メルクマニュアル18版 日本語版
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はじめに

耳痛,難聴,耳漏,耳鳴,およびめまいは,耳に問題があるときの主症状である。難聴については難聴で考察する。

耳,鼻,鼻咽頭,副鼻腔に加えて,歯,舌,扁桃,下咽頭,喉頭,唾液腺,顎関節も検査されるが,これは,そうした部位からの痛みや不快感が耳に放散している可能性があるためである。脳神経機能の検査(神経疾患患者へのアプローチ: 脳神経()を参照 および自律神経系: ホルネル症候群を参照 )とベッドサイドでの聴力(難聴: 身体診察を参照 )および前庭器の検査が重要である。 また,患者には眼振(両眼の律動的な動き―耳に問題がある患者へのアプローチ: 眼振を参照 囲み解説 1: 囲み解説)の検査も行う。

囲み解説 1

眼振

眼振は両眼の律動的な動きであり,様々な原因で起こりうる。前庭系と動眼神経核は相互に連絡しているため,前庭障害から眼振が起こりうる。前庭眼振の存在は前庭障害の同定に有用であり,ときに中枢性めまいと末梢性めまいを鑑別する。前庭眼振には,前庭入力によって引き起こされる緩徐相と,逆方向への動きを引き起こす元に戻る急速相がある。眼振の方向が急速相の方向で決定されるのは,それがより見やすいからである。眼振には回旋性,垂直性,または水平性眼振があり,また,自発的に起こるもの,注視により起こるもの,頭部の動きにより起こるものがある。

眼振の初期検査は,患者を仰臥位にし,注視の焦点を合わせずに行う(注視の固定を防止するために,+30ジオプトリーのレンズまたはフレンツェル眼鏡を使用できる)。次に,患者をゆっくりと左に回転させ,さらに右側臥位まで回転させる。眼振の方向および持続時間を観察する。もし眼振が検知されなければ,次にディックス-ホールパイク(またはバラニー)法を行う。この操作では,患者にストレッチャーの上で上体が直立の座位をとらせ,仰向けになったときに頭が端から出るようにする。患者を支えながら速やかに水平まで倒し,頭を後ろに伸ばして水平線より45度下になるようにして,左側に45度回転させる。

眼振の方向および持続時間ならびにめまいの発生を観察する。患者を直立姿勢に戻し,同じ操作を右方向への回転で繰り返す。眼振を引き起こす姿勢または操作があれば,それを繰り返して疲労現象が起こるかどうかをみる。末梢神経系障害による二次的な眼振は3〜10秒の潜時があり,急速に疲労するが,これに対して中枢神経系の原因による二次的な眼振は潜時がなく,疲労しない。誘発眼振中は,ある物体に焦点を合わせるよう患者に指示する。末梢神経系障害による眼振は固視により抑制される。

前庭系に障害のない人では,外耳道に温水・冷水を注入する温度刺激検査により眼振が誘発される。眼振が誘発されない場合や,両側で持続時間に20%以上差がある場合には,反応が弱い側に病変があることが示唆される。患者を仰臥位にし,頭を30度持ち上げて,それぞれの耳に3mLの氷水を順次注入する。代わりに240mLの温水(40〜44℃)を使うこともあるが,その場合は温水の温度が高すぎて患者が熱傷を負わないよう注意する。 冷水では対側への眼振が生じ,温水では同側への眼振が生じる。この覚え方として,COWS(Cold to the Opposite and Warm to the Same)という言葉がある。

検査

病歴または身体診察で聴覚異常が認められた患者や,耳鳴またはめまいを示す患者の場合は,聴力検査を行う(難聴: 聴覚検査を参照 )。眼振または前庭機能異常を示す患者には,肉眼では検出できないような自発眼振,注視眼振,頭位眼振を定量化するコンピュータ式電気眼振検査(ENG)が有用であろう。コンピュータ式ENG温度刺激検査は,各耳への冷水および温水注入に対する前庭系の反応の強さを定量化するもので,これにより医師は片側の弱さを識別できる。頭部や身体の位置を変えることにより,あるいは視覚的刺激を与えることによって,前庭系の構成部位を区別して検査できる。

主要な画像検査として,造影剤を使用するまたは使用しない側頭骨CT,ガドリニウム造影脳MRIなどがあり,検査の際には聴神経腫瘍を除外するために内耳道に注意する。これらの検査が適応となるのは,耳および/または頭部の外傷,慢性感染症,難聴,めまい,顔面神経麻痺,その他起源不明の耳痛などの場合である。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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