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眼の診察は,標準的な検眼鏡を含む基本的な機器を用いて行うことができるが,精密な診察では特別な機器と眼科医による評価が必要となる(眼の断面図については眼科患者へのアプローチ: 眼の断面図。図 1: を参照。)
病歴
病歴から,部位,発症の速さ,持続時間,以前の眼の症状の病歴についての情報,疼痛,眼脂,充血の有無と性状についての情報,視力変化についての情報を得ることができる。視力障害および眼痛以外の心配な症状には,光視症,おびただしい飛蚊症(ともに網膜剥離の症状),複視,周辺視野欠損がある。
身体診察
視力:
最初の手順は,視力の記録である。屈折矯正用レンズを必要とする患者は検査中にレンズを装用すべきである。しかしながら,屈折矯正用レンズを装用しない,または必要としない患者では,ピンホールを通して見させることにより検査を行うことができる。ピンホールが光線の焦点を合わせて屈折異常を補正するからである。反対眼を遮閉し,各眼の視力を検査する。視力は,患者が20ft(6m10cm)離れた位置にある視力表を見ることにより検査する。正常および異常な視力は,スネレン視力表で定量化する。スネレン視力表の20/40
(6/12または0.5)は,正常な視力の人が40ft(12.2m)の距離で読むことができる最小の文字を,その患者は20ft(6.1m)まで近づかなければ読むことができないという意味である。近見視力は,標準的な“近見視力表”または新聞を14インチ(35cm)の距離で読めるかどうかを患者に尋ねることにより検査するが,屈折矯正用レンズ(近用眼鏡)を必要とする40歳を超えた患者は近見視力検査時に近用眼鏡を装用すべきである。
屈折異常は,検者が手持ち式検眼鏡を用いて網膜に焦点を合わせるのに必要なレンズを記録することによってもおおよそ推定できるが,この方法は検者が自分の屈折矯正用レンズを使用する必要があり,屈折の包括的評価の代替では決してない。さらに一般的には,屈折異常は標準的なフォロプターまたは自動レフラクトメータ(投影した光と患者の眼から反射した光との変化を測定する器機)を用いて測定する。これらの機器で乱視も測定する(屈折異常: はじめにを参照 )。
眼瞼および結膜の診察:
眼瞼縁および皮下組織は焦点光の下で拡大して検査する(例,拡大鏡,細隙灯顕微鏡,検者の作業距離に焦点を合わせた検眼鏡による)。涙嚢炎または涙小管炎が疑われる場合は,涙嚢を触診し,涙小管および涙点から内容物を押し出すことを試みる。眼瞼反転後,眼瞼結膜,眼球結膜,結膜円蓋の異物,炎症の徴候(例,濾胞の肥大,滲出,充血,浮腫),他の異常について視診することがある。
角膜の検査:
角膜の反射光(照明時の角膜からの光の反射)の不鮮明または,エッジのにじみは,角膜上皮剥離または角膜炎が生じているなど,角膜表面が正常ではないことを示唆している。フルオレセイン染色により上皮剥離および潰瘍が明らかになる。疼痛のある患者,もしくは角膜または結膜に触る必要がある場合(例,異物除去または眼圧測定)には,染色前に点眼麻酔薬(例,0.5%プロパラカインまたは0.5%テトラカイン)を1滴点眼することにより,診察が容易になる。滅菌し個別に包装されたフルオレセイン紙を滅菌生理食塩水または点眼麻酔薬1滴で湿らせ,患者に眼を上方に向けさせて下眼瞼の内側に一瞬接触させる。色素が涙液層に広がるように,患者に数回まばたきさせ,コバルトブルーの照明光の下で拡大して眼の診察を行う。角膜上皮または結膜上皮が欠損した部分(上皮剥離または潰瘍)は緑色の蛍光を発する。
瞳孔の検査:
瞳孔の大きさと形に注意し,ペンライトを左右の眼に素早く交互にあてることにより瞳孔の対光反応を検査する(交互点滅対光反射試験)。照明下の正常な反応は両眼の(同感)瞳孔収縮であり,同感瞳孔収縮を伴わない瞳孔の散大は瞳孔求心路障害(マーカスガン瞳孔)の徴候で,同側の視神経機能不全または重度な網膜疾患を示唆する。
外眼筋:
検者は患者に,指を動かしながら8方向(上,右上,右,右下,下,左下,左,左上)を見るように指示し,運動を制限する脳神経麻痺,眼窩疾患,その他の異常と一致する注視時の偏位,運動制限および/または非共同注視を観察する。
眼底検査:
手持ち式検眼鏡を用いた直像眼底検査,または額帯式検眼鏡と手に持った集光レンズを用いて倒像眼底検査を行うことがある。手持ち式検眼鏡では,検者は検眼鏡の回転盤をゼロジオプトリーに回転し,次に眼底に焦点が合うまでレンズの度を増加または減少させる。手持ち式検眼鏡では網膜の見える範囲が狭いが,倒像眼底検査では立体的な観察ができ,網膜剥離が最も一般的に起こる周辺部網膜の視認性がより良好である。1%トロピカミド1滴および/または2.5%フェニレフリン1滴(必要があれば5〜10分毎に再点眼してもよい),さらに長時間作用させる場合は1%シクロペントラートおよび/または10%フェニレフリンを用いて瞳孔を散大させると,眼底の見え方がよくなる。前房が浅い場合は散瞳により急性閉塞隅角緑内障発作を誘発する可能性があるので散瞳前に前房深度を判定する;細隙灯(眼科患者へのアプローチ: 細隙灯顕微鏡検査を参照 )または,正確性は劣るが耳側輪部で持ったペンライトを虹彩面に平行に鼻に向けることにより判定できる。中間の虹彩が陰になる場合は前房は浅く,散瞳を避けるべきである。散瞳に対する他の禁忌には,頭部外傷,眼球破裂の疑い,狭隅角,閉塞隅角緑内障がある。
眼底検査により,水晶体または硝子体混濁の検出,陥凹乳頭比の評価,網膜および血管の変化の同定を行うことができる。乳頭陥凹は中央のくぼみ,視神経乳頭は視神経の全面積であり,陥凹乳頭比の増加は神経節細胞の障害を意味し,緑内障で増加する。網膜の変化には,狭いまたは広い範囲の血液として認められる出血およびドルーゼン(乾燥型加齢黄斑変性を意味する網膜下の小さい黄白色の斑)がある。血管の変化には,慢性高血圧の徴候,すなわち動静脈交叉部で動脈が網膜静脈を圧迫する網膜動静脈血管狭窄,動脈硬化の徴候,すなわち肥厚した動脈壁により光反射の太さが増加する銅線動脈,高血圧の徴候,すなわち薄く線維化した動脈壁により光反射の太さが減少する銀線動脈,頭蓋内圧亢進の徴候,すなわち以前は静脈拍動を認めた患者における拍動の消失がある。
細隙灯顕微鏡検査:
細隙灯顕微鏡は,光線の高さおよび幅を集束させて,眼瞼,結膜,角膜,前房,虹彩,水晶体,前部硝子体を立体的に正確に観察する。角膜異物および上皮剥離の同定,前房深度の測定および前房内の炎症または細胞の同定に特に有用である。ぶどう膜炎でみられるような毛様充血,すなわち毛様体上の輪部に限局した炎症,および結膜直下に焦点を合わせたときに細隙光の前方への弓状の隆起として観察され,通常,強膜炎の徴候である強膜の浮腫も同定できる。眼圧測定(後述参照)および隅角検査が行われることもある。隅角検査は前房隅角を定量化する検査で,特別なレンズの使用を必要とする。
視野検査:
視野は,視神経から後頭葉までの神経の視覚路内のどこの病変によっても障害されうる(眼科患者へのアプローチ: 視野欠損の種類表 1: および視神経疾患: 上位視路―病変部位と対応する視野障害。を参照 図 1: )。緑内障では周辺視が障害される。視野は対座検査またはさらに正式な方法で評価する。対座検査では,患者は検者の目または鼻を固視し続ける。検者は,小さな視標(例,マッチまたは指)を患者の視野の4分円で周辺からそれぞれの中心に向かって動かし,視標が最初に見えたときを知らせるように患者に指示する。左右の眼を別々に検査する。視標の感知に異常があれば,さらに正確な機器を用いて正式な検査を行うべきである。さらに正式な方法には,“平面視野計”,ゴールドマン視野計,コンピュータ制御の自動視野計(点滅光に対する患者の反応に基づき,コンピュータが素早く視野を構築する)の使用がある。アムスラーグリッドを用いて中心視を検査する。グリッドが歪む所見(変視症)は,脈絡膜新生血管を意味することがある。
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表 1
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視野欠損の種類
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種類
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説明
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原因
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水平視野欠損
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視野の上半分または下半分の全て,または一部の障害であるが,欠損が水平経線を越えることはない
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より一般的:虚血性視神経症,網膜動脈の半分の枝の閉塞,網膜剥離
あまり一般的ではない:緑内障,視神経または視交叉の病変,視神経欠損
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弓状暗点
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視神経乳頭の特定の部位に入っていく神経節細胞の障害に起因する,小さい弓状の視野欠損で,神経線維の弓状の走行に従うもので,欠損は水平経線を越えない
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より一般的:緑内障
あまり一般的ではない:虚血性視神経症(特に非動脈炎型),視神経乳頭ドルーゼン,高度近視
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両鼻側視野欠損(まれ)
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両眼視野の内側半分の全て,または一部分の障害で,欠損は垂直経線を越えない
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より一般的:緑内障,両耳側の網膜疾患(例,網膜色素変性)
まれ:両側後頭葉の疾患,両側の視神経を圧迫する腫瘍または動脈瘤
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両耳側半盲
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両眼視野の耳側半分の全て,または一部分の障害で,欠損は垂直経線を越えない
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より一般的:視交叉の病変(例,下垂体腺腫,髄膜腫,頭蓋咽頭腫,動脈瘤,神経膠腫)
あまり一般的ではない:傾斜乳頭
まれ:鼻側の色素変性
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盲点の拡大
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視神経乳頭上の正常な盲点の拡大
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乳頭浮腫,視神経ドルーゼン,視神経欠損,視神経乳頭上の有髄神経線維,薬物,コーヌスを伴う近視眼の乳頭
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中心暗点
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視野中央における視機能の障害で,典型的には中心窩を侵す
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黄斑疾患;視神経症(例,虚血性,レーベル遺伝性,視神経炎);視神経萎縮(例,神経を圧迫する腫瘍,中毒代謝疾患による);まれには,後頭皮質の病変
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同側半盲
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両眼視野の左半分または右半分の一部または全ての障害で,欠損は垂直経線を越えない
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視索または外側膝状体の病変;脳の側頭葉,頭頂葉,後頭葉の病変(卒中および腫瘍がより一般的;動脈瘤および外傷はあまり一般的ではない)。片頭痛により一過性の同側半盲が起こることがある
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狭い中心視野のみを残す周辺視野狭窄
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片眼または両眼における視野全体の外側の部分の障害
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緑内障;網膜色素変性またはいくつかの他の周辺部網膜の異常;慢性乳頭浮腫;汎網膜光凝固後;毛様網膜動脈の回避を伴う網膜中心動脈閉塞;黄斑回避を伴う両側性の後頭葉の梗塞;非生理的視力障害;癌関連網膜症;まれに,薬物
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Adapted from The
Wills Eye Manual, Douglas J. Rhee, M.D. and Mark F. Pyfer,
M.D.© 1999 by Lippincott Williams & Wilkins.
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色覚検査:
一般的に,カラーのドットの図の中に数字または記号が隠された,12〜24枚の石原式色覚検査表が色覚検査に使用される。先天色覚異常患者または後天性の色覚異常患者(例,視神経疾患)は隠れた数字のいくつか,または全てが見えない。先天色覚異常の多くは赤緑であり,後天色覚異常(例,緑内障または視神経疾患)の多くは青黄である。
検査
眼圧測定:
眼圧は,角膜を押すのに必要な圧力を測定することにより測る。手持ち式ペン型眼圧計をスクリーニングに使用する。点眼麻酔(例,0.5%プロパラカイン)を必要とする。非接触“空気噴射”眼圧計を用いた外来でのスクリーニングも行われることがあるが,直接角膜に接触しないのであまり訓練を必要としない。ゴールドマン圧平眼圧計による計測は最も正確な方法であるが,より訓練を必要とし,一般的には眼科医のみが使用する。眼圧測定は緑内障のスクリーニングとしては十分ではない。
フルオレセイン蛍光造影:
フルオレセイン注射液を静注後,網膜,脈絡膜,視神経乳頭,虹彩の血管構造を高速連続撮影する。フルオレセイン蛍光造影を用いて,糖尿病,加齢黄斑変性,網膜血管閉塞,眼ヒストプラズマ症などの疾患における灌流低下および新生血管を調べる。網膜レーザー処置の術前評価にも有用である。
網膜電図検査:
電極を左右の角膜上および周囲の皮膚上に置き,網膜の電気活動を記録する。この方法により網膜変性患者の網膜機能を測定する。視力を評価するものではない。
超音波検査:
Bモード超音波検査により,角膜および水晶体に混濁がある場合でも2次元の構造についての情報が得られる。眼科への応用例には,網膜腫瘍,剥離,硝子体出血の評価,異物の位置,後部強膜炎に特徴的な後部強膜の浮腫の検出,脈絡膜黒色腫と転移性癌や網膜下出血との鑑別がある。Aモード超音波検査は1次元の超音波で,眼内レンズ移植前にその度数を計算するために必要な測定値である,眼軸長を決定するために用いられる。超音波角膜厚計測は,屈折矯正手術(例,LASIK)前および角膜ジストロフィ患者において,超音波を用いて角膜の厚さを測定する方法である。
CTとMRI:
これらの画像診断法は,特に眼内異物が疑われる場合の眼外傷の評価,眼窩腫瘍,視神経炎,視神経腫瘍の評価のために行われることが最も多い。眼内異物が疑われる場合は,MRIを行うべきではない。
電気眼振記録:
耳に問題がある患者へのアプローチ: 検査を参照 。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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