メルクマニュアル18版 日本語版
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顎関節炎 (TMJ)

感染性関節炎,外傷性関節炎,変形性関節症,関節リウマチおよび二次変形性関節症は下顎関節に影響を及ぼす。

感染性関節炎: 顎関節(TMJ)の感染は,近接の感染部の直接拡大,または血液感染性をもつ微生物の血行性散布により生じる(関節と骨の感染症: 急性感染性関節炎を参照 )。感染部分は炎症を起こし顎運動も制限される。全身疾患の根拠,または近接の感染部と関連した,感染の局所徴候が診断を示唆する。X線所見は早期には陰性だが,後になると骨破壊を示すことがある。化膿性関節炎が疑われる場合,診断の確認と原因細菌の同定のために関節を穿刺する。診断は永久的な関節の損傷を防ぐためにすばやくなされなければならない。

治療は,抗生物質,適切な水分補給,疼痛の制御と顎運動の制限である。非経口のペニシリンGは,培養や感受性検査に基づく特異的な細菌学的診断がなされるまで選択すべき薬である。化膿性感染は穿刺または切開する。一旦感染が制御されれば,開口訓練が瘢痕や運動制限の防止に役立つ。

外傷性関節炎: まれに,急性損傷(例,困難な抜歯または気管内挿管による)がTMJの関節炎を引き起こすことがある。疼痛,圧痛,顎運動の制限が生じる。診断は主に病歴に基づく。X線所見は,関節内の浮腫や出血によって関節腔が拡大する場合を除いて陰性である。治療はNSAID,温罨法,軟食摂取,顎運動の制限である。

変形性関節症: 通常50歳を超える患者においてTMJが影響を受ける。ときとして患者は硬直,きしみや軽度の疼痛を訴える。捻髪音が円板の摩耗した穴から生じ,骨と骨の摩擦が生じる。関節罹患は一般に両側性である。X線は,関節顆頭の平担化や骨辺縁を示すことがあり,これは機能不全的変化を示唆する。治療は対症的である。

関節リウマチ: 成人と小児の関節リウマチ患者の50%以上において,TMJは影響を受けるが,通常それは最後に影響を受ける関節群に含まれる。疼痛,腫脹,顎運動制限が最も一般的な所見である。小児では,下顎関節突起の破壊の結果,下顎の発育障害と顔面の変形を来す。強直症が継発することがある。TMJのX線所見は,通常早期は陰性であるが,後期になると,前方開咬変形の原因ともなる骨破壊が認められる。診断は,多発性関節炎を伴うTMJの炎症により示唆され,病変に典型的な他の所見により確定される。

治療は,他関節の関節リウマチに対する治療と同様である。急性期にはNSAIDが投与されることがあり,顎機能は制限すべきである。ナイトガードまたは副子がしばしば有効である。症状が軽減すれば,軽度の開口訓練は過度の運動障害を防止するのに役立つ。もし強直症が発症すれば,外科的処置が必要であるが,病状が鎮静化するまでは行うべきではない。

二次変形性関節症: このタイプの関節炎は,通常20〜40歳の人において外傷後に,または持続的な筋筋膜痛症候群(顎関節疾患: 筋筋膜痛症候群を参照 )患者において発症する。それは開口制限,顎運動中の片側痛,関節の圧痛,関節捻髪音を特徴とする。筋筋膜痛症候群を併発すると,症状は増悪および寛解する。診断はX線に基づき,一般的には下顎関節突起の平担化,骨辺縁,骨棘,またはびらんを示す。片側関節のみの罹患は,二次変形性関節症を変形性関節症と鑑別するのに役立つ。

関節形成術や高位関節突起切除を要する場合もあるが,治療は筋筋膜痛症候群に対するのと同様に保存的である。咬合用副子(マウスガード)は通常症状を緩和する。副子は食事中,口腔衛生または器具洗浄時以外は絶えず装着する。症状が消失するにしたがって,1日当たりの副子装着時間を漸減する。コルチコステロイドの関節内注射は症状を軽減しうるが,頻繁に繰り返すと関節を害する恐れがある。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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