メルクマニュアル18版 日本語版
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神経圧迫症候群

一般によくある末梢神経圧迫症候群には,手根管症候群,肘部管症候群,および橈骨管症候群が含まれる。神経の圧迫はしばしば感覚異常症を引き起こし;これらの感覚異常症は,通常検者の指先で,圧迫された神経を軽く叩くことによってしばしば再現しうる(ティネル徴候)。神経圧迫が疑われる場合,運動および知覚の神経伝導を正確に測定する神経伝導速度と遠位潜時の検査により確認できる。初期の治療は通常保存的であるが,保存的な処置が無効であるかまたは運動または知覚の著明な欠落症状がある場合,外科的除圧が必要なこともある。

手根管症候群

手根管症候群は,手関節の手根管を通る正中神経の圧迫によるものである。症状は,正中神経の分布領域における痛みと感覚異常症である。診断は,症状および徴候によって示唆され,神経伝導速度の検査によって確認される。治療は,人間工学的改善,鎮痛,副子固定と,ときにコルチコステロイド注射または手術などがある。

手根管症候群は,一般にきわめてよくみられ,30〜50歳の女性に最も多く発症する。危険因子は,RAまたはその他の手関節の関節炎(ときに発現している症状)(糖尿病,甲状腺機能低下症,先端巨大症,アミロイドーシス,手根管の妊娠による浮腫などである。繰り返し手関節を屈曲したり伸展したりする活動や仕事が原因となりうる。大部分の症例は特発性である。

症状,徴候,診断

症状は,ジンジンするようなしびれや軽いしびれ感を伴った手と手関節の痛みが,古典的な理解では正中神経に沿って(母指の掌側面,示指,中指,環指の橈側の半分)分布するが,手全体に広がることもある。典型的には,患者は夜間,灼熱痛またはうずくような痛み や,軽いしびれ感やジンジンするようなしびれとともに目覚め,痛みを軽減して正常な感覚を取り戻そうと手を振り動かす。母指球の萎縮と母指対立筋および母指外転筋の筋力低下が,後に出現することがある。

診断はティネル徴候,すなわち正中神経感覚異常が手根管の正中神経の部位の手関節の手掌表面を軽く叩くと再現することによって強く示唆される。関節屈曲(ファレン徴候)によるジンジンするようなしびれの再現も示唆的である。しかしながら,その他の種類の末梢神経障害を臨床的に鑑別診断することはときに困難である。症状が重症であるかまたは診断が不確定の場合,正中神経について伝導検査を実行すべきである。

治療

コンピュータのキーボードの位置を変えることや,その他の人間工学的な矯正が症状を軽減することがある。それ以外の治療は,特に夜に軽量な中間位での手関節スプリント(手の障害: 中間位での手関節スプリント。図 4: イラスト参照)を着用することや,軽い鎮痛薬(例,アセトアミノフェン,NSAID)を使用することである。これらの手段で症状のコントロールが得られなければ,コルチコステロイド(例,2〜3mLのデキサメタゾン,4mg/mL)を長掌筋腱の少し尺側で,手関節の遠位しわの近位部の手根管に局所注射をすべきである。厄介な症状が持続するか,もしくは繰り返される場合,または手の筋力低下と母指球の衰えが進行する場合,直視下または内視鏡下の手技を使用して手根管を外科的に除圧しうる。

図 4

中間位での手関節スプリント。

中間位での手関節スプリント。

肘部管症候群

(尺骨神経障害)

肘部管症候群は,肘関節の尺骨神経の圧迫または牽引である。

尺骨神経は一般に肘関節で,またはまれに手関節で刺激される。肘部管症候群は,最も多くは肘関節への負荷または長期のおよび過度の肘関節の屈曲によって生じる。肘部管症候群は,手根管症候群ほど一般的ではない。野球の投球動作は,肘関節内側の靭帯を痛めることがあるので危険性がある。

症状,徴候,診断

症状は,尺骨神経の走行に沿ったしびれ感や感覚異常(環指,小指,手の尺側面で)と,肘関節の痛みである。進行期には,手の内在筋と環指および小指の屈筋の筋力低下が出現することがある。筋力低下は,母指と示指によりつまむ力と手の握る力を障害する。

肘部管症候群は,手の尺側背側の感覚欠損の存在(知覚検査またはティネル徴候で)と,手関節より近位の尺骨神経の欠落所見の存在(徒手筋力テストまたは神経伝導速度検査で)によって,手関節(ギオン管内)における尺骨神経絞扼と鑑別される。

治療

治療は,肘関節を45°に伸展した肢位での夜間の副子固定と,日中の肘関節パッドの使用である。保存療法が無効である場合,外科的除圧が助けとなりうる。

橈骨管症候群

(後骨間神経症候群)

橈骨管症候群は,前腕近位の橈骨神経の圧迫である。

肘関節での圧迫は,外傷,ガングリオン,脂肪腫,骨腫瘍,橈骨上腕骨(“肘関節”)滑膜炎に起因しうる。

症状,徴候,診断

症状は,前腕背側と肘関節外側に電撃痛がある。痛みは,意図的に手関節および手指の伸展と前腕の回外をすることにより生じる。橈骨神経は,このレベルでは主に運動神経であるので,感覚消失はまれである。伸筋の筋力低下が主要な所見であるとき,病態は後骨間神経麻痺である。上腕骨外上顆炎は外上顆周辺で同様の圧痛を生じることがあるが,橈骨神経の流れに沿ってティネル徴候や圧痛は生じない。

治療

副子固定は,強力または反復性の回外運動や手関節の背屈を回避できるので,神経にかかる圧力を減少させる。下垂手や指の伸展の筋力低下が出現するかまたは保存療法が3カ月を経ても症状を軽減しない場合,外科的除圧法が必要かもしれない。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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