メルクマニュアル18版 日本語版
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心膜炎

Brian D. Hoit, MD

心膜炎は心膜の炎症であり,しばしば液貯留を伴う。心膜炎は,多数の疾患(例,感染,心筋梗塞,外傷,腫瘍,代謝障害)が原因となって生じるが,特発性であることも多い。症状には胸痛や胸部圧迫感があり,しばしば深呼吸により悪化する。心拍出量が大きく減少することもある。診断は,症状,心膜摩擦音,心電図変化,およびX線検査または心エコー検査による心膜液貯留の証拠を基本にする。原因を見出すには,さらなる評価が必要である。治療は原因により異なるが,一般的な治療法には鎮痛薬,抗炎症薬,ときに手術がある。

心膜炎は最も頻度の高い心膜疾患である。先天性の心膜疾患はまれである。

解剖および病態生理

心膜は2層からなる。臓側心膜は心筋に付着した1層の中皮細胞であり,大血管の起始部を覆って折り返され(反転し),強靭な線維層とつながって壁側心膜として心臓を包んでいる。これらの層により形成された嚢には少量の液体(25〜50mL未満)が含まれており,この液体は主に血漿の濾液からなる。心膜は心腔の膨張を制限し,心臓の効率を高める。

心膜には求心性の交感神経と体性神経が豊富に分布している。伸展感受性の機械受容器が心臓の容積と張力の変化を感知し,心膜性疼痛の伝達を担っている。横隔神経は壁側心膜に埋め込まれており,心膜の手術中に損傷を受けやすい。

心膜炎は急性のことも,慢性のこともある。急性心膜炎は急速に発症し,炎症反応を引き起こす。慢性心膜炎(6カ月を超えて持続するものと定義される)はより緩徐に発症する;主な特徴は滲出液である。急性疾患は慢性化することもある。血行動態への悪影響や不整脈はまれであるが,心タンポナーデが起こる可能性がある。ときに,心膜炎は心膜の著しい肥厚や硬化(収縮性心膜炎)を引き起こす。心膜炎は心外膜側心筋の炎症をもたらすことがある。

心膜液貯留とは,心膜内に液体が貯留することである。液体は漿液性の液体(ときにフィブリン線維を伴う)のこともあれば,漿液血性の液体や,血液,膿,または乳びのこともある。

心タンポナーデは大量の心膜液貯留が心臓充満を障害したときに生じ,心拍出量が低下して,ときにショックを起こし死に至る場合がある。液体(通常は血液)が急速に貯留した場合には,心膜がそれに適応できるほど敏速に伸展することができないため,少量(例,150mL)であってもタンポナーデを引き起こす場合がある。緩徐に貯留した場合,1500mLまではタンポナーデが生じないこともある。被包化胸水が右心または左心の局所的タンポナーデを引き起こすことがある。

収縮性心膜炎はまれであり,心膜の著しい炎症,線維性肥厚が原因となって生じる。ときに臓側板と壁側板が互いに癒着,または心筋に癒着する。線維組織にはしばしばCa沈着がみられる。硬化し肥厚した心膜は心室充満率を著しく減少させ,1回拍出量と心拍出量が低下する。重度の心膜液貯留はまれである。不整脈はよくみられる。心室,心房,および静脈床の拡張期圧はほとんど同じである。体静脈うっ血が起こり,就下性浮腫,後に腹水を伴う全身の毛細血管からのかなりの体液漏出が起こる。体静脈および肝静脈圧の慢性的な上昇は,心臓性肝硬変を引き起こすことがある。

病因

急性心膜炎は,感染,結合組織疾患,尿毒症,外傷,心筋梗塞またはある種の薬物が原因となって生じる場合がある(心膜炎: 急性心膜炎の原因表 1: 表 を参照)。感染性心膜炎はウイルスに起因することが最も多い。化膿性細菌性心膜炎はまれではあるが感染性心内膜炎,肺炎,敗血症,穿通性損傷,心臓手術後に起こることがある。しばしば,原因は特定できない(非特異的または特発性心膜炎と呼ばれる)が,これらの症例の多くはおそらくウイルス性である。総体的にみて,最も一般的な原因はウイルス性と特発性である。急性心筋梗塞は急性心膜炎の症例の10〜15%の原因となっている。心筋梗塞後症候群(ドレスラー症候群)はあまり一般的でない原因であるが,経皮経管冠動脈形成術(PTCA)による再灌流または血栓溶解薬が無効である場合に起こる。心臓手術の5〜30%において心膜切開術後に心膜炎が起こる(心膜切開後症候群と呼ばれる)。

表 1

急性心膜炎の原因

特発性

感染性

ウイルス性(エコーウイルス,インフルエンザウイルス,コクサッキーウイルスB群,HIV*)

細菌性† (レンサ球菌;ブドウ球菌;グラム陰性桿菌;小児では, インフルエンザ菌

真菌性(ヒストプラズマ症,コクシジオイデス症,カンジダ症,ブラストミセス症)
寄生虫性(トキソプラズマ症,アメーバ症,エキノコックス症)
自己免疫性(RA,SLE,強皮症)

炎症性(アミロイドーシス,炎症性腸疾患,サルコイドーシス)

尿毒症

外傷

心筋梗塞

心筋梗塞後(ドレスラー)症候群
薬物(例,ヒドララジン,イソニアジド,メチセルジド,フェニトイン,プロカインアミド)

*AIDS患者がリンパ腫,カポジ肉腫,またはある種の感染症(すなわち,マイコバクテリウム-アビウム結核菌ノカルジア,その他の真菌またはウイルス感染)を発症した場合,心膜炎を続発することがある。

†結核性心膜炎は,米国では急性または亜急性の心膜炎症例のうち5%未満であるが,インドおよびアフリカの一部地域では症例の大半を占める。

慢性の心膜液貯留や収縮性心膜炎は急性心膜炎を引き起こすほとんど全ての疾患のほか,結核,腫瘍,放射線照射,心臓手術の後に生じうる。ときには慢性心膜炎の原因が特定されないこともある。大量の心膜液(漿液性,漿液血性,または血性)を伴う心膜炎は,最も一般的には転移性腫瘍に起因し,最も多いのは肺癌,乳癌,肉腫(特に黒色腫),白血病,リンパ腫である。

心膜の線維化は化膿性心膜炎や心筋の感染(心筋炎―若年患者によくみられる原因)に引き続いて,または結合組織疾患に伴って起こることがある。高齢患者における一般的な原因は,悪性腫瘍,心筋梗塞,結核である。心膜血腫(心膜内への血液の貯留)は心膜炎や心膜の線維化をもたらすことがある;一般的な原因としては,胸部外傷,医原的外傷(例,心臓カテーテル法,ペースメーカーの挿入,中心静脈ラインの留置),胸部大動脈瘤の破裂がある。

症状,徴候,診断

一部の患者には炎症の症状や徴候がみられる(急性心膜炎);液貯留の症状や徴候を示す患者もいる(心膜液貯留)。炎症の重症度と液貯留の量と速度によって,症状と徴候は異なる。緩徐に(例,数カ月間にわたって)進行した場合は,大量の心膜液が存在しても無症状の場合がある。

急性心膜炎: 急性心膜炎は胸痛や心膜摩擦音を引き起こす傾向があり,ときに呼吸困難を伴う。最初の証拠としては,低血圧,ショック,肺水腫などを伴うタンポナーデがある。

心膜と心筋の神経支配は同じであるため,心膜炎による胸痛はときとして心筋炎や虚血による胸痛に似る:前胸部や胸骨下に鈍痛または鋭い痛みがあり,頸部,僧帽筋陵(特に左側),または肩に放散する。疼痛には軽度から重度まである。虚血性胸痛とは異なり,心膜炎による疼痛は通常,胸郭運動,咳,および呼吸によって増強する;起座位や前傾姿勢により軽快することがある。頻呼吸および乾性咳嗽がみられる;発熱,悪寒,および脱力はよくみられる。特発性心膜炎患者の15〜25%は,数カ月または数年にわたって症状が間欠的に再発する。

三相または収縮期と拡張期の前胸部での摩擦音は,心膜炎の主要な身体所見である。しかしながら,摩擦音はしばしば間欠性で消失しやすい;収縮期のみに聴取されたり,頻度はより少ないが拡張期のみに聴取されることがある。多量の心膜液のために心音が聞こえなくなり,心濁音界域が増大したり,心陰影の大きさや形が変化する。

急性心膜炎が疑われるときには,初期評価のためにときとして入院が必要となる。心電図および胸部X線検査を行う。右心圧上昇,タンポナーデ,または心陰影拡大の症状や徴候がみられる場合は,心エコー検査により滲出液および心臓充満異常の検査も行う。血液検査で白血球増加や赤血球沈降速度亢進が検出されることがあるが,これらの所見は非特異的である。

診断は典型的な臨床所見と心電図異常に基づく。異常を示すには,経時的な心電図が必要となる場合がある。

急性心膜炎に対する心電図検査ではST部分とT波に限局した異常が通常ほとんどの誘導で出現する(心膜炎: 急性心膜炎:Ⅰ期の心電図。図 1: イラストを参照)。標準誘導の2つまたは3つの誘導でST部分は上昇するが後に基線に戻る。心筋梗塞とは異なり,急性心膜炎においてST部分は相反性低下を示さず(aVRとV1誘導を除く),異常Q波もみられない。PR部分の落ち込みがみられる場合がある。数日間かそれ以上経過した後,aVR誘導を除いて心電図全体でT波は平低化し,その後逆転する;このT波の逆転はST部分が基線に戻った後に起こり,急性虚血や心筋梗塞のパターンとは異なる。

図 1

急性心膜炎:Ⅰ期の心電図。

急性心膜炎:Ⅰ期の心電図。

aVRおよびV1を除き,J点は上昇する。T波は基本的には正常である。aVRおよびV1を除き,PR部分は低下する。PR偏位は一般的には単極肢誘導(ここではaVL)ではみられない。

心膜炎による疼痛は急性心筋梗塞や肺梗塞のものと似ているため,病歴および心電図所見が心膜炎には非定型的である場合は追加の検査(例,血清心臓マーカーの測定,肺スキャン)が必要となることがある。

心膜切開術後症候群と心筋梗塞後症候群は診断が難しく,発症早期の心筋梗塞や肺塞栓症,および術後の心膜感染と鑑別しなければならない。疼痛,摩擦音,および発熱が術後2週から数カ月に出現したり,アスピリン,NSAID,またはコルチコステロイドに対して敏速に反応することが診断の助けとなる。

心膜液貯留: 心膜液貯留はしばしば無痛であるが,急性心膜炎に伴う場合は疼痛が生じることがある。典型例では,心音が鈍化する。心膜摩擦音が聴取されることがある。大量の滲出液を伴う場合は,左肺底部の圧迫により呼吸音(左肩甲骨線付近で聴取される)が減弱し,クラックル(ラ音)が生じる。心嚢内圧が大幅に上昇してタンポナーデを引き起こさない限り,動脈拍動,頸静脈波,および血圧は正常である。

心筋梗塞後症候群においては,発熱,摩擦音,滲出液,胸膜炎,胸水,および関節痛を伴う心膜液貯留が起こることがある。この症候群は通常,心筋梗塞後10日〜2カ月以内に起こる。通常は軽度だが,重度のこともある。ときとして心筋梗塞後に心臓破裂を来し,心膜血腫やタンポナーデを生じることがあるが,通常これは心筋梗塞後1〜10日後に起こり,女性により多くみられる。

診断は臨床所見によって示唆されるが,しばしば胸部X線で心陰影拡大が認められた後でのみ疑われる。心電図では,QRS電位はしばしば低下し,患者の約90%は洞調律を保つ。大量の慢性的な滲出液を伴う場合は,心電図は電気的交互脈(すなわち,P,QRS,またはT波の振幅が1心拍毎に増減する)を示すことがある。電気的交互脈は心臓の位置変化(振り子様心臓)と関連している。心エコー検査は心膜液の検出において感度と特異度が高い。

心電図が正常な患者,滲出液が少量(1/2L未満)の患者,病歴や診察によって疑わしい所見がみられない患者は,連続的な検査と心エコー検査により観察する。その他の患者については,病因を特定するためにさらに精密検査を行う必要がある。

心タンポナーデ: 臨床所見は,心原性ショックのものと同様である:心拍出量の低下,体動脈圧の低下,頻拍,呼吸困難がある。頸静脈が著しく怒張する。重症心タンポナーデではほとんど常に吸気時の収縮期血圧が10mmHgを超えて低下する(奇脈―心疾患患者へのアプローチ: 奇脈を参照 )。進行した場合には吸気時に脈が消失する。(しかしながら,奇脈はCOPD,気管支喘息,肺塞栓症,右室梗塞および非心原性ショックでも起こりうる。)滲出液が少量の場合を除いて,心音が鈍化する。

心電図の低電位と電気的交互脈は心タンポナーデを示唆するが,これらの所見は感度と特異度に欠ける。タンポナーデが疑われるときは,少しでも治療が遅れると生命を脅かす場合を除いて心エコー検査を実施する。その後,診断と治療のため直ちに心膜穿刺を行う。心エコー図で弁前後や静脈の血流が呼吸により変化し,心膜液貯留による右室の圧迫や虚脱が認められれば,診断が裏づけられる。

タンポナーデが疑われる場合は,右心(スワン-ガンツ)カテーテル検査を行う。心タンポナーデでは,心室圧記録上,拡張早期のディップはない。心房圧曲線ではx谷は保たれy谷はなくなる。これに対して,拡張型心筋症による重症うっ血状態においては,肺動脈閉塞や左室拡張期圧は右房平均圧と右室拡張期圧より通常4mmHg以上高い。

収縮性心膜炎: 収縮性心膜炎を発症しない限り,線維化や石灰化が症状を引き起こすことはまれである。唯一の早期異常は心室の拡張期圧,心房圧および肺動脈圧と体静脈圧の上昇である。末梢静脈うっ血の症状や徴候(例,末梢浮腫,頸部の静脈拡張,肝腫大)が,吸気時に最もよく聞こえる初期拡張期音(心膜ノック)とともに現れる。この音は,硬化した心膜によって拡張期心室充満が急激に遅速化されるために生じる。通常,心室の収縮機能(駆出率に基づく)は保たれる。肺静脈圧の上昇が持続すると呼吸困難(特に労作時)や起座呼吸が生じる。疲労は重度である。吸気時の静脈圧上昇に伴う頸部静脈の拡張(クスマル徴候)がみられる;これはタンポナーデではみられない。奇脈はまれであり,タンポナーデのある症例よりは通常軽度である。重度の左室収縮を発症しない限り,肺はうっ血しない。

診断は心電図,胸部X線検査,およびドプラ心エコー検査の所見に基づいて推測されるが,通常は心臓カテーテル法やCT(またはMRI)検査が必要である。心室充満が制限されるため,心室圧曲線は拡張早期に急降下し,その後プラトーとなる(平方根記号に似る)。まれに,拘束型心筋症を除外するために右心生検が必要となる。

心電図変化は非特異的である。QRS電位は通常低い。T波は通常は非特異的異常を示す。約13の患者に心房細動が起こる;心房粗動はこれより頻度が少ない。

胸部側面像はしばしば心膜の石灰化を最もよく示すが,この所見は非特異的である。

心エコー図の変化も非特異的である。右室および左室充満圧が同等に上昇する場合,ドプラ心エコー検査は,拘束型心筋症と収縮性心膜炎を鑑別するのに役立つ。吸気時に,収縮性心膜炎では僧帽弁の拡張期血流速度は通常25%を超えて低下するが,拘束型心筋症の場合,低下は15%未満である。収縮性心膜炎では吸気時の三尖弁血流速度が正常より上昇し,拘束型心筋症では上昇しない。僧帽弁輪の組織運動速度の測定は,過度に高い左房圧が弁通過時の血流速度の呼吸による変化を鈍らせる場合には役立つことがある。

臨床所見と心エコー検査所見により収縮性心膜炎が示唆される場合は,心臓カテーテル法を行う。これは収縮性心膜炎を規定する血行動態異常の確認と定量化に役立つ:平均肺動脈閉塞圧(肺毛細血管楔入圧),肺動脈拡張期圧,右室拡張終期圧,および平均右房圧はいずれも約10〜30mmHgである。肺動脈収縮期圧と右室収縮期圧は,正常またはわずかに上昇するのみで,そのために脈圧は小さい。心房圧曲線では通常x谷とy谷が強調される;心室圧曲線は急速心室充満期に拡張期ディップを示す。これらの変化は,ほとんど常に重大な収縮性心膜炎に伴って起こる。

拘束型心筋症の場合,右室収縮期圧が50mmHgを超えることがしばしばあるが,収縮性心膜炎の場合,この頻度は少ない。肺動脈閉塞圧が右房平均圧に等しく,右房圧曲線に大きなx 波と y波があるとともに心室圧曲線に拡張早期のディップがある場合は,どちらかの疾患がある。

CTやMRIでは5mmを上回る心膜肥厚を確認できる。典型的な血行動態の変化を伴うこのような肥厚により収縮性心膜炎の診断を確定できる。心膜の肥厚や液体が認められない場合は,拘束型心筋症と診断する方が妥当ではあるが確診ではない。

原因の診断: 心膜炎の診断後は,病因と心機能に対する影響を調べる検査を行う。もともと健康であった若年成人がウイルス感染と心膜炎を呈する場合,広範な評価は通常不要である。ウイルス性心膜炎と特発性心膜炎の鑑別は難しく,費用がかかり,通常は実際的重要性がほとんどない。

診断を確立するには,心膜組織の生検や心膜液の吸引が必要となることがある。心膜液の好酸性染色と培養は,感染源の特定に役立つ。サンプルを検査して悪性細胞の有無を調べる。しかしながら,新たに同定された心膜液の完全なドレナージは,診断には通常不要である。持続性(通常3カ月を超える)または進行性の心膜液貯留で,特に病因が不明である場合にも,心膜穿刺が必要となる。

針による心膜穿刺を行うか外科的ドレナージを行うかの選択は,施設の資材や医師の経験,心膜液貯留の原因,診断のための組織サンプルの必要性,患者の予後による。針による心膜穿刺は,病因が明らかである場合やタンポナーデの存在が疑わしい場合にしばしば最善の方法となる。タンポナーデの存在は確実であるが病因が不明な場合は,外科的ドレナージが最善の方法である。

培養と細胞診断以外の心膜液の臨床検査は通常非特異的である。しかし,視覚的,細胞学的,免疫学的な新しい分析法を用いて,心膜鏡ガイド下生検により採取した心膜液を検査すれば,特異的な診断はときとして可能である。

心臓カテーテル法は,心膜炎を評価し,心機能低下の原因を特定するうえで有用である。

CTやMRIは転移の同定に役立つが,通常は心エコー検査で十分である。

その他の検査としては,全血球算定,急性期反応物質,ルーチンの化学検査,培養,自己免疫検査,さらに適切な場合には,HIV検査,(流行地での)ヒストプラスマ症補体結合検査,ストレプトザイム検査,およびコクサッキーウイルス,インフルエンザウイルス,エコーウイルスに対する中和抗体検査を行う。抗DNA抗体,抗RNA抗体検査は有用である。PPD皮膚テストを行う。

治療

合併症を監視するために入院させることが通常勧められる。原因となる可能性のある治療薬(例,抗凝固薬,プロカインアミド,フェニトイン)は投与を中止する。心タンポナーデの場合は,直ちに心膜穿刺(心膜炎: 心膜穿刺術。図 2: イラストを参照)を行う;心膜液を少量除去するだけでも救命できる。

図 2

心膜穿刺術。

心膜穿刺術。

致死的となりうる処置である心膜穿刺は,緊急時(例,心タンポナーデ)を除いて,心臓カテーテル法のできる場所において,心エコー法によるガイド下で,可能ならば心臓専門医か胸部外科医の監視下で行うべきである。蘇生設備が手近になくてはならない。静注鎮静薬(例,モルヒネ0.1mg/kgまたはメペリジン1mg/kgとミダゾラム3〜5mgの併用)の投与が望ましい。患者は臥位で,頭を水平面より30度挙上する。無菌状態で,皮膚および皮下組織をリドカインで浸潤する。長さ75mmの斜端の短い16ゲージの針に3方活栓をつけて30か50mL注射器につける。心膜へは,右もしくは左の剣肋角または剣状突起部の先端から内上方の方向へ胸壁近くに針を進めれば達する。注射器に引圧をかけながら針を進める。撹拌した生理食塩水を針から注入しながら心エコーで針をガイドしてもよい。針が必要以上に奥へ入って心臓を穿刺または冠動脈を損傷しないように,いったん挿入されたら皮膚の近くで針に鉗子をかけ奥へ入らないようにするべきである。心筋に接触または刺入したときに生ずる不整脈を発見するために心電図モニタリングは不可欠である。一般に,右房圧および肺動脈閉塞圧(肺毛細血管楔入圧)をモニタリングする。心嚢内圧が右房圧以下,通常大気圧レベル以下まで低下するまで排液する。引き続きドレナージが必要であれば,合成樹脂製カテーテルを針を通じて心膜内に入れ針を抜去する。カテーテルは2〜4日間留置しておいてもよい。

疼痛は通常,アスピリン325〜650mg,経口,4〜6時間毎または他のNSAID(例,イブプロフェン600〜800mg,経口,6〜8時間毎)を1〜4日間投与することによってコントロールできる。コルヒチン1mg/日をNSAIDに追加するか,または単独で投与すると,心膜炎の最初のエピソードに効果的であり,再発の防止に役立つ。治療の強度は患者の苦痛によって決まる。疼痛が重度の場合は,オピオイドおよびコルチコステロイド(例,プレドニゾン60〜80mg,経口,1日1回を1週間,続いて急速に用量を漸減する)が必要となる。コルチコステロイドは,尿毒症または結合組織疾患による急性心膜炎において特に有用である。抗凝固薬は心膜内出血やさらには致死的な心タンポナーデを引き起こすことがあるので,急性心膜炎では通常禁忌である;しかしながら,急性心筋梗塞を合併している早期心膜炎では,抗凝固薬を投与できる。まれに,心膜切除が必要となる。

感染は特異的な抗菌薬で治療する。完全なドレナージがしばしば必要である。

心膜切開術後症候群,心筋梗塞後症候群または特発性心膜炎においては,抗生物質は適応とはならない。NSAIDを十分量投与すると疼痛や滲出液がコントロールされる。疼痛,発熱,および滲出液をコントロールする必要がある場合は,プレドニゾン20〜60mg,経口,1日1回を3〜4日間投与する。もし反応が良好であれば,服用量を徐々に減らし,7〜14日後に中止する。しかし,ときに何カ月にもわたる治療が必要となることもある。

リウマチ熱,他の結合組織疾患,または腫瘍に起因する心膜炎の場合は,治療は基礎疾患に対して行われる。

外傷による心膜液貯留の場合,損傷を修復し心膜から血液を排除するために,ときに手術が必要となる。

尿毒症による心膜炎は,より頻回の血液透析,吸引,または全身的もしくは心膜内への副腎コルチコステロイド投与に反応する。心膜内トリアムシノロンが有益である。

慢性的な滲出の場合は,原因が既知ならば,その原因を治療するのが最善である。再発性または持続性の症候性滲出は,バルーン心膜切開術,心膜開窓術,または硬化薬(例,テトラサイクリン)によって治療する。悪性腫瘍浸潤による滲出の再発は,硬化薬で治療する。原因のわからない無症候性滲出は,経過観察することのみ必要である。

慢性収縮性心膜炎によるうっ血は,安静,塩分制限,および利尿薬によって軽減する。ジゴキシンは心房性不整脈または心室収縮機能不全がみられるときにのみ用いられる。症候性収縮性心膜炎では,通常心膜切除術を必要とする。しかしながら,軽度の症状,高度な石灰化,または広範な心筋障害を有する患者は手術の適応とはなりにくい。心膜切除術の死亡率は,ニューヨーク心臓学会(NYHA)の機能クラスⅣの患者では40%に達する。放射線照射や結合組織疾患に起因する収縮性心膜炎の患者は,特に重症の心筋障害を有する傾向があり,心膜切除を行っても改善しないこともある。

最終改訂月 2006年9月

最終更新月 2005年11月

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