メルクマニュアル18版 日本語版
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職業性喘息

職業性喘息は可逆性の気道閉塞で,職場におけるアレルゲン感作後,数カ月から数年経て発症する。症状は,呼吸困難,喘鳴,咳,ときには上気道のアレルギー症状である。診断は職業歴に基づいて行い,職業活動,職場環境におけるアレルゲン,仕事と症状との時間的関連性などの評価が含まれる。アレルゲンの皮膚試験や吸入誘発試験は専門のセンターで行われることがあるが,一般に必要ない。治療は,患者を暴露環境から遠ざけること,および必要に応じて喘息薬を使用することである(喘息: 薬物療法も参照 )。

職業性喘息は,喘息の既往歴のない労働者における喘息の発症である;症状は通常職場でのアレルゲン感作から数カ月〜数年の間に現れる。ひとたび感作が起こると,その労働者は例外なく初回反応時のアレルゲン濃度よりはるかに低濃度で反応する。職業性喘息は,職業により悪化した喘息(症状のあるまたは無症状の喘息をすでに有する労働者において,職場でほこりや煙霧など肺刺激物に1回または繰り返し暴露した結果,喘息が再燃または悪化したもの)とは異なる。職業により悪化した喘息は職業性喘息より一般的で,暴露を減らし,適切な喘息治療をすれば一般に治まる。予後もよりよく,特異的な誘発アレルゲンについての同等の臨床検査は必要ない。

職場での吸入性暴露が原因の気道疾患は他にいくつかあるが,職業性喘息や職業により悪化した喘息と鑑別できる。

反応性気道機能不全症候群(RADS)は,非アレルギー性で,喘息の既往歴のない人が刺激性の塵,煙霧,または気体に急性に過剰に暴露した後に持続性で可逆性の気道閉塞を起こすものである。気道炎症は急激な刺激物の除去後も持続し,この症候群は喘息と鑑別できない。

反応性上気道症候群では,気道刺激物に急性または繰り返し暴露した後に,上気道(すなわち鼻,咽頭)の粘膜症状が現れる。

刺激物に由来する声帯機能不全は,喘息に類似し,急激な刺激物の吸入後に声帯の異常な付着および閉鎖が,特に吸気の際に起こる。

産業性気管支炎(刺激物誘発性の慢性気管支炎)では,急性または慢性的な刺激物の吸入暴露後に,気管支炎症が咳を引き起こす。

閉塞性細気管支炎では,細気管支損傷がガス(例,無水アンモニア)の急性の吸入暴露後に起きる。主な2つの形態は増殖性と狭窄性である。狭窄型はより一般的で,他の形態のびまん性肺損傷と関連がある場合とない場合がある。

病因

職業性喘息は,免疫介在性および非免疫介在性の両方の機序により引き起こされる。免疫性機序には,職場のアレルゲンに対するIgEおよび非IgE介在性過敏性が含まれる。職業性アレルゲンは何百種類も存在し,低分子量化学物質から大きな蛋白質まで様々である。例としては,穀物粉塵,洗浄剤製造業で使われる蛋白分解酵素,ベイスギ,イソシアネート,(まれに)ホルマリン,抗生物質(例,アンピシリン,スピラマイシン),エポキシ樹脂,茶があげられる。

非免疫介在性炎症の機序は職業性気道疾患の原因となり,気道上皮および上気道粘膜に直接的に刺激を引き起こす。

症状と徴候

症状には息切れ,胸部圧迫感,喘鳴,咳などがあり,しばしば,くしゃみ,鼻漏,流涙など上気道症状を伴う。上気道および結膜症状が,典型的な喘息症状が現れる数カ月または数年前に現れることがある。症状は特定の塵や蒸気への暴露後に,仕事中に起こることもあるが,しばしば仕事が終了した数時間後まで現れないことがあり,職業性暴露との関連性を不明瞭にしている。夜間喘鳴が唯一の症状でありうる。しばしば症状は休日や休暇中に消失するが,暴露が続くと一時的な再燃や寛解が不明瞭になる。

診断

診断は,職場アレルゲンと喘息症状との関連性を明らかにすることによる。診断は,アレルゲン暴露を示す職業歴によって疑われる。材料についての安全性データシートは,可能性のあるアレルゲンをリストアップするために,また,疑わしい抗原を用いた免疫学的検査(例,皮膚のプリックテスト,皮内テスト,またはパッチテスト)の結果が職場の原因物質が患者に影響していることを証明した場合に,確認のために用いる。疑わしい抗原暴露後に気管支反応性が亢進することも,診断を下す助けとなる。

難しい症例では,慎重な管理の下,検査室で吸入誘発試験を行い,気道閉塞の原因を確定する。そのような検査は吸入誘発試験に熟練し,ときに起こりうる重度の反応を監視できる臨床センターに任せるべきである。肺機能検査または最大呼気流量測定で作業中の呼吸気量の減少が示されれば,職業性暴露が原因であるさらなる証拠となる。メタコリン負荷試験を気道過敏性の程度の判定に用いることもある。メタコリン感受性は,職業性アレルゲンへの暴露停止後には低下しうる。

特発性喘息との鑑別は,一般に,症状のパターン,職場アレルゲンの証明,アレルゲン暴露と症状や生理学的悪化との関連性に基づいて行う。

治療と予防

治療は特発性喘息と同じで,吸入気管支拡張薬およびコルチコステロイドを含む(喘息: 薬物療法を参照 )。

塵の抑制は不可欠である。しかしながら,感作および臨床疾患が全く起こらないようにすることは不可能である。ひとたび感作が起こると,職業性喘息患者は空気中に浮遊する極めて低レベルのアレルゲンにも反応することがある。アレルゲンが存続する環境に戻ると,一般に予後はさらに悪く,呼吸器症状がより多く,肺生理学的異常が増し,医薬品の必要性が高くなり,再燃が高頻度化および重症化する。可能なかぎり,症状のある人は症状を起こすことが分かっている環境から回避させるべきである。暴露が続けば,症状は持続する傾向がある。職業性喘息は早期の診断と暴露の停止により,ときには治癒する。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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