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換気不全は,呼吸負荷が呼吸運動をになう筋の筋力によって,もはや支えられないときに生じるPaCO2の上昇(高炭酸ガス血症)である。最も一般的な原因は喘息およびCOPDの急性増悪である。所見は呼吸困難,頻呼吸,錯乱を含む。死に至る場合もある。診断はABGおよび患者の観察によって行われ,胸部X線および臨床評価は原因を詳しく検討するのに役立つ。治療は症状によって異なるが,しばしば機械的人工換気を行う。
病因と病態生理
高炭酸ガス血症が生じるのは,肺胞換気量が減少またはCO2産生の増加に対して十分に増加できない場合である。
肺胞換気量の減少は,分時換気量の減少または死腔換気量の増加によって起こる。
分時換気量の減少は,呼吸器系にかかる負荷(抵抗負荷,肺と胸壁の弾性負荷,分時換気負荷を含む)と有効な吸気努力のための神経筋能力が不均衡な場合(原因については呼吸不全および機械的人工換気: 負荷(抵抗,弾性,分時換気)と神経筋能力(駆動,伝達,筋力)の平衡が肺胞換気を維持する能力を決定する。PEEP = 呼気終末陽圧。図 2: 参照)が存在するときに起こる。
生理学的死腔とは,呼吸器系のシステムの中でガス交換を行わない部分である。これには,解剖学的死腔(中咽頭,気管,気道)および肺胞死腔(すなわち,換気されているが灌流のない肺胞)を含む。生理学的死腔は正常では1回換気量の30〜40%を占めるが,気管挿管の患者では50%に増加し,広範囲の肺塞栓,重度の肺気腫および喘息発作重積状態では70%を超えるほど増加する。したがって,あらゆる任意の分時換気量に対して,死腔が多いほど,CO2の排出は不良となる。
CO2産生量の増加は通常,換気不全の一因にすぎない。その増加は発熱,敗血症,外傷,熱傷,甲状腺機能亢進,悪性高体温,および呼吸仕事量の増加に伴って起こる。
高炭酸ガス血症は動脈血pHを低下させる(呼吸性アシドーシス)。重度のアシドーシス(pH7.2未満)は,肺細動脈収縮,全身血管拡張,心筋収縮能の減少,高カリウム血症,低血圧,心過敏症の原因となり,生命を脅かす不整脈が起こる可能性がある。また,急性の高炭酸ガス血症は,脳血管拡張および頭蓋内圧亢進(急性の頭部損傷の患者における主な問題)を引き起こす。時間とともに,組織の緩衝能および腎性代償によりアシドーシスの大部分が改善する。しかしながら,Paco2の突然の上昇の方が,代償性変化よりも急激に起こる可能性がある(完全に無呼吸の患者ではPaco2は3〜6mmHg/分で上昇する)。
症状と徴候
症状は主に呼吸困難である。徴候としては補助呼吸筋の活発な使用,頻呼吸,頻脈,発汗,不安,1回換気量の減少,不規則またはあえぐような呼吸パターン,腹部の奇異性運動などがある。
中枢神経系症状は軽微な人格変化から,明らかな錯乱,意識混濁または昏睡までに及ぶ。慢性高炭酸ガス血症は,急性よりも忍容性が高く,症状も少ない。
診断
呼吸困難,換気による疲労の所見またはチアノーゼ,知覚異常のある患者,および神経筋の衰弱を引き起こす疾患の患者において,疑われるべきである。頻呼吸も問題である;特に高齢者または衰弱している患者は,28〜30回/分を超える呼吸数に長時間耐えられない。
換気不全が疑われる患者はABG分析,持続的なパルスオキシメトリー,胸部X線を受けるべきである。ABGでの呼吸性アシドーシス(例,pH7.35未満およびPco2が50を超える)は診断を裏付ける。慢性換気不全の患者はしばしば,ベースラインからかなり高いPco2(例,60〜90mmHg)を有しており,通常アシドーシスはほんのわずかである;そのような患者において,アシドーシスの程度が急性低換気の主要なマーカーとして役立つはずである。
換気不全の初期にはABGが正常なことがあるので,特に呼吸困難を示すことなく換気不全に陥る可能性がある神経筋脱力の患者では,ベッドサイドでの肺機能検査が換気不全を予測するのに役立つ。肺活量が10〜15mL/kg未満および最大陰圧吸気力が15cmH2Oの場合,さし迫った換気不全が示唆される。
一旦換気不全と診断されると,その原因が特定されなければならない。ときに進行中の疾患(例,急性喘息,COPD,重症筋無力症)が明らかな原因のことがある。その他の場合,病歴が示唆的であり,手術後の頻呼吸および低血圧の突然の発症は肺塞栓症を示唆し,神経学的局所所見は中枢神経系または神経筋関連の原因を示唆する。神経筋に関する能力は,吸気筋の筋力測定(陰圧吸入力および陽圧呼出力),神経筋伝導の測定(神経伝導試験および筋電図検査)および減少した駆動力の原因調査(薬物中毒のスクリーニング,脳画像,睡眠試験,および甲状腺機能検査)を通して評価される。
治療
治療は,呼吸器系の筋力とその負荷の不均衡を修正することを目的とし,また,基礎となる病因によって異なる。明白な原因(例,気管支痙攣,粘液栓,異物)は可能であれば除去すべきである。
最も一般的な2つの原因は,喘息の急性増悪(すなわち,喘息発作重積[SA])およびCOPDの急性増悪である。COPDによる呼吸不全は,慢性疾患による急性呼吸不全(ACRF)と呼ばれる。
喘息発作重積:
患者は,高度な気道確保の技術を有するスタッフによりICU内で治療されるべきである。
非侵襲的陽圧換気(NIPPV)は,呼吸仕事量を速やかに減少させることができ,薬物療法による改善を待っている間,気管挿管に先んじる場合がある。COPDの患者はしばしばNIPPVを問題なく受け入れるが,それとは対照的に,喘息の患者ではマスクがしばしば呼吸困難の感覚を増大させるので,導入は慎重にすべきである。NIPPVの有益性の説明の後,患者はマスクを顔に当てて持ち,同時に軽度の圧力が加えられる(持続的気道陽圧[CPAP]は3〜5cmH2O)。一旦許容されると,マスクを所定の位置に固定し,同時に圧力を患者が楽になるまで,および呼吸仕事量が減少する(呼吸数および補助呼吸筋の使用によって評価)まで上昇させる。最終的な設定は,通常,吸気気道陽圧(IPAP)が10〜15cmH2Oおよび呼気気道陽圧(EPAP)が5〜8cmH2Oとする。適応患者は慎重に選択されるべきである(呼吸不全および機械的人工換気: 従圧式換気を参照 )。
気管挿管を介した従来の機械的人工換気はさし迫った呼吸不全に対して適応され,その病状は意識混濁,単音節で話すこと,前かがみの姿勢,および浅呼吸によって臨床的に示唆される。血液ガスの確認は必須というわけではなく,医師の判断に取って代わるものではないが,高炭酸ガス血症の悪化を示すABGも1つの指標となる。経口挿管は経鼻挿管よりも好まれるが,それは,より太いチューブの使用が可能で,それにより気道抵抗を減少させることができ,より容易に吸引できるからである。
低血圧および気胸は,SAに対する挿管の後でときとして起こることがある(管理については呼吸不全および機械的人工換気: 機械的人工換気の合併症を参照 )。これらの合併症およびそれに関連する死亡は,正常の状態を超える肺の過膨張を制限することを重視する人工呼吸の戦略のおかげで,有意に減少している。SAにおいて,正常なpHを達成するのに十分な換気は,通常,重度の過膨張を引き起こす。これを避けるために,人工呼吸器の最初の設定は,5〜7mL/kgの1回換気量および10〜18回/分の呼吸数とする。吸気流量は方形波パターンを用いてかなり高くできる(例,120L/分)。この戦略は分時換気量を減少させ,呼気に使える時間を増大させる。危険な過膨張は,プラトー圧の測定値が30〜35cmH2O未満および内因性呼気終末陽圧(PEEP)が15cmH2O未満である限りは起こらないと考えられる。35cmH2Oを超えるプラトー圧は,1回換気量を減らすこと(臨床判断で,胸壁または腹部のコンプライアンス低下が高いプラトー圧の原因ではない場合)または,呼吸数を減らすことで対処される。
最高気道圧は,最大流量を低下させることまたは波形を漸減波に変更することによって減少させることができるが,これはすべきではない。高い流量はSAの高い気道抵抗に打ち勝つ高い圧を必要とするが,この圧は軟骨を含む頑丈な気道の至る所に分散する。低い流量は呼気に使用できる時間を減らし,それによって,呼気終末容量を上昇させ(結果として内因性PEEPも上昇させ),次の呼吸でより大量の吸気容量を可能にする。
少ない1回換気量を使用することは,しばしば高炭酸ガス血症を引き起こすが,過膨張を減少させることに大いに役立つため容認される。7.15を超える動脈血pHは一般的に耐えることができるが,しばしば高用量の鎮静薬およびオピオイドを必要とする。神経筋遮断薬はコルチコステロイドと併用すると,特に併用の24時間後に重度および,ときとして非可逆的な筋疾患を引き起こすことがあるので,挿管を実施するときは使用してもそれが過ぎれば神経筋遮断薬は避けるべきである。患者が激越した状態にあるときは麻痺薬よりも鎮静薬を用いて処置するべきである。
SAを有する患者のほとんどは,2〜5日以内に機械的人工換気からの解放段階まで改善するが,少数の患者は遷延性の重度の気道閉塞を経験する。解除までの一般的なアプローチは呼吸不全および機械的人工換気: 機械的人工換気からの解放で考察されている。
ACRF:
COPDからのACRFを有する患者において,呼吸によるO2消費量は基礎疾患として肺疾患を持たない患者の数倍である。この上昇した呼吸負荷は,神経筋能力によってかろうじて埋め合わされるため,患者は換気が持続できないほど疲れた状態になりやすい。こうした患者は些細と思われる障害によって呼吸不全に陥りやすく,回復にはそうした原因の系統的できめ細かな同定と改善が必要となる(慢性閉塞性肺疾患(COPD)も参照 )。神経筋能力と負荷の均衡を改善するために,気道閉塞および過膨張は気管支拡張薬およびコルチコステロイドを用いて軽減させ,感染症は抗生物質を用いて治療する。K,リン,Mgの血清濃度が低いことは,筋衰弱を悪化させて回復を失敗させる可能性があり,同定して治療しなければならない。
NIPPVは多くのACRF患者に対して好まれる初期治療で,気管挿管と比べると,人工呼吸器関連の肺炎の発症率,入院日数,および死亡率が少ない。NIPPVで管理される患者のおそらく75%は気管挿管を必要としない。利点には設置と取り外しが容易なことも含まれ,初期の段階で安定が得られれば患者によっては口で呼吸ができるようにNIPPVを一時的に止めてもよい。補助なし呼吸の試行は容易に実施できる。必要であればNIPPVを再開すればよい。
通常,設定はIPAPが10〜15cmH2OおよびEPAPが5〜8cmH2Oで,患者からの報告,呼吸数および1回換気量,補助呼吸筋の使用によって評価される呼吸仕事量を調べながら調節する。前述した肺に対する過度のIPAPの影響に関する問題と同様の問題は,これらの患者にも存在する。
悪化(および気管挿管の必要性)は臨床的所見で評価するのが最良であり,ABGは紛らわしい場合がある。高炭酸ガス血症の悪化は典型例では治療の失敗を示すものの,高炭酸ガス血症に耐えられるかどうかは患者によって著しく異なる。100mmHgを超えるPaCO2を有する患者の中には,NIPPVによる補助でも意識がはっきりしており,意思の疎通が可能な者もいるが,一方で他の患者はもっと低いPa
CO2の時点で挿管を必要とする。
ACRFにおける従来の機械的人工換気は,過膨張および内因性PEEPを最小限にすると同時に,疲労している呼吸筋を休ませることを目的とする。推奨される最初の設定は補助-調節(A/C)モードで,1回換気量が5〜7mL/kgおよび呼吸数が20〜24回/分だが,内因性PEEPを制限するために,最初の呼吸数をもっと少なくする必要がある患者もいる。この内因性PEEPは,人工呼吸器をトリガーするために患者が超えなければならない吸気の負荷閾値を示すが,これは呼吸仕事量をさらに増加させ,人工呼吸器に完全に頼ることを防げる。内因性PEEPの影響と釣り合わせるために,外因性PEEPは内因性PEEPの85%以下のレベルで加えなければならない(典型例での設定は5〜10cmH2O)。これは呼吸仕事量を減少させ,肺の過膨張を悪化させることはまれである。呼気時間を最大にするために,高い吸気流量を用いるべきである。こうした設定は,最初の換気に続いて起こるいきすぎたアルカリ性血症のリスクを最小限にする。低血圧も挿管の直後に起こりうる(呼吸不全および機械的人工換気: 機械的人工換気の合併症を参照 )。
ほとんどの患者は自発呼吸試験が考慮される前の24〜48時間のあいだ,完全な換気サポートを受けるべきである。患者はこの間にしばしばぐっすり眠り,SAとは対照的に通常鎮静薬をほとんど必要としない。十分な注意を患者の努力に向けない限り,十分な休息が達成できないことが多い。この努力は,補助呼吸筋の使用,吸気の開始時または吸気中の不適切に低い気道内圧,または頻繁に人工呼吸器をトリガーできないなどの症状として表れ,高い内因性PEEPおよび/または衰弱を示唆する。呼気時間を延長することによって,これらの現象を和らげるために,何よりもまず人工呼吸器の設定を調節しなければならない;呼吸筋を適切に休めることができないために患者を人工呼吸器から離脱させられないということは,十分あり得ることであり驚くに値しない。しかしながら,疲労による呼吸筋の低下と肺容量の低下とともに起こる呼吸筋の筋力低下を鑑別することは不可能である。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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