メルクマニュアル18版 日本語版
検索のヒント
ABCDEFGHI
JKLMNOPQR
STUVWXYZ
記号

セクション

トピック

歯髄炎

歯髄炎は未処置の齲蝕,外傷または多数の修復物に起因する歯髄の炎症である。主症状は疼痛である。診断は臨床所見に基づき,X線写真で確認される。治療は,齲蝕の除去,損傷した歯の修復,ときに根管療法または抜歯である。

歯髄炎は,齲蝕が象牙質深くに進行する場合,歯が多くの侵襲的処置を必要とする場合,または外傷が歯髄へのリンパ液や血液供給を阻害する場合に生じうる。それは,単純な充填により歯を保存しうる可逆的病態として始まる。象牙質という硬い箱の中で腫脹により循環が損なわれると,歯髄が壊死し,感染が起こりやすくなり,非可逆的になる。

歯髄の感染性続発症には,根尖性歯周炎,根尖周囲膿瘍,蜂巣炎,顎の骨髄炎がある。上顎歯からの感染拡大は,化膿性副鼻腔炎,髄膜炎,脳膿瘍,眼窩蜂巣炎,海綿静脈洞血栓を起こす。下顎歯からの感染拡大は,ルートヴィヒアンギナ,副咽頭間隙膿瘍,縦隔炎,心膜炎,膿胸,頸静脈血栓性静脈炎を起こしうる。

症状,徴候,診断

可逆性歯髄炎においては,歯に刺激(通常は冷感や甘味)が加わるときに疼痛が生じる。刺激が除去されると痛みは1〜2秒で止まる。

非可逆性歯髄炎においては,刺激が除去された後も,疼痛が自発的に生じたり残存したりする。患者は痛みを発する歯を特定することが困難であり,上顎と下顎の歯列弓を混同することさえある(ただし口腔の左右側を間違えることはない)。疼痛は歯髄の壊死により,その後数日で止まることがある。感染が起こり,歯根尖孔にまで拡大すると,歯は圧と打診に対して強烈に鋭敏になる。根尖周囲(歯槽)膿瘍がソケットから歯を持ち上げると,患者が咬合する際“高く”感じる。

診断は,病歴と刺激の誘発(熱,冷感,打診の適応)を用いた身体診察に基づく。X線写真は,炎症が歯根まで拡大しているかの判断や,その他の病状を除外する手助けとなる。

治療

可逆性歯髄炎においては,通常齲蝕の除去と充填によって歯を治療した場合,歯髄の活性は維持される。

非可逆性歯髄炎とその続発症には,歯内(根管)療法または抜歯が必要である。歯内療法においては,歯に開口部を作り歯髄を除去する。根管器官系を完全に切除し,成形し,ガッタパーチャを充填する。根管療法後に,臨床的には症状の消散によって,X線所見的には,数カ月の期間後,歯根尖部のX線透過性像領域における骨の充填によって,適切な治癒が証明される。患者に発熱など感染の全身徴候が認められる場合,抗生物質の経口投与を処方する(ペニシリンVK500mg,6時間毎,またはペニシリンにアレルギーのある患者には,クリンダマイシン150mgまたは300mg,6時間毎)。もし症状が持続する,または悪化するならば,根管を見過ごしていた症例では,根管療法が通常繰り返されるが,別の診断(例,顎関節疾患,潜在性歯牙破折,神経障害)も考慮に入れるべきである。

非常にまれに,圧縮空気または高速空気タービン歯科用ドリルを根管療法または抜歯に用いた後,皮下または縦隔の気腫が発生する。これらの装置は空気を歯のソケット周囲の組織中に送り込み,筋膜面に沿って解離させる。顎と頸部の腫脹が急性発症し,触診において腫脹した皮膚に特徴的な捻髪音を伴う場合は診断的である。予防的な抗生物質の投与がときに処方されるが,治療は通常必要ない。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

ページの先頭へ

前へ: 歯周炎

イラスト
個人情報の取扱いご利用条件