メルクマニュアル18版 日本語版
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肺動脈弁閉鎖不全

Paul H. Tanser, MD

肺動脈弁閉鎖不全(PR)は,拡張期に肺動脈から右室への血液の流入を引き起こす肺動脈弁の機能不全である。最も一般的な原因は肺高血圧である。PRは通常,無症状である。徴候には漸減性の拡張期雑音がある。診断は心エコー検査により行う。通常,肺高血圧を引き起こす状態の管理以外に特異的治療は必要ない。

続発性肺高血圧(肺高血圧: 続発性肺高血圧の原因を参照 表 1: 表)は群を抜いて最も多いPRの原因である。ややまれな原因は,感染性心内膜炎,ファロー四徴症の外科的修復術,特発性の肺動脈拡張,先天性心臓弁膜症である。カルチノイド症候群,リウマチ熱,梅毒,カテーテル誘発性の外傷はまれな原因である。重度のPRはまれであり,肺動脈および肺動脈弁輪の拡張を伴う孤立性の先天性欠損の結果として起こることが最も多い。

PRは右室(RV)肥大の発現,そして最終的には右室機能不全に誘発された心不全(HF)に寄与するが,ほとんどの場合,この合併症には肺高血圧がはるかに大きく寄与する。まれに,心内膜炎が急性PRを引き起こすとき,急性右室機能不全に誘発された心不全が発現する。

症状と徴候

PRは通常,無症状である。少数の患者が右室機能不全に誘発された心不全の症状と徴候を呈する(心不全および心筋症: 分類と病因を参照 )。

触知可能な徴候は肺高血圧および右室肥大に起因しうる。それには胸骨左縁上部における,第2心音(S2)の触知可能な肺動脈弁成分(P2),ならびに胸骨左縁の中央部および下部における,振幅が増大した持続性の右室拍動がある。

聴診では第1心音(S1)は正常である。S2は分裂していることも単一のこともある。分裂しているとき,P2は肺高血圧のためS2の大動脈弁成分(A2)のすぐ後に大きく聴取されるか,または右室1回拍出量の増大のため遅れることがある。S2が単一となるのは,A2-P2の融合を伴う肺動脈弁の迅速な閉鎖のため,またはまれに,先天性の肺動脈弁欠損のためである。右室機能不全に誘発された心不全または右室肥大に伴って,右室性第3心音(S3),第4心音(S4),またはその両方が聴取され,これらの音は,左胸骨傍の第4肋間腔に位置するため,また吸気に伴い大きくなるため,左室心音と区別できる。

肺高血圧によるPRの雑音は,P2に始まりS1の前に終わり,胸骨右縁中央部へ放散する,高調の拡張早期の漸減性の雑音(グレーアム・スティール雑音)であり,患者が起座位で呼気終末時に息を止めている間に,胸骨左縁上部で聴診器のダイアフラムにより最もよく聴かれる。肺高血圧を伴わないPRの雑音はより短く,音が低めで(質がより粗い),P2の後に始まる。両方の雑音が大動脈弁閉鎖不全の雑音に似るが,吸気(PR雑音を大きくする)およびバルサルバ手技の解除により区別できる。バルサルバ手技の解除後,PR雑音はすぐに大きくなるが(右心系への即時の静脈還流のため),AR雑音は大きくなるのに4〜5拍を要する。また,弱いPR雑音は,吸気が聴診器を心臓から遠くに押しやる第2左肋間腔で通常最もよく聴かれるため,呼気時にいっそう弱くなることがある。

診断と治療

PRは通常,他の理由で行われた身体診察またはドプラ心エコー検査の際に偶然発見される。心電図および胸部X線を得る。いずれかが右室肥大の徴候を示し,胸部X線は典型的には肺高血圧の基礎にある状態の証拠を示す。

治療はPRを引き起こす状態の管理である。もし右室機能不全により誘発された心不全の症状と徴候が発現するならば,肺動脈弁置換術が選択肢となるが,置換術の必要があることは非常にまれであるため,転帰およびリスクは不明である。

最終改訂月 2007年3月

最終更新月 2005年11月

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