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喀血は気道から血液を喀出することである。肺の血液の大部分(95%)は,血圧が低い肺動脈を循環後,肺毛細血管床に達し,そこでガス交換を行う;肺の血液の約5%は,気管支動脈という血圧が高く,大動脈から始まり大部分の気道と支持組織に血液を供給する血管を循環する。喀血の血液は,肺動脈が,外傷,肉芽腫性または石灰化リンパ節もしくは腫瘍のびらん,またはまれに肺動脈カテーテルにより損傷された場合,もしくは肺毛細血管が炎症により損傷された場合を除き,一般にこの気管支循環から生じる。血液が混在した痰は,URIおよびウイルス性気管支炎など多くの軽症呼吸器疾患に一般的である。大喀血とは,24時間の間に600mL(およそ膿盆1杯分)の血液を出血することである。
鑑別疾患は多い(肺の症状がある患者へのアプローチ: 喀血の鑑別診断表 2: を参照)。気管支炎,気管支拡張症,結核,および壊死性肺炎または肺膿瘍が,原因の70〜90%を占める。原因として,空洞内のアスペルギルス感染症が認識されることが増えているが,悪性腫瘍よりも少ない;40歳以上の喫煙者に喀血があれば,原発性肺癌を疑うきっかけとなる。転移性癌はまれに喀血を引き起こす。肺-腎症候群およびびまん性肺胞出血症候群(びまん性肺胞出血および肺-腎症候群を参照 ),肺塞栓症および肺梗塞(肺塞栓症を参照 ),ならびに左室機能不全(特に僧帽弁狭窄症に続発する場合)は,喀血のあまり一般的ではない原因である。心不全における喀血はまれであるが,左室機能不全による肺静脈圧の上昇の結果として起こる。原発性気管支腺腫および動静脈奇形はまれだが,重度の出血を引き起こす傾向がある。
まれに,胸腔内の子宮内膜症が原因で月経中に喀血が起こる(月経随伴性喀血)。
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表 2
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喀血の鑑別診断
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喉頭および咽頭
癌
リンパ腫
結核性潰瘍
気管および大気管支
良性または悪性の原発性腫瘍(癌および腺腫)
気管支嚢胞
気管支結石症
大動脈瘤によるびらん
乾酪石灰化リンパ節によるびらん
リンパ節,食道,または他の縦隔器官に発生した腫瘍によるびらん
重症急性気管支炎
毛細血管拡張症
外傷
小気管支構造
急性気管支炎
腺腫(カルチノイドまたは円柱細胞腫)
気管支拡張症
気管支肺分画症
癌
慢性気管支炎
外傷
肺実質
膿瘍
活動性肉芽腫性疾患(結核,真菌,寄生虫,梅毒)
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急性肺炎
陳旧性空洞内の真菌球(アスペルギローマ)
グッドパスチャー症候群またはその亜型
特発性ヘモジデリン沈着症
梗塞
原発性または転移性腫瘍
外傷
心臓および血管
肺実質への漏出を伴う大動脈瘤
心房粘液腫
肺静脈障害を伴う線維性縦隔炎
左室不全
僧帽弁狭窄症
肺動静脈奇形
肺塞栓症/肺梗塞
原発性肺高血圧症
出血性素因
抗凝固療法
ビタミンK依存性因子の欠乏:プロトロンビン(Ⅱ),スチュアート因子(Ⅹ),第Ⅶ因子,クリスマス因子(Ⅸ)
播種性血管内血液凝固
線溶療法:ウロキナーゼ,ストレプトキナーゼ
種々の先天性血液凝固異常
血小板減少症
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評価
病歴:
重要な目的は,喀血を吐血および鼻咽頭または口腔咽頭からの出血と鑑別することである。一般にこの鑑別は病歴と身体診察からなされる。大量の喫煙歴は,悪性腫瘍を示唆する。上葉から出血している場合,出血の発生源と思われる場所についての患者の知覚は,出血部位の特定に役立つ。
身体診察:
診察では,上気道を出血部位から除外すること,および局所的な異常(出血が起こっている可能性のある部位を特定しうる)を見つけるために肺全体を聴取することに焦点を当てる。しかし,残念なことに,他の部位からの出血が肺に吸引される場合がある。
検査:
軽度の喀血を呈する患者は,外来で検査を受けられる。胸部X線は必須である。X線の結果が正常で,一致する病歴があり,喀血が大量でない患者には,気管支炎に対する経験的治療を行うことがある。結果に異常がある患者および支持する病歴がない患者には,CTおよび気管支鏡検査を行うべきである。CTは,胸部X線では明らかにならない肺病変を発見する場合があり,気管支鏡検査および生検を見越した病変の位置の特定に役立つことがある。換気/血流スキャンまたはCT血管造影は,肺塞栓症の診断を確定しうる;それに対して,CT検査および肺血管造影は,肺動静脈瘻を検出しうる。病因が不明である場合,咽頭,喉頭,食道,および/または気道のファイバースコープによる観察が,喀血を吐血および鼻咽頭または口腔咽頭からの出血から鑑別するために適応となることがある。
大喀血のある患者は,検査の前に治療および安定化が必要である。喀血症例の30〜40%は原因不明である。原因不明の喀血がある患者の予後は一般に良好で,通常,評価から6カ月以内に出血は消失する。
治療
治療の2つの目的は,侵されていない肺への血液の吸引(窒息につながる場合がある)を予防すること,および出血の持続による失血を予防することである。
出血部位が不明であることが多いため,侵されていない肺の保護が難しい場合がある。方法は,姿勢による方法(例,出血している肺を下にして寝かせる),選択的挿管,および出血している肺につながる気管支の閉塞などである。
失血の予防には,あらゆる出血性素因の改善および止血のための直接的な処置などを行う。凝固因子の欠乏は,新鮮凍結血漿および凝固因子の輸注または血小板の輸注により改善されうる。レーザー療法,焼灼術,またはエピネフリンもしくはバソプレシンの直接注射が,気管支鏡下で行われる場合がある。
大喀血は硬性気管支鏡の数少ない適応症の1つであるが,硬性気管支鏡は,気道のコントロールをもたらし,気管支ファイバースコープよりも視野が広く,優れた吸引を可能にし,レーザー療法などの治療的介入にも適している。肺区域の塞栓術は,大喀血を止めるための推奨的方法になりつつあり,その成功率は最大90%と報告されている。緊急手術は,硬性気管支鏡や塞栓術で制御できない大喀血に適応となるが,一般に最終手段と考えられている。
早期切除は,気管支の腺腫または癌に対して適応となる場合がある。気管支結石症(隣接した気管支への石灰化リンパ節によるびらん)は,硬性気管支鏡下で結石の気管支内除去が行えない場合,肺切除が必要となる。心不全または僧帽弁狭窄症に続発する出血は,通常,心不全に対する特異的な治療法に反応するが,まれに僧帽弁狭窄症による生命を脅かす喀血に対して緊急の僧帽弁弁膜切開術が必要となる。肺塞栓症による出血が大量であることはまれであり,ほとんどの場合,出血は自然に止まる。肺塞栓症が再発し出血が続く場合,抗凝固療法は禁忌であり,下大静脈フィルターの留置が最善の治療法である。
気管支の拡張した領域からの出血は,通常,感染症により生じるため,適切な抗生物質を用いた感染症の治療および体位ドレナージが必須となる。
鎮静薬およびオピオイド系薬物は換気駆動を抑制するため,使用は避けるべきである。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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