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ショックとは臓器低灌流状態で,その結果,細胞機能障害および細胞死を伴うものである。機序は,循環血液量の減少,心拍出量の減少,血管拡張(ときに毛細血管[交換血管]床をバイパスする血液のシャントを伴う)を含む。症状には精神状態の変化,頻脈,低血圧,乏尿がある。診断は臨床所見によるもので,血圧測定を含む。治療は静注輸液,根本原因の改善,および,ときとして血管収縮薬を用いる。
病態生理
ショックの根底をなす障害は主要組織への灌流の減少である。一旦,O2が好気性代謝にとって不十分になるほど灌流が低下すると,細胞は嫌気性代謝に変わり,それに伴ってCO2産生が増して,乳酸が蓄積される。細胞機能が低下し,もしショックが持続するならば,不可逆的な細胞傷害および細胞死が生じる。
ショックのあいだ,低灌流の領域で炎症および凝固カスケードが誘発される場合がある。低酸素状態の血管内皮細胞は白血球を活性化させ,その白血球は内皮に付着して,直接的に傷害を及ぼす物質(活性酸素関連物質,蛋白質分解酵素)および炎症性メディエーター(例,サイトカイン,ロイコトリエン,腫瘍壊死因子[TNF])を放出する。これらのメディエーターのいくつかは細胞表面の受容体に結合し,核内因子カッパB(NFκB)を活性化して,そのNFκBはさらなるサイトカインおよび強力な血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の産生を導く。敗血症性ショック(敗血症および敗血症性ショックを参照 )は細菌毒素,特に内毒素の作用が原因で他の形式のショックよりも炎症反応を促進しうる。
容量血管の拡張は“相対的”循環血液量の減少(すなわち,存在する血液の量で満たせない血管容量)のため,血液の貯留および低血圧につながる。限局性血管拡張により血液は毛細血管(交換血管)床を通らず,心拍出量および血圧が正常であるにもかかわらず,局所的な低灌流が起こる。さらに,過度のNOは,ミトコンドリアを傷害してATP産生を減少させるフリーラジカルである過酸化亜硝酸に転換される。
ショックでは力学的な微小血管閉塞が起こり,基質運搬を制限する。白血球および血小板が内皮に接着し,凝固システムが活性化され,フィブリンの沈着が起こる。
多数のメディエーターは,内皮細胞の機能不全とともに,著しく微小血管透過性を亢進させ,体液や,ときとして血漿蛋白質を間質腔へ滲出させる。消化管において,透過性亢進は腸内細菌の内腔から血流への移動を可能にするので,敗血症または転移性感染を引き起こす可能性がある。
好中球のアポトーシスが抑制され,炎症性メディエーターの放出が増える可能性がある。他の細胞ではアポトーシスが促進され,細胞死が増加するので臓器機能が悪化する。
血圧はショックの初期段階では必ずしも低くない(が,ショックが改善されなければ,低血圧が最終的に起こる)。また同様に,“低い”血圧の患者が,必ずしもショックを起こしているわけではない。低血圧の程度および影響は,生理的代償作用の妥当性および患者の基礎疾患によって異なる。したがって,比較的健康な若年者では認容しうる程度の中等度の低血圧でも,臨床上意味のある動脈硬化を有する患者では脳,心臓,または腎臓の機能に重度の障害を来すことがある。
代償:
O2運搬(DO2)が減少するとき,まず,組織は運搬されるO2からより多くのO2を抽出すること(実質的に最大混合静脈血O2飽和度30%まで)によって代償する。さらに,動脈血圧の低下が,交感神経を介した血管収縮および,しばしば心拍数の増加を伴うアドレナリン作動性反応を引き起こす。初めのうちは血管収縮は選択的で,血液を心臓および脳に送る。循環血中β-アドレナリン性アミン(エピネフリン,ノルエピネフリン)も心臓の収縮性を増加させ,副腎からのコルチコステロイド,腎臓からのレニン,肝臓からのグルコースの放出を引き起こす。増加したグルコースは弱っているミトコンドリアでは処理しきれず,さらなる乳酸の産生を引き起こしうる。
再灌流:
虚血細胞の再灌流はさらなる傷害を引き起こしうる。基質の運搬が再開すると,好中球の活性が増し,傷害を起こすスーパーオキシドおよび水酸化ラジカルの産生が増加する。血流が回復すると,炎症性メディエーターは他の臓器に循環する可能性がある。
多臓器不全症候群(MODS):
直接的な傷害と再灌流による傷害の組み合わせは,MODS(生命を脅かす疾患または傷害の結果起こる複数臓器の進行性機能不全)を引き起こす可能性がある。MODSはあらゆる種類のショックのあとに起こりうるが,最も一般的なのは感染が関与するときである;臓器不全は敗血症性ショックを定義づける特徴の1つである(敗血症および敗血症性ショックを参照 )。また,MODSは重度の外傷を有する患者の10%以上で起こり,24時間を超えて生存しているこれらの患者において死亡の第一原因である。
あらゆる器官系が影響されうるが,最も頻繁に標的となる器官は肺で,肺における膜透過性の上昇は毛細血管からの漏出に起因する肺胞の体液貯留を引き起こす。低酸素症の進行に伴い,O2補給療法に対してますます抵抗性となる。この症状は急性肺障害と呼ばれ,重症の場合,急性呼吸促迫症候群(ARDS―急性肺障害および急性呼吸促迫症候群を参照 )と呼ばれる。
腎臓の灌流が極めて低下すると,腎臓は障害され,乏尿および血清クレアチニンの進行性上昇という症状を示し,急性尿細管壊死および腎不全を引き起こす。
心臓では,冠灌流の減少およびメディエーター(TNFおよびIL-1を含む)が収縮能を低下させ,心筋のコンプライアンスをさらに悪化させて,β-受容体の感受性を低下させることがある。これらの要因が心拍出量を減少させ,心筋および全身の灌流の両方をさらに悪化させ,しばしば死をもたらす悪循環を引き起こす。
消化管はイレウスおよび粘膜下出血を生じる。肝臓低灌流は,局所的または広範囲の肝細胞壊死,トランスアミナーゼの増加,凝固因子の減少を起こしうる。
病因と分類
臓器低灌流およびショックにはいくつかの機序がある。ショックの原因は,循環血液量の減少(循環血液量減少性ショック),血管拡張(血液分布異常性ショック),心拍出量の大きな減少(心原性および閉塞性ショックの両方),またはそれらの併発である。
循環血液量減少性ショック:
循環血液量減少性ショックは血管内容量の危険なほどの減少によって生じる。減少した静脈還流(前負荷)は心室充満を減少させ,1回拍出量を減少させる。心拍数の増加によって代償されない限り,心拍出量は減少する。
一般的な原因は出血(出血性ショック)で,通常,外傷,外科的介入,消化性潰瘍,食道静脈瘤,または大動脈瘤によって起こる。出血は顕性(例,吐血または下血)または不顕性(例,子宮外妊娠の破裂)の場合がある。
また,循環血液量減少性ショックは,血液以外の体液の大量喪失に続発することもある(
ショックおよび輸液蘇生術: 体液の減少で起こる循環血液量減少性ショック表 1: 参照)。
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表 1
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体液の減少で起こる循環血液量減少性ショック
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体液喪失部位
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喪失の機序
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皮膚
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熱または化学薬品による熱傷,過度の熱への暴露による発汗
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消化管
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嘔吐または下痢
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腎臓
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糖尿病または尿崩症,副腎機能低下,“塩類喪失性”腎炎,急性尿細管障害後の多尿期,強力な利尿薬の使用
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血管内液の血管外への喪失
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毛細血管透過性の増大(低酸素症,心停止,敗血症,腸管虚血,急性膵炎に続発する)
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循環血液量減少性ショックは不十分な水分摂取に起因することもある(体液喪失の増加を伴う場合と伴わない場合がある)。水が手に入らない,神経障害が口渇機構を損傷している,または身体障害が摂取を障害する場合がある。
入院患者において,循環不全の初期徴候が誤って心不全と診断され,輸液が行われない,または利尿薬が投与されると,循環血液量減少は悪化しうる。
血液分布異常性ショック:
血液分布異常性ショックは,動脈または静脈の血管拡張に起因する相対的に不十分な血管内容量によるもので,もとの循環血液量は正常である。一部の症例では,心拍出量(およびDO2)は高いが,増加した血流は動静脈シャントによって毛細血管床を避けて通り,細胞低灌流(O2消費量の減少によって証明される)を引き起こす。他の状況では,血液は静脈床に貯留し,心拍出量が減少する。
血液分布異常性ショックは,アナフィラキシー(アナフィラキシーショック―アレルギー性およびその他の過敏性疾患: アナフィラキシーを参照 );内毒素放出を伴う細菌感染(敗血症性ショック―敗血症および敗血症性ショックを参照 );脳または脊髄への重度の障害(神経原性ショック);硝酸塩,オピオイド,およびアドレナリン遮断薬など,特定の薬物または毒物の摂取によって引き起こされることがある。アナフィラキシー性および敗血症性ショックは,しばしば循環血液量減少という要素も併せ持つ。
心原性および血管閉塞性ショック:
心原性ショックは,原発性心疾患に起因する心拍出量の相対的または絶対的な減少である。心臓もしくは大血管の充満または排出を障害する物理的要因が,血管閉塞性ショックを説明する。原因はショックおよび輸液蘇生術: 心原性および閉塞性ショックの機序表 2: に示す。
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表 2
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心原性および閉塞性ショックの機序
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種類
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機序
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原因
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閉塞性
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心室充満に対する物理的な障害
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緊張性気胸,心タンポナーデ,心房腫瘍または血塊
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心室駆出に対する障害
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肺塞栓
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心原性
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心筋収縮能の障害
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心筋虚血または心筋梗塞,心筋炎,薬物
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調律の異常
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頻脈,徐脈
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心臓の構造的障害
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急性の僧帽弁逆流または大動脈逆流,心室中隔破裂,人工弁の機能不全
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症状と徴候
嗜眠,錯乱,および傾眠状態がよくみられる。手足は蒼白で冷たくて湿っぽく,しばしばチアノーゼを呈し,耳たぶや鼻,爪床も同様の状態になる。毛細血管の充満時間は延長し,血液分布異常性ショックを除いては,皮膚は灰色または黒みがかって湿っぽくなる。顕性の発汗を生じることがある。末梢の脈拍は弱くて典型的に速いが,しばしば,大腿動脈または頸動脈の拍動のみが触知可能である。頻呼吸および過換気がみられうる。血圧は低い(収縮期圧が90mmHg未満)か,または測定不能となりやすく,動脈カテーテルによる直接測定は,実施された場合,それまでよりしばしば高めの,しかしより正確な値が得られる。尿量は少ない。
血液分布異常性ショックは同様の症状を生じるが,皮膚に関しては温かいか紅潮している。脈拍は弱いというよりも力強い可能性がある。敗血症性ショックでは,発熱(通常悪寒に続いて起こる)がよくみられる。アナフィラキシーショックの患者の中には,じんま疹または喘鳴を有するものもいる。
その他,多くの症状(例,胸痛,呼吸困難,腹痛)が,基礎疾患または続発する臓器不全に起因して起こりうる。
診断
診断は主として臨床所見による。組織灌流が不十分である証拠(鈍麻,乏尿,末梢性チアノーゼ)および代償作用の徴候(頻脈,頻呼吸,発汗)に基づく。具体的には,鈍麻,心拍数が100回/分を超える,呼吸数が22回/分を超える,低血圧(収縮期圧90mmHg未満)または通常の血圧から30mmHg低下,および尿量が−0.5mL/kg/時未満などがある。診断を裏付ける検査所見は,乳酸が3mmol/L以上,塩基欠乏が5mEq/L未満,およびPaco2が32mmHg未満などである。しかしながら,これらの所見のどれも,単独では診断の役に立たず,各所見は身体的徴候も含め総合的に評価される。
原因の診断:
ショックの根底にある原因を認識することは,ショックの種類を分類することより重要である。しばしば,原因は明らかか,または病歴聴取および身体診察に簡単な検査を加えるとすぐに認識できる。
胸痛(呼吸困難を伴うまたは伴わない)は心筋梗塞,大動脈解離,または肺塞栓を示唆する。収縮期雑音は急性心筋梗塞による心室中隔破裂または僧帽弁閉鎖不全を示す。拡張期雑音は基部を含む大動脈解離による大動脈弁逆流を示す。心タンポナーデは頸静脈怒張,心音減弱,および奇脈によって示唆される。ショックを生じさせるほど重度の肺塞栓は,通常,O2飽和度を減少させる。検査は心電図,胸部X線,ABG測定,肺スキャン,ヘリカルCT,および/または心エコー法を含む。
腹部または背部の痛み,もしくは腹部の圧痛は膵炎,破裂性腹部大動脈瘤,腹膜炎,および,出産可能年齢の女性では子宮外妊娠の破裂を示唆する。拍動性の正中線上の塊は,破裂した腹部大動脈瘤を示唆する。圧痛のある子宮付属器腫瘤は子宮外妊娠を示唆する。検査は典型的に腹部CT(もし患者が不安定ならば,ベッドサイドでの超音波検査も役に立つ),CBC,アミラーゼ,リパーゼ,および出産可能年齢の女性では尿による妊娠反応を行う。
発熱,悪寒,および感染の局所徴候は,特に免疫不全状態の患者では,敗血症性ショックを示唆する。発熱単独は,病歴および臨床状況によっては,熱射病を示唆することがある。検査は胸部X線,尿検査,CBC,および血液や尿や他の関連する体液の培養を含む。
一部の少数の患者では,原因は潜在している。原因を示唆する局所徴候または症状のない患者では,心電図,胸部X線,およびABGを実施すべきである。これらの検査結果が正常ならば,最もありうる原因は薬物過剰摂取,潜在する感染(毒素性ショックも含む),および閉塞性ショックなどである。
補助的な検査:
まだ実施していなければ,患者の状態をモニタリングするため,およびベースラインの値を得るために,心電図,胸部X線,CBC,血清電解質,BUN,クレアチニン,プロトロンビン時間,部分トロンボプラスチン時間,肝機能検査,フィブリノーゲンおよびフィブリン分解産物の検査が行われる。患者の血液量が多いか少ないかの判定が困難な場合は,中心静脈圧(CVP)または肺動脈楔入圧(PAOP)のモニタリングが有益である。CVPが5mmHg未満(7cmH2O未満)またはPAOPが8mmHg未満の場合,循環血液量減少が示唆されるが,先在する肺高血圧を有する血液量減少の患者では,CVPがその値よりも高いことがある。
予後と治療
治療されなければ,ショックは通常は致死的である。たとえ治療されても,心筋梗塞に続発する心原性ショックおよび敗血症性ショックの死亡率は高い(60〜65%)。予後は原因,基礎疾患または合併疾患,発症から診断までの時間,および治療の迅速さと適正さに左右される。
救急処置は患者の保温を含む。出血を止め,気道と呼吸を確認し,必要であれば補助的人工呼吸を行う。経口では何も与えず,嘔吐が起こった場合の誤嚥を避けるために患者の頭部を横に向ける。
評価と同時に治療を始める。フェイスマスクによるO2補給を行う。重度のショックにおいて,またはもし換気が不十分ならば,機械的人工換気を伴う気管挿管が不可欠である。2本の太い(16〜18ゲージ)静脈カテーテルは別々の末梢静脈に挿入される。末梢静脈が速やかに確保できないときは,中心静脈ラインまたは,小児では穿刺による骨髄路が代用される(重症患者へのアプローチ: 骨髄内輸液も参照 )。
典型例では,1L(または,小児では20mL/kg)の0.9%生理食塩水が15分かけて輸液される。大出血の場合は,乳酸リンゲル液が一般的に用いられる。臨床的パラメータが正常に戻るまで,輸液が繰り返される。右心圧が高い徴候(例,頸静脈怒張)を有する患者,または急性心筋梗塞の患者に対しては,より少ない用量(例,250〜500mL)が用いられる。肺水腫の徴候を有する患者には,おそらく,輸液投与は行うべきでない。さらなる輸液療法は基礎疾患となる病態に基づいており,CVPまたはPAOPでのモニタリングを必要とすることがある。
ショック状態の患者は危篤状態であり,ICUに入院すべきである。モニタリングでは,心電図;収縮期,拡張期,および平均血圧(動脈カテーテルによる測定が望ましい);呼吸数と呼吸深度;パルスオキシメトリー;尿量(留置膀胱カテーテルによる);体温;意識(例,グラスゴー昏睡尺度―昏迷と昏睡: グラスゴー昏睡尺度*を参照 表 2: ),脈液,皮膚温と皮膚の色を含む臨床状態などを調べる。CVP,PAOPの測定,熱希釈法による心拍出量の測定(先端バルーン付き肺動脈カテーテルを用いる)は,原因不明または複数の病因によるショック,もしくは重度のショックの患者において,特に乏尿や肺水腫を伴う場合は,診断および初期の管理に有用である。心エコー法(ベッドサイドまたは経食道による)は侵襲性の低い代用手段である。ABG,Hct,電解質,血清クレアチニン,血漿中の乳酸の測定値がシリーズで検討されるべきである。舌下CO2測定(重症患者へのアプローチ: その他の種類のモニタリングを参照 )は,利用できるならば,内臓灌流の非侵襲的モニタリング方法となる。これらのモニタリングには,よくデザインされたフローシートが役に立つ。
組織低灌流により筋肉内吸収が低下するので,全ての非経口薬物は静脈内投与される。オピオイドは血管拡張を起こしうるので一般的に避けられるのだが,激痛の治療にはモルヒネを用いる場合がある。1〜4mgを静注で2分かけて投与し,必要ならば10〜15分毎に繰り返す。脳低灌流は不安を引き起こすが,鎮静薬または精神安定薬は日常的には与えない。
初期の蘇生術のあと,特異的治療は根本的な病状に向けられる。さらなる支持療法はショックの種類によって異なる。
出血性ショックにおいて,外科的な止血処置は最も重要である。大量の補液(ショックおよび輸液蘇生術: 輸液による蘇生も参照 )は,外科的止血の前というよりも同時に行う。晶質液2L(または,小児では40mL/kg)に反応しない出血性ショックに対しては,輸血が行われる。反応がないことは,通常,投与量不足または認識していない進行中の出血を示唆する。血管収縮薬は,心原性,閉塞性または血液分布異常性の原因も存在している場合以外は,出血性ショックの治療に適応とならない。
血液分布異常性ショックが0.9%生理食塩水による最初の補液後も著しい低血圧を伴う場合は,変力薬または血管収縮薬(例,ドパミン,ノルエピネフリン―ショックおよび輸液蘇生術: 変力性および血管作動性カテコールアミン表 3: 参照)によって治療されることがある。敗血症性ショックの患者は広域抗生物質の投与も受ける(敗血症および敗血症性ショック: 予後と治療を参照 )。アナフィラキシーショックの患者が輸液負荷に反応しない場合(特に気管支収縮を伴う場合),エピネフリン0.05〜0.1mgの静注を行い,その後,エピネフリンは5%ブドウ糖溶液に5mg/500mLとして10mL/時または0.02μg/kg/分で注入する(アレルギー性およびその他の過敏性疾患: 治療も参照 )。
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表 3
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変力性および血管作動性カテコールアミン
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薬物
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投与量
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血行動態に及ぼす作用
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ノルエピネフリン
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5%ブドウ糖溶液に4mg/250mLまたは4mg/500mLとして,持続静注を8-12μg/分から始め,その後,維持量2.4μg/分,個人差が大きい
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α-アドレナリン作用:血管収縮
β-アドレナリン作用:変力性作用,変時性作用*
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ドパミン
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5%ブドウ糖溶液に400mg/500mLとして,0.3mL(0.25mg)-1.25mL(1mg)/分で持続静注
低用量では2.10μg/kg/分
高用量では20μg/kg/分
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α-アドレナリン作用:血管収縮†
β-アドレナリン作用:変力性作用,変時性作用,血管拡張†
非アドレナリン作用:腎臓および内臓の血管拡張
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ドブタミン
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5%ブドウ糖溶液に250mg/250mLとして,2.5.10μg/kg/分で持続静注
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β-アドレナリン作用:変力性作用‡
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*動脈血圧が過剰に亢進しているならば,作用は明白ではない。
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†作用は投与量および根底にある病態生理に左右される。
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‡変時性,不整脈原性,および直接的な血管作用は,低用量では最小となる。
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心原性ショックにおいて,構造上の欠損(例,弁機能不全,中隔破裂)は外科的に修復されることになる。冠動脈血栓は,経皮的介入(血管形成術,ステント留置術),冠動脈バイパス手術,または血栓溶解(冠動脈疾患も参照 )のいずれかによって治療される。速くて異常な調律(例,頻脈性心房細動,心室頻拍)は,電気的除細動によって,または薬物を用いてレートコントロールする。徐脈は経皮的または経静脈的ペースメーカーで治療されるが,ペースメーカー留置までのあいだ,アトロピン0.5mg(最大で4回)が静注で5分毎に投与される場合がある。もしアトロピンが効果を示さないならば,イソプロテレノール(5%ブドウ糖溶液に2mg/500mLとして,1〜4μg/分[0.25〜1mL/分])がときとして有用であるが,冠虚血の患者には勧められない。
急性心筋梗塞のあとのショックは,PAOPが低いか正常ならば体液の増量によって治療される;PAOPは15〜18mmHgが最適と考えられる。肺動脈カテーテルが留置されていない場合,慎重に大量輸液(0.9%生理食塩水250〜500mLのボーラス投与)が試されることがあり,その間,体液過剰の徴候をチェックするために胸部を頻繁に聴診する。右室梗塞のあとのショックは,通常,部分的に輸液に反応するが,血管収縮薬が必要な場合もある。
低血圧が中等度(例,平均動脈圧[MAP]が70〜90mmHg)ならば,ドブタミン注入,アムリノン(0.75mg/kgを2〜3分かけて静注し,その後,5〜10μg/kg/分で注入)またはミルリノン(50μg/kgを静注し,その後,0.5μg/kg/分)が心拍出量を改善するため,および左室充満圧を減少させるために用いられることがある。ドブタミンを特に高用量で投与中に,ときとして頻拍と不整脈が起こり,投与量を減少させることが必要となる。血管拡張薬(例,ニトロプルシド,ニトログリセリン)は,静脈容量を増加させる,または全身血管抵抗を低下させるので,重度の低血圧を有さない患者においては,障害心筋にかる仕事量を軽減させ,心拍出量を増加させる場合がある。併用療法(例,ドパミンまたはドブタミンとニトロプルシドまたはニトログリセリン)が特に有用な場合もあるが,心電図と肺および全身の血行動態の綿密なモニタリングが必要である。
より重篤な低血圧(MAPが70mmHg未満)の場合,ノルエピネフリンまたはドパミンが収縮期圧80〜90mmHg(110mmHgを超えないこと)を目標として投与される。大動脈内バルーン-カウンターパルセーションは,急性心筋梗塞の患者において一時的にショックを改善するのに役立つ。この治療法は,急性心筋梗塞で心室中隔破裂を合併する患者または重度の急性僧帽弁逆流を伴い,30分以上の血管収縮薬のサポートを必要とする患者では,外科的治療に橋渡しする。
閉鎖性ショックにおいて,心タンポナーデは即時の心膜穿刺を必要とするが,処置はベッドサイドで行うことができる。緊張性気胸は,鎖骨中央線上の第2肋間腔からの針穿刺によって直ちに減圧されるべきである。ショックを引き起こす重度の肺塞栓は,血栓溶解または外科的塞栓摘出によって治療される。
最終改訂月 2007年5月
最終更新月 2005年11月
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