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動脈瘤は,動脈壁の脆弱化によって引き起こされる動脈の異常な拡張である。一般的な原因に,高血圧,アテローム硬化,感染,外傷,遺伝性または後天性の結合組織疾患がある。動脈瘤は通常は無症状であるが,疼痛を引き起こし,虚血,血栓塞栓症,自然解離,破裂を来すことがあり,これらは致死的でありうる。診断は画像検査(例,超音波検査,CT血管造影,磁気共鳴血管造影,大動脈造影)による。未破裂動脈瘤の治療には,動脈瘤の大きさおよび部位ならびに症状の有無に応じて,危険因子修正(例,厳格な血圧コントロール)に加えて監視のための画像検査を行うか,または手術を行う。破裂動脈瘤の治療は,即時の外科的修復術および人工血管または血管内挿グラフトの留置である。
動脈瘤は,動脈径が正常部分の50%以上増大した部分として定義され,動脈壁の限局性の脆弱化によって起こる。真性動脈瘤は動脈の3層(内膜,中膜,外膜)全てに及ぶ。仮性動脈瘤(偽動脈瘤)は動脈内腔とそれを覆う結合組織との間の,動脈破裂に起因する連絡であり,血管壁の外側に血液で満たされた空洞ができ,それが血栓を形成して漏出を閉鎖する。動脈瘤は紡錘状(動脈の円周方向の拡張)または嚢状(動脈壁の限局性の突出)に分類される。いずれのタイプにおいても,複数の層として形成された血栓(層状の血栓)が血管壁の内側を覆うことがあり,これは動脈瘤より先の血流が正常または正常に近いことの徴候である。
動脈瘤はどの動脈にも生じうる。腹部および胸部の大動脈瘤は最も一般的で重大であり,主要分枝(鎖骨下動脈および内臓動脈)の動脈瘤ははるかに少ない。
腹部大動脈瘤(AAA)
腹部大動脈瘤(AAA)は大動脈瘤の3⁄4を占め,人口の0.5〜3.2%が罹患する。有病率は男性で3倍高い。AAAは典型的には腎動脈の下で始まるが,腎動脈起始部を含むこともあり,約50%は腸骨動脈に及ぶ。一般に,直径3cm以上の動脈がAAAとなる。ほとんどのAAAは紡錘状であり,一部は嚢状である。多くは内側が層状の血栓で覆われる。AAAは大動脈の全層に及び,解離を伴わないが,胸部大動脈解離が遠位の腹部大動脈に拡張することがある。
病因
最も一般的な原因は動脈壁の脆弱化であり,通常はアテローム硬化と関連する。他の原因には,外傷,脈管炎,嚢胞性中膜壊死,術後吻合破裂などがある。まれに,梅毒および限局性の細菌または真菌感染(典型的には敗血症または感染性心内膜炎による)が動脈壁を脆弱化させ,感染性(真菌性)動脈瘤を引き起こす。
喫煙は最も強力な危険因子である。他の危険因子には高血圧,高齢(発生率のピークは70〜80歳),家族歴(15〜25%における),白人,男性などがある。
症状と徴候
ほとんどのAAAは無症状であり,症状と徴候は,起こったとしても特異的ではない。AAAは拡張するにつれて痛みを生ずることがあり,その痛みは持続的な,深部の穿刺されるような内臓の痛みで,腰仙部で最も強く感じられる;患者は異常にはっきりとした腹部の拍動を自覚していることがある。急速に拡大し破裂しようとしている動脈瘤は圧痛を伴うことが多いが,ほとんどの動脈瘤は症状を伴わずゆっくりと成長する。
動脈瘤は,その大きさおよび患者の体型により,拍動性の腫瘤として触知可能な場合もそうでない場合もある。拍動性の触知可能な腫瘤のある患者が3cmを超える動脈瘤を有する確率は約40%(陽性適中率)である。動脈瘤上に収縮期雑音(bruit)が聴取されることがある。破裂AAAによって直ちに死亡しない患者は,典型的には腹痛または背部痛,低血圧および頻拍を呈する。これらの患者は最近の上腹部外傷の病歴を有することがある。
潜在性AAAのある患者はときに合併症の症状(例,壁在血栓の塞栓による四肢痛)または原因の症状(例,感染または脈管炎による発熱,倦怠感,体重減少)を呈する。まれに,恐らく広範囲の異常な内皮表面が急速な血栓形成と凝固因子の消費の引き金となるため,大型のAAAが汎発性血管内凝固症候群を引き起こす。
診断
ほとんどのAAAは,身体診察において発見された場合,または他の理由で腹部超音波検査,CT,MRIが行われた場合に,偶然診断される。急性の腹痛または背部痛を呈する高齢患者においては,触知可能な拍動性の腫瘤の有無にかかわらず,AAAを考慮すべきである。
症状または身体診察所見がAAAを示唆する場合,腹部超音波検査またはCTが通常選択すべき検査である。血行動態的に不安定な,破裂が推定される患者については,超音波検査によりベッドサイドでより速く結果が得られるが,腸内ガスおよび腸管膨張がその正確さを制限しうる。手術の可能性に備えて,CBC,電解質,BUN,クレアチニン,PT,PTT,血液型,適合検査などの臨床検査を行う。
破裂が疑われない場合,CT血管造影(CTA)または磁気共鳴血管造影(MRA)により,動脈瘤の大きさおよび解剖学的所見の特徴をより正確に明らかにできる。血栓が動脈瘤壁の内側を覆っている場合,CTAでは真の大きさを過小評価することがあり,非造影CTにより,より正確な推定値が得られる。腎動脈もしくは大動脈腸骨動脈の疾患が疑われる場合,または血管内ステントグラフト(血管内挿グラフト)による是正が考慮される場合は,大動脈造影が不可欠である。
腹部単純X線は感度も特異度も高くないが,他の目的で得られた場合に,大動脈の石灰化が大動脈壁の輪郭を描出することがある。真菌性動脈瘤が疑われる場合,細菌および真菌の血液培養を行わなければならない。
治療
AAAには一定の速度(年間2〜3mm)で拡大するものや,指数関数的に拡大するものがあり,理由は不明だが,約20%は恒久的に同じ大きさのままである。治療の必要性は大きさに関係し,大きさは破裂のリスクと関連づけられる(大動脈とその分枝の疾患: 腹部大動脈瘤(AAA)の大きさと破裂のリスク*表 1: を参照)。
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表 1
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腹部大動脈瘤(AAA)の大きさと破裂のリスク*
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AAA直径(cm)
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破裂のリスク(%/年)
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< 4
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0
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4–4.9
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1%
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5–5.9*
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5–10%
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6–6.9
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10–20%
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7–7.9
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20–40%
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> 8
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30–50%
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*5.0–5.5cmを超える動脈瘤については,待期的修復術を考慮すべきである。
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破裂AAAには即時手術が必要である。治療しない場合の死亡率は100%近い。治療をすると死亡率は約50%であり,この数値がもっと低いものではないのは,多くの患者が冠動脈,脳血管,末梢血管のアテローム硬化を併発しているためである。出血性ショック状態で来院した患者には輸液蘇生術(ショックおよび輸液蘇生術: 輸液を参照 )および輸血が必要であるが,出血が増加しうるため,平均動脈圧を70〜80mmHgを超えて上昇させてはならない。術前の高血圧のコントロールは重要である。
動脈瘤が5〜5.5cmを超える場合(破裂のリスクが年間5〜10%を超えて上昇する場合),併存する医学的状態が手術禁忌でない限り,待期的修復術が望ましい。他に待期的手術が適応となるのは,動脈瘤の大きさにかかわらず6カ月以内に0.5cmを超える大きさの増大,慢性腹痛,血栓塞栓性の合併症,下肢の虚血を引き起こす腸骨動脈または大腿動脈の動脈瘤がある場合である。AAA患者の多くは全身性のアテローム硬化を有しており,外科的修復術は心血管イベントの大きなリスクをもたらすため,待期的修復術前に冠動脈疾患(CAD)のスクリーニングが不可欠である(心血管検査および手技: 心臓の解剖と機能を評価する検査を参照 表 1: )。AAA修復術による合併症および死亡率を低下させるために,冠動脈疾患の良好な薬物治療または血行再建術が不可欠である。
外科的修復術では,腹部大動脈の動脈瘤部分を人工血管で置換する。腸骨動脈に病変が及んでいる場合,腸骨動脈を含むように人工血管を延長しなければならない。動脈瘤が腎動脈上まで広がっている場合,腎動脈を人工血管とつなぐか,またはバイパスグラフトを移植しなければならない。
大腿動脈経由の動脈瘤内腔内への血管内挿グラフトの留置は,より侵襲性の低い代替法であり,周術期合併症のリスクが高い場合に適応となる。この手技は,動脈瘤を全身血流から除外し,破裂のリスクを低下させる。動脈瘤は最終的に血栓を形成し,動脈瘤の50%は直径が減少する。短期的な結果は良好だが,長期的な結果は知られていない。合併症には,血管内挿グラフトの屈曲,ねじれ,血栓形成,移動,およびエンドリーク(血管内挿グラフト留置後の,動脈瘤の嚢への持続的な血液流入)などがある。したがって,血管内挿グラフト留置後は,従来の修復術後よりフォローアップを頻繁に行わなければならない。合併症が生じなければ,1カ月目,6カ月目,12カ月目およびそれ以降年1回の画像検査が推奨される。患者の3050%においては,複雑な解剖学的構造(例,腎動脈下の動脈瘤頸部が短い,動脈のねじれが強い)のため,留置が適さない。
5cm未満の動脈瘤の修復術が生存率を改善することはないようである。これらの動脈瘤は,6〜12カ月毎に超音波検査またはCTで,治療を必要とする拡張がみられないかモニタリングすべきである。偶然発見される無症状の動脈瘤のモニタリング期間は確立されていない。アテローム硬化の危険因子のコントロール,特に禁煙および降圧薬の適宜使用が重要である。小型または中型の動脈瘤が5.5cmを超える大きさになった場合,および周術期合併症のリスクが破裂の推定リスクを下回る場合に,手術が適応となる;破裂のリスクと周術期合併症のリスクの対比について,患者と率直に話し合うべきである。
真菌性動脈瘤の治療は病原体に対する強力な抗菌療法,次いで動脈瘤切除である。早期の診断と治療が転帰を改善する。
胸部大動脈瘤
胸部大動脈瘤(TAA)は大動脈瘤の1⁄4を占める。男女とも同率で罹患する。TAAの約40%は胸部上行大動脈(大動脈弁と腕頭動脈,別名,無名動脈との間)に生じ,10%は大動脈弓(腕頭動脈,頸動脈,鎖骨下動脈を含む)に生じ,35%は胸部下行大動脈(左鎖骨下動脈より遠位),15%は上腹部に生じる(胸腹部動脈瘤のように)。
病因と病態生理
ほとんどのTAAはアテローム硬化に起因する。両方の危険因子には長期にわたる高血圧,異脂肪血症,喫煙があり,その他のTAAの危険因子には,他の部位における動脈瘤の存在および高齢(発生率のピークは65〜70歳)がある。
先天性結合組織疾患(例,マルファン症候群,エーレルス-ダンロー症候群)は,大動脈解離(大動脈とその分枝の疾患: 大動脈解離を参照 ),近位大動脈の拡張,大動脈弁閉鎖不全を引き起こす大動脈弁の拡張(大動脈弁輪拡張症)の合併したTAAをもたらす変性変化である嚢胞性中膜壊死を引き起こす。大動脈弁輪拡張症の症例の50%はマルファン症候群が原因であるが,嚢胞性中膜壊死およびその合併症は,先天性結合組織疾患が存在しなくても若年層に生じうる。
感染性(真菌性)TAAは,全身または局所の感染における血行性伝播(例,敗血症,肺炎),リンパ管炎性伝播(例,結核における),または直接拡大(例,骨髄炎または心膜炎における)に起因する。細菌性心内膜炎および第三期梅毒は,まれな原因である。TAAは一部の結合組織疾患(例,側頭動脈炎,高安動脈炎,ヴェーゲナー肉芽腫症)においても生じる。
鈍的胸部外傷は仮性動脈瘤(大動脈壁の裂傷を通して漏出した血液による壁外血腫)を引き起こす。
TAAは隣接構造の解離,圧迫,侵食,および血栓塞栓症,漏出,破裂をもたらしうる。
症状と徴候
ほとんどのTAAは,合併症(例,大動脈弁閉鎖不全,解離)が発症するまで無症状である。隣接構造の圧迫は胸背部痛,咳,喘鳴,嚥下障害,嗄声(左反回神経または迷走神経の圧迫による),胸痛(冠動脈圧迫による),上大静脈症候群を引き起こしうる。動脈瘤の肺への侵食は,喀血または肺臓炎を引き起こしうる。血栓塞栓症は,脳卒中,腹痛(腸間膜塞栓による),四肢痛を引き起こす。破裂TAAですぐに死亡しない患者は,胸部または背部の激しい痛み,低血圧,ショックを呈し,失血では最も一般的には胸膜腔または心膜腔に血液が流れ込む。食道への侵食(大動脈-食道瘻孔)が破裂に先行するとき,患者が大量吐血を呈することがある。
他の徴候として,交感神経節の圧迫によるホルネル症候群,心収縮のたびに起こる触知可能な気管の下方への牽引(気管牽引),気管偏移がある。ときに左室の心尖拍動よりも著明な,視認または触知可能な胸壁の拍動が,まれではあるが起こりうる。
大動脈起始部の梅毒性動脈瘤は古典的には,大動脈弁閉鎖不全および冠動脈口の炎症性狭窄をもたらし,これらは心筋虚血による胸痛として発現しうる。梅毒性動脈瘤は解離しない。
診断
TAAは通常,胸部X線が縦隔の拡張または大動脈隆起の拡大を偶然示すときに初めて疑われる。動脈瘤を示唆するこれらの所見または症状と徴候は,三次元画像検査でフォローアップを行うべきである。CTAは動脈瘤の大きさおよび近位または遠位への広がりを描出し,漏出を検出し,同時に起こっている病態を同定できる。MRAからも同様の詳細が得られる。経食道心エコー検査(TEE)は,上行大動脈の動脈瘤の大きさと広がりを描出し,漏出を検出できるが,下行大動脈についてはできない;TEEは,大動脈解離の検出に特に有用である。血管造影は,動脈腔の最良の画像が得られるが,管外構造に関する情報は得られず,侵襲的であり,腎および四肢のアテローム塞栓症および造影剤腎症の重大なリスクがある。画像検査の選択は,利用可能性および地域医療機関の経験に基づくが,破裂が疑われるならば,利用可能性に応じてTEEまたはCTAを直ちに行う。
大動脈起始部の拡張または説明のつかない上行大動脈瘤には,梅毒の血清学的検査が必要である。真菌性動脈瘤が疑われるならば,細菌および真菌の血液培養を行う。
予後と治療
TAAは年間平均5mm拡大する;急速な拡大の危険因子には,動脈瘤がより大きいこと,下行大動脈に位置すること,壁在血栓があることなどがある。動脈瘤破裂の時点の直径の中央値は上行動脈瘤で6cm,下行動脈瘤で7cmであるが,マルファン症候群の患者ではより小さい動脈瘤の破裂が生じうる。未治療の大型TAAを有する患者の生存率は,1年で65%,5年で20%である。
治療は外科的修復術,および高血圧がある場合はそのコントロールである。
破裂TAAは,治療しなければ例外なく致死的であり,動脈瘤漏出,および急性解離または急性弁逆流を引き起こす動脈瘤と同様,即時の介入が必要である。手術としては,正中胸骨切開(上行動脈および大動脈弓の動脈瘤の場合)または左開胸(下行動脈および胸腹部の動脈瘤の場合)およびその後の動脈瘤切除および人工血管置換が行われる。下行大動脈のTAAに経カテーテル的に留置する血管内ステントグラフト(血管内挿グラフト)が,切開手術に代わる,より侵襲性の低い方法として研究されている。緊急手術を行うと,1カ月死亡率は約40〜50%である。生存した患者において,重篤な合併症(例,腎不全,呼吸不全,重度の神経学的損傷)の発生率は高い。
待期的手術は,大型動脈瘤(上行大動脈で直径5〜6cm超,下行大動脈で6〜7cm超,マルファン症候群患者で,部位を問わず5cm超)に対して,および急速に拡大する動脈瘤(年間1cm超)に対して適応となる。待期的手術はまた,症状のある動脈瘤,外傷性動脈瘤,梅毒性動脈瘤にも適応となる。梅毒性動脈瘤には,ベンザチンペニシリン240万単位/週,筋注をその後3週間にわたり投与する。ペニシリンアレルギーの患者には,テトラサイクリンまたはエリスロマイシン500mg,経口投与,1日4回,30日間投与でもよい。
無傷のTAAの外科的修復術は転帰を改善するものの,それでも30日死亡率は5〜10%を超え,10年死亡率は40〜50%である。動脈瘤が複雑な場合(例,大動脈弓または胸腹部大動脈に存在),または患者が冠動脈疾患を有する,高齢である,症状を有する,もしくは先在する腎不全を有する場合,死亡のリスクは大幅に上昇する。周術期合併症(例,脳卒中,脊髄損傷,腎不全)は,約10〜20%に起こる。
待期的な外科的修復術の基準を満たさない無症状の動脈瘤は,β遮断薬およびその他の降圧薬を必要に応じて使用する積極的な血圧コントロール,6〜12カ月毎の連続CT,症状がないかを確認する頻回のフォローアップにより治療する。禁煙は不可欠である。
大動脈分枝の動脈瘤
動脈瘤は,いずれの主要な大動脈分枝にも生じうるが,そのような動脈瘤は腹部または胸部の大動脈瘤よりもはるかにまれである。危険因子には,アテローム硬化,高血圧,喫煙,高齢などがある。限局性感染は真菌性動脈瘤を引き起こしうる。
鎖骨下動脈の動脈瘤はときに頸肋症候群または胸郭出口症候群に関連している。
内臓動脈の動脈瘤はまれである。約60%は脾動脈に,20%は肝動脈に,5.5%は上腸間膜動脈に起こる。脾動脈瘤は,女性において男性より多く生じる(4:1)。原因には,中膜の線維筋性異形成,門脈圧亢進症,多胎妊娠,貫通性または鈍的腹部外傷,膵炎,感染などがある。肝動脈瘤は男性において女性より多く起こる(2:1)。肝動脈瘤は過去の腹部外傷,違法静注薬物の使用,動脈壁の中膜変性,動脈周囲の炎症に起因しうる。腎動脈瘤は,解離または破裂し,急性閉塞を引き起こすことがある(腎血管性疾患: 急性閉塞を参照 )。
症状と徴候
症状は様々である。鎖骨下動脈瘤は局所的な痛み,拍動感,静脈血栓,静脈性浮腫(隣接静脈の圧迫による),遠位の虚血性症状,一過性脳虚血発作,脳卒中,嗄声,運動機能および感覚機能の障害(反回神経または腕神経叢の圧迫による)を生じうる。上腸間膜動脈瘤は腹痛および虚血性大腸炎を引き起こしうる。
真菌性または炎症性動脈瘤は,部位にかかわらず,局所的な痛みおよび全身性の感染の続発症(例,発熱,倦怠感,体重減少)を引き起こしうる。
診断と治療
ほとんどの大動脈分枝の動脈瘤は破裂する前には診断されないが,石灰化した無症状または潜在性の動脈瘤が,他の理由で行われたX線またはその他の画像検査において認められることがある。超音波検査またはCTは,典型的には大動脈分枝の動脈瘤を発見または確認するために用いられる;血管造影は,動脈瘤または塞栓症によると考えられる遠位の症状を評価するために必要に応じて使用される。
治療は,外科的除去およびグラフトによる置換である。無症状の動脈瘤の修復については,破裂のリスク,動脈瘤の範囲および部位,周術期のリスクにより決定される。
鎖骨下動脈瘤の手術では,修復および置換を行う前に頸肋(存在する場合)を除去する。
内臓動脈瘤では,破裂および死亡のリスクは10%にのぼり,妊娠可能年齢の女性および肝動脈瘤の患者において特に高い(35%超)。したがって,内臓動脈瘤の待期的修復術は,妊娠可能年齢の女性,その他の年齢層の症状のある動脈瘤,肝動脈瘤に対して適応となる。脾動脈瘤では,修復術は,動脈再建を伴わない結紮または動脈瘤の除外および血管再建からなる。動脈瘤の位置により,脾臓摘出が必要となることもある。
真菌性動脈瘤の治療は,特異的病原菌に対する強力な抗生物質療法である。一般に,これらの動脈瘤には外科的な修復も行わなければならない。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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