メルクマニュアル18版 日本語版
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閉塞性睡眠時無呼吸

閉塞性睡眠時無呼吸は,呼吸停止(10秒より長いと定義)を引き起こす睡眠時の部分的および/または完全な上気道閉塞のエピソードから成る。診断は睡眠歴,身体診察,および睡眠ポリグラフ検査に基づく。治療には,経鼻的持続陽圧呼吸療法および口腔内装具を用い,治療抵抗性の症例では手術を行う。治療を行えば予後は良好だが,大半の症例は未診断および未治療のため,高血圧,心不全,過剰な眠気が原因の自動車およびその他の事故による損傷ならびに死亡を引き起こす。

危険性のある患者では,睡眠により上気道が不安定になり,上咽頭または中咽頭もしくはその両方が部分的または完全に閉塞する。呼吸が減弱しているが停止していない場合,その状態は閉塞性睡眠時低呼吸と呼ぶ。

先進国における閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の有病率は2〜4%である;病態が認識されておらず,症状のある患者でさえしばしば未診断である。OSAは男性のほうが女性より最大で4倍多いが,それはおそらく女性における診断が不十分であるため,女性のほうがいびきの症状を訴えることを躊躇しうるため,または照会において性差による先入観が働くためであろう。

病因

解剖学的な危険因子には,肥満(肥満度指数が30を超える);短いか後退した下顎や舌および扁桃の肥大,咽頭側壁の肥厚,または副咽頭周囲の脂肪沈着で“混み合っている”中咽頭;丸い頭部;シャツの襟サイズが45cmを超えていることなどがある。その他の同定されている危険因子には,閉経していること,および飲酒または鎮静薬の使用が含まれる。睡眠時無呼吸の家族歴は症例の25〜40%において認められ,これはおそらく本質的な換気駆動力または咽頭構造を反映している;罹患する確率は,家族に罹患者が多いほど高くなっていく。また,OSAは,高血圧,脳卒中,糖尿病,胃食道逆流症,夜間狭心症,心不全,および甲状腺機能低下症のような慢性疾患とともにしばしば発見される。

肥満がOSAと肥満低換気症候群(肥満および代謝症候群: 合併症を参照 )の共通の危険因子なので,この2つの病態は共存しうる。

気道閉塞により,発作的な吸気努力,ガス交換の減少,正常な睡眠構造の崩壊,および睡眠からの部分的または完全な覚醒が生じる。低酸素症および/または高炭酸ガス血症ならびに睡眠の分断化が相互に作用して,特徴的な症状や徴候が生じる。

OSAは,睡眠に関連する上気道抵抗の極端な形態である。OSAほど重症でない形態には,原発性いびき;大きな吸気音を生じるが睡眠覚醒を伴わない咽頭の気流抵抗;および上気道抵抗症候群(より重症な咽頭気流抵抗で,いびきおよび一時的な睡眠覚醒を生じさせる)などがあるが,これらではO2飽和度の低下は起こらない。上気道抵抗症候群の患者は,典型的にはOSA患者より若年で肥満度が低く,原発性いびきを有する患者よりも日中の眠気をよく訴える。しかし,いびきおよび上気道抵抗症候群の症状,診断評価,および治療は,それ以外の点ではOSAと同様である。

症状と徴候

症状には大きな激しいいびきを含み,OSA患者の80〜85%で報告される。しかしながら,いびきをかく人の大半はOSAではなく,さらに評価を必要とする人はわずかである。その他の症状には,睡眠時の窒息,喘ぎ,または鼻鳴らし,および浅い睡眠,睡眠の継続困難があげられる(表: を参照)。患者の大半は睡眠中の症状に気づかないが,同衾者や同室者により知らされる。 日中の症状には,疲労,過剰な眠気,集中力低下などがある。睡眠に関する愁訴の頻度および日中の眠気の程度は,夜間の覚醒回数および覚醒時間の長さとおおまかな相関性がある。高血圧や糖尿病は,年齢や肥満を考慮しても,いびきをかく人に2倍多くみられる。OSAは心不整脈(例,徐脈,心停止)および心不全とも関連しうる。

診断

診断は,同定可能な危険因子および/または症状のある患者において疑われる。患者および同衾者に問診すべきである。過度の日中の眠気に関する鑑別診断は広範囲にわたり(睡眠障害および覚醒障害: 不眠症および過度の日中の眠気を参照 ),睡眠衛生不良のための睡眠の量または質の低減;ナルコレプシー;薬物による鎮静または精神状態の変化;慢性疾患(心血管系,呼吸器系,または代謝系の障害など)およびそれに伴う治療(例,利尿薬,インスリン);抑うつ;アルコールまたは薬物乱用;およびその他の原発性睡眠障害(例,周期性四肢運動障害,下肢静止不能症候群)などがある。睡眠歴を得るべきなのは,全ての高齢患者;日中の疲労,眠気,およびエネルギー不足の症状がある患者;過体重または肥満の患者;および慢性的な病態,例えば高血圧(OSAが原因となりうる),心不全(OSAを引き起こす場合およびOSAが原因の場合がある),脳卒中などを有する患者においてである。症状がいびきのみの患者の大半は,他の症状や心血管系の危険性がなければ,OSAの広範な評価を必要としない。

身体診察には,鼻閉,扁桃肥大,高血圧のコントロール不良の徴候,および首周りの計測に対する評価を含むべきである。

診断は睡眠ポリグラフ検査(睡眠障害および覚醒障害: 検査を参照 )を用いて確定されるが,この検査は,プレスチモグラフィによる呼吸努力;流量センサーによる鼻および口の気流量;酸素測定によるO2飽和度;EEGによる睡眠構造(睡眠段階に対して),顎筋電図(筋緊張低下に対して),および眼電図(急速眼球運動に対して)の持続的な測定からなる。また,患者をビデオで観察する。無呼吸のエピソードによって不整脈が起こるかどうかを判断するのに,心電図は有用である。その他に評価するものは,四肢の筋肉活動(呼吸に関連のない睡眠覚醒の原因を評価,例えば下肢静止不能症候群および周期性四肢運動障害)ならびに体位(無呼吸は仰臥位でのみ起こりうる)である。

一部の施設では,OSA診断のために,心拍数やパルスオキシメトリーおよび鼻の気流量のみを測定する携帯式モニターを用いる。いくつかの研究では,これらのモニターと睡眠ポリグラフ検査との良好な相関関係が示されているが,共存する睡眠障害(例,四肢静止不能症候群)が認識されないままになる可能性があるため,これらのルーチンでの使用については論争が続いている。

睡眠中の呼吸障害を表すのに用いられる一般的な要約尺度は,無呼吸-低呼吸指数(AHI)―睡眠中の無呼吸および低呼吸のエピソード総数を睡眠時間で割ったもの―続きである。AHI値は異なる睡眠段階ごとに計算が可能である。呼吸障害指数(RDI)は類似した尺度で,これは1時間に血中O2飽和度が3%以上低下する回数を示す。 EEGを用いると覚醒指数(AI)の計算が可能であり,これは睡眠1時間ごとの覚醒回数である。AIはAHIまたはRDIと相関しうるが,無呼吸および飽和度低下のエピソードの約20%は覚醒を伴わない,もしくはその他の覚醒原因が存在する。OSAと診断するには,AHIが5以上になる必要がある;15以上および30以上のAHIは,それぞれ中等度ならびに重度の睡眠時無呼吸を示す。いびきによって,AHIが5以上になる可能性が7倍増加する。AIとRDIは,患者の症状とは適度に相関する程度である。

補助検査は,必要に応じて,OSAに関連した慢性的な病態を評価するために,上気道の画像診断,甲状腺刺激ホルモン,およびその他の検査を含むことがある。

予後

適切な治療を受けた場合の予後は良好である。しかしながら,OSAが未治療の場合(未診断のことが非常に多いため,未治療は一般的である),コントロール不良の高血圧および心不全を含む長期の後遺症が存在しうる。過剰な眠気の有害作用(例えば失業および性的機能障害)は,家族にかなり影響を与えうる。

おそらく最も重要なことは,過度の日中の眠気が事故,特に自動車事故による重篤な損傷および死亡の主要危険因子となることである。したがって,眠気のある患者には,自動車の運転または睡眠発作が生じた場合に危険となりうる活動に従事することの危険性を警告すべきである。さらに,周術期の心停止はOSAによるとされ,おそらく人工エアウェイ抜去後のOSAに対する麻酔の影響に起因する。それゆえ,患者はOSAであることを手術前に麻酔科医に知らせ,また,入院期間中に持続陽圧呼吸療法(CPAP)を受けることを求めるべきである。

治療

初期治療では基礎となる危険因子を扱う。改善しうる危険因子には,肥満,飲酒および鎮静薬の使用,ならびにコントロール不良の慢性疾患が含まれる。減量はOSA治療の重要な要素であるが,大半の患者,特に疲労感または眠気のある患者にとっては非常に困難である。

扁桃腺肥大および鼻ポリープによる上気道閉塞には外科的修正を考慮すべきである;巨舌症または小顎症に対しても,手術が1つの選択肢となる。

OSAに特異的な治療の目的は,低酸素症および睡眠の分断化のエピソードを減少させることである;治療はそれぞれの患者および障害の程度に合わせて行う。治癒の定義は,症状が,AHIが閾値(通常10回/時)を下回る値に減少するほど改善することとされる。中等度および重度の眠気は,治療成功の評価因子である。

CPAP: 経鼻CPAPは,自覚的な眠気を訴える大半の患者に対する第1選択の治療である;眠気を否定する患者での効果には疑問の余地がある。CPAPは閉塞しうる上気道に陽圧をかけることで,上気道の開存性を改善する。有効な陽圧の範囲は,典型的には3〜15cmH2Oである。疾患の重症度は陽圧の必要量と相関しない。臨床的に改善が認められなければ,再度の睡眠ポリグラフ検査を参考にして陽圧を調整することもある。AHIにかかわらず,CPAPは神経認知障害および血圧も低減しうる。もしCPAPを離脱後数日で症状が再発した場合,急性の医学的病態に対し行われる短期の治療介入は通常よく耐えうる。治療期間は確立されていない。

経鼻CPAPの治療不成功は,患者の遵守に限界があるため,一般的に起こる。有害作用には,咽頭痛(症例によっては加温加湿した空気の使用で軽減されうる)および不適合なマスクによる不快感があげられる。

肥満による低換気症候群(肥満および代謝症候群: 合併症を参照 )の患者では,吸気補助(二相性気道内陽圧)を用いることでCPAPを増強させることが可能である。

口腔内装具: 口腔内装具は下顎を前出させるように,または少なくとも睡眠による下顎後退を予防するように設計されている。舌を前方に引き上げるよう設計されたものもある。いびきおよびOSAの治療にこれらの装具を用いることは,受け入れられつつある。装具とCPAPとの比較には限界があり,特異的な適応および費用対効果は確立されていない。

手術: 手術は非侵襲的治療に抵抗性を示す患者に限り行われる。口蓋垂口蓋咽頭形成術(UPPP)が最も一般的な手技である。これには上気道拡大のためのアデノイド切除を含めた,扁桃口蓋弓から披裂喉頭蓋ひだにかけての粘膜下組織の切除が含まれる。CPAPを手術までのつなぎの治療として利用したある研究において,UPPPがCPAPと同等であることは示されたが,2種類の介入の直接的な比較は行われていない。病的な肥満,または解剖学的な気道狭窄を有する患者では,UPPPによる良好な結果を確認しえない場合がある。さらに,いびきの消失により,UPPP後は睡眠時無呼吸を見分けにくくなる。これら無症候性の閉塞は,外科的介入前の無呼吸エピソードと同等に重症でありうる。

補助的外科手技には,舌正中切除術および下顎上顎骨前進術が含まれる。後者は,UPPPで治癒しない場合の第2段階の手技としてしばしば勧められる。この2段階アプローチに関する非選択の患者における複数施設での研究の結果は得られていない。

気管切開術は閉塞性無呼吸に対する最も有効な治療法だが,これは最後の手段である。これは睡眠中の閉塞部位をバイパスする。OSAおよび/または閉塞性睡眠時低呼吸により最も重度の影響を受けている患者(例,肺性心を有する患者)に適応される。気切孔の治癒には1年以上の期間を要す。

ラジオ波焼灼療法と同様,レーザーによる口蓋垂形成術は,大きないびきの治療として奨励されている。これにより2〜6カ月間,いびき音の大きさが70〜80%減少する;しかしながら,1年後にはその効果は低減する。睡眠時無呼吸症候群は,より適切な治療が遅れないように,これらの評価ついて考慮すべきである。

補助的治療: 補助的治療は一般的に用いられるが,第1選択の治療としての役割は証明されていない。

患者によっては,O2投与により呼吸性アシドーシスや起床時の頭痛を起こす場合があり,好ましい反応を示すかどうかを予測するのは不可能である。

換気駆動力の刺激薬として多くの薬物(例,三環系抗うつ薬,テオフィリン)が用いられているが,限定的な効果および/または低い治療指数のため,ルーチンな使用を勧めることはできない。

いびき用にOTCで販売されている鼻腔拡張用具および喉スプレーは,その効果が証明されていない。

患者の教育および支援: 情報提供を受けた患者および家族は,うまく治療戦略に取り組むことができ,これには他の治療に対して抵抗性を示す患者における気管切開術が含まれる。患者支援団体は,情報の提供および時宜にかなった効果的な治療を支援するのに役立つ。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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