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咳は,気道内の異物を除去するために反射的にまたは意識的に行われる爆発的な呼気動作である。咳は,気道内または上気道内における粘液またはその他の異物の存在に対する正常な反応であるが,持続性の咳は苦痛を伴い,また一般に肺内気道への刺激を示唆する。咳は,患者が来院する理由として,5番目に多い症状である。咳の自覚は,かなり様々である。急に生じたり,睡眠を妨げたり,胸壁に筋骨格の痛みを生じさせたりする咳は,苦痛となりうる。数十年かけて進行する咳(例,軽度の慢性気管支炎を有する喫煙者における咳)は,患者にとってかなり気づきにくいか,正常に思える場合がある。
病因
考えられる咳の病因は,症状が急性(3週間未満)か慢性かによって異なる。
急性咳は上気道感染(URI),特に感冒により生じることが最も多い。その他の原因には,肺炎;アレルギー性,ウイルス性,または細菌性の鼻炎もしくは副鼻腔炎による後鼻漏;およびCOPD増悪などがある。咳は,まれに肺塞栓で発現する唯一の症状である場合がある。高齢者では,急性咳は,誤嚥または心不全を示す場合がある。
喫煙者における
慢性咳は慢性気管支炎に起因することが最も多く,慢性気管支炎は2年以上の間に継続的に3カ月以上にわたって湿性咳が存在することと定義される。腫瘍による上気道の圧迫はまれではあるが,常に考慮に入れるべきである。喫煙歴にかかわらず最も一般的な原因は,後鼻漏症候群,胃食道逆流症(GERD),喘息(咳型喘息),およびアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の使用などである。あまり一般的ではない原因には,好酸球増加性気管支炎(気道過敏性はなく喀痰中の好酸球増加を特徴とする)および気管支拡張症などがある。小児における慢性咳の原因は成人と同様であるが,誤嚥および百日咳も考慮に入れなければならない。URI後の気管気管支炎は咳の一般的な原因であるが,まれに感染後3カ月以上続く。外耳道内の埋伏耳垢または異物が,迷走神経の耳介枝の刺激を介して反射性の咳を引き起こすことがまれにある。心因性の咳はさらにまれであり,除外診断である。
評価
病歴:
URIおよび副鼻腔の症状は,後鼻漏症候群を示唆するが,後鼻漏はしばしば他の症状を伴わずに咳のみを引き起こす。胸焼け,嗄声,および慢性的な夜間または早朝の咳は,特に他の症状がない場合は,GERDを示唆する。塵埃またはアレルゲンへの暴露後の咳は,咳喘息を示唆する。喫煙者における膿性痰を伴う慢性咳は,慢性気管支炎を示唆する。しかしながら,これらの患者における咳の変化は,肺癌の初期症状の可能性がある。ザラザラした痰を伴う咳は,気管支結石症を示唆することがある。大量の痰は,肺胞上皮癌を示唆する。
身体診察:
身体診察は,副鼻腔炎,鼻炎,および後鼻漏の徴候に焦点を当てるべきである。咳をしているときの肺の聴診は,喘息(喘鳴)または気管支拡張症(いびき音)を示唆する肺音の検出に役立つことがある。耳の診察によって反射性咳の誘因を検出できる可能性がある。
検査:
病歴および診察から明確な病因が判明しない急性または慢性咳を有する患者には,ほとんどの場合,臨床的判断に基づいて,後鼻漏症候群,GERD,または喘息に対する経験的治療を行う;これらの治療的介入に対して十分な反応があれば,さらに検査を行う必要はなくなる。胸部X線検査を行う場合もあるが,必ずしも役に立つわけではない。介入に対する反応が不十分な慢性咳の患者には,喘息に対するさらに詳しい検査(メタコリンを用いた肺機能検査,副鼻腔疾患に対する副鼻腔CT,またはGERDに対する食道pHモニタリング)を行う場合がある。気管支鏡検査は,肺癌または気管支腫瘍が疑われる患者に選択的に行うべきである。
治療
治療では,基礎となる原因の処置を行う。咳に対する鎮咳薬または粘液溶解薬の投与を支持する根拠が少ないにもかかわらず,患者はこのような治療をしばしば期待したり,要求したりするが,治療の選択肢は複数ある。咳をすることは,気道から分泌物を除去するための重要な機序であり,呼吸器感染症の治療の助けとなりうる。したがって,感染状態における咳の抑制は慎重に行うべきである。咳に対する非特異的な治療は,可能な限り,URI患者および基礎となる原因に対する治療を受けても咳が続く患者に対してのみ行うべきである。
鎮咳薬は,延髄の咳中枢を抑制するか(デキストロメトルファンおよびコデイン),気管支および肺胞にある迷走神経の求心性線維の伸展受容体を麻痺させる(ベンゾナテート)。
デキストロメトルファンは,麻薬性のレボルファノールと同属であり,錠剤またはシロップ剤として成人では15〜30mg,1日1〜4回または小児では0.25mg/kg,1日4回が効果的である。コデインは鎮咳,鎮痛,および鎮静作用を有するが,依存性が問題となる可能性があり,悪心,嘔吐,便秘,および耐性が一般的な有害作用である。常用量は,成人では必要に応じて10〜20mg,経口で4〜6時間毎,小児では0.25〜0.5mg/kg,1日4回である。その他のオピオイド系薬物(例,ヒドロコドン,ヒドロモルホン,メサドン,モルヒネ)は鎮咳作用を有するが,依存および乱用の可能性が高いため投与を避ける。ベンゾナテート(テトラカインの同属で液体入りのカプセル)は,100〜200mg,経口で1日3回が効果的である。吸入イプラトロピウムは,鎮咳薬とみなされることは一般的でないが,URIによる急性咳を有する一部の患者で役に立つ場合がある。
去痰薬は,分泌物の粘稠度を低下させ,喀出(すなわち咳をして吐き出すこと)を促すと考えられているが,効果は限られている。
グアイフェネシン(シロップ剤または錠剤で200〜400mg,経口で4時間毎)は,重篤な有害作用がないため最も一般的であるが,ブロムヘキシン,トコン,ヨウ化カリウム飽和溶液(SSKI),およびドミオドルなど多くの去痰薬がある。噴霧式去痰薬にはイソプロテレノール,ベクロメタゾン,N-アセチルシステイン,およびデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)などがあり,一般に気管支拡張症または嚢胞性線維症の患者に対して病院で行う咳の治療に用いられる。十分な水分補給を確実に行うと喀痰が容易になる場合があり,蒸気の吸入でも同様のことが起こりうるが,いずれも厳密な検証が行われたわけではない。
局所療法は,アカシア,カンゾウ,グリセリン,はちみつ,およびセイヨウミザクラシロップの咳止めドロップまたはシロップ(粘滑薬)などを用い,局所的に,およびおそらく気分的に症状を和らげるが,科学的根拠による支持はない。
咳刺激薬は,咳を誘発する薬で,嚢胞性線維症および気管支拡張症などの疾患(そうした疾患では,湿性咳が気道内の異物の除去および肺機能の維持に重要であると考えられている)に適応となる。DNaseまたは高張食塩水は,咳および喀痰を促すために胸部の理学療法および体位ドレナージと併用される。この方法は,嚢胞性線維症には効果があるが,その他の慢性咳の原因の多くには効果がないと思われる。
気管支拡張薬(アルブテロールおよびイプラトロピウムまたは吸入コルチコステロイドなど)は,URI後の咳および咳型喘息の咳に有効な場合もある。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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