メルクマニュアル18版 日本語版
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顎内障

顎内障は関節顆頭上方の関節円板の前方への転位である。症状は限局した関節痛と顎運動により生じるはじけるような音である。診断は病歴と身体診察に基づく。治療は鎮痛薬,顎の沈静化,筋肉の弛緩,理学療法,咬合副子による。もしこれらの方法が不成功ならば,手術が必要となることもある。早期治療は結果を劇的に改善する。

顎の構造異常により関節に例外的な負荷が加わると,外側翼突筋の上頭に引かれて関節円板が正常な位置からずれることがある。顎の構造異常は先天的または後天的な顔面非対称によるものか,または外傷や関節炎の続発症によることがある。もし円板が前方にとどまるならば,障害は非復位型と呼ばれる。開口が制限され(開口障害),耳の中やTMJ周囲の疼痛が起こる。もし,関節の運動におけるある時点で円板が関節顆頭に戻れば,それは復位型と呼ばれる。復位型障害は,人口の約3分の1において,いずれかの時期に生じる。全ての型の障害は,関節を取り巻く組織(例,腱,靱帯,結合組織,滑膜)の炎症である被膜炎(または滑膜炎)を引き起こす。被膜炎は自然発症的に生じることもあれば,関節炎,外傷,または感染に起因することもある。

症状と徴候

復位型障害では,しばしば,開口時にカチンまたはポンという音が生じる。疼痛は,特に固い食物を噛むときに認められることがある。患者はしばしば,自分が噛むときの雑音が他人に聞こえると思い,当惑する。実際に,音は患者にとってはより大きく思えるが,ときには他人に聞こえることもある。

非復位型障害は通常音を出さないが,上下の切歯先端の間の最高開口域が,正常な場合は40〜45mmであるものから30mm以下に狭まる。一般に疼痛が起こり,患者の咬合の知覚が変化する。

被膜炎は限局した関節の疼痛,圧痛,ときに開口制限を引き起こす。

診断

復位型障害の診断には開口時の顎の観察が必要である。口を10mmより大きく開けたとき,円板が関節顆頭の上を乗り越えて急に戻るので,カチンまたはポンという音が聞こえるか,あるいは引っかかりを蝕知しうる。口をさらに開けている間,関節顆頭は円板上にとどまる。通常口を閉じる間,関節顆頭が円板の後縁部を滑り越え,円板が前に押し出されるとき,別のカチンという音が聞こえる(逆クリック音)。

非復位型障害の診断には患者にできるだけ大きく開口させる必要がある。開口部を測定し,もう少し大きく口を開けるため緩やかな圧をかける。正常では口は45〜50mm開くが,もし円板が損傷しているならば,約20mm開くであろう。抵抗に対して口を閉じたり顎を突出させると疼痛が悪化する。

被膜炎は,しばしば関節の激しい圧痛の他,外傷または感染の病歴に基づき,また筋筋膜痛症候群,円板の障害,関節炎および構造的非対称性に対する治療後に疼痛が残っている場合を除外することで診断される。しかしながら,被膜炎は,上記のいずれかに併発して認められることがある。

治療

復位型障害は,もし患者が不快感なしに口を適度な大きさに(約40mm,または人差し指と中指と薬指の3本の指幅)開けられるならば,治療の必要はない。疼痛が生じる場合は,軽度の鎮痛薬,例えばNSAID(イブプロフェン400mg,6時間毎に経口投与)を用いる。もし発症が6カ月以内であれば,下顎を前方および円板上に位置づけるために,前方保持副子を使用する。副子は,片側の歯列弓にぴったり合うよう形成された,固く透明なアクリル(プラスチック)製の馬蹄鉄型の器具でである。器具の咀嚼面は,患者が副子上で口を閉じたとき,下顎を前方に保持するようデザインされている。この位置であれば,円板は常に関節顆頭部に保持される。副子は下顎が後方へ動くことができるよう徐々に調整される。外側翼突筋の上頭部が伸長するにつれ,円板が関節顆頭と一緒に留まるようになれば,円板が整位されたといわれる。円板がずれている期間が長いほど,円板は変形し,整復が成功する可能性は低くなる。円板の整位術処置が行われることもあるが,成果は一定ではない。

非復位型障害は鎮痛薬以外の治療を必要としないことがある。副子は,もし関節円板が顕著に変形していなければ役立つこともあるが,長期間の使用は口腔の構造に不可逆的な変化をもたらすかもしれない。場合によっては,患者に円板をゆっくりと伸長するよう指示することで,正常に顎を開けられるようになる。保存療法が失敗した場合,様々な関節鏡下手術と観血療法が用いられる。

被膜炎はまずNSAIDや顎の安静,筋肉の弛緩によって治療する。もしこれらの治療が成功しなければ,コルチコステロイドの関節内注射か,または関節鏡下での関節洗浄とデブリドマンを行うことがある。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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