症直後に投与すると,再発を防ぐことがある。開放性または排膿中の小疱は,伝染を防ぐために被覆されるべきである。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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イラスト
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