メルクマニュアル18版 日本語版
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糖尿病網膜症

糖尿病網膜症には,毛細血管瘤,出血,滲出,黄斑浮腫があり,少なくとも数年にわたる糖尿病に合併して起こる。疾患の後期までは,視力低下はまれである。診断は眼底検査により行い,フルオレセイン蛍光造影によりさらに詳細に解明される。治療には,糖尿病のコントロールおよび脅威となるような病変に対するレーザー光凝固がある。

病態生理

糖尿病網膜症は失明の主要原因であり,特に1型糖尿病で重症になる傾向がある。網膜症の程度は糖尿病の罹病期間および血糖コントロール不良の両方との相関が高い。最初に非増殖網膜症が起こる。増殖網膜症はより重症で硝子体出血および網膜剥離に至ることがある。

非増殖網膜症(単純,または背景網膜症)では毛細血管の透過性亢進,毛細血管瘤,出血,滲出,黄斑浮腫を生じる。未治療の場合,黄斑浮腫(毛細血管からの液の漏出により生じる網膜の肥厚)により視力が障害される。

増殖網膜症は異常な新生血管(新生血管)が特徴で,新生血管は網膜・硝子体界面上に生じ,硝子体内に伸展して硝子体出血を生じることがある。血管とともに形成された線維組織が収縮し,網膜剥離が起こることがある。新生血管は前眼部の虹彩上にも生じ,隅角の虹彩周辺部で新生血管膜が増殖し,新生血管緑内障を引き起こすことがある。増殖網膜症による視力障害は重篤になりうる。

症状,徴候,診断

初期の発見が重要であるため,糖尿病患者は全員,眼科検査を毎年受けるべきである。妊娠中の患者は3カ月毎に検査すべきである。眼科的症状があれば,眼科への紹介が必要である。診断は眼科的臨床所見に基づいて行う。フルオレセイン蛍光造影を行い,障害の程度の判定,治療計画の作成,治療結果の監視を行う。

非増殖網膜症: 視覚症状は初期にはまれであり,網膜症が進行するにしたがって,黄斑浮腫のために視力が低下する可能性がある。後期には慢性の黄斑浮腫による嚢胞様変化および毛細血管閉塞による黄斑虚血が生じうる。

最初の徴候はしばしば,眼底検査で網膜後極部に観察される静脈拡張および小赤色点(毛細血管瘤)である。その後の徴候には,網膜の点状および斑状出血,硬性白斑,綿花様白斑(軟性白斑)がある。綿花様白斑は微小梗塞の領域で,網膜の混濁を生じるが,境界は不鮮明,白色で,その下の血管を覆い隠す。硬性白斑は離散し黄色で通常網膜血管よりも深い位置にあり,慢性浮腫の徴候である。黄斑浮腫は細隙灯生体顕微鏡で網膜層が隆起して不鮮明に見える。

増殖網膜症: 症状には,視力低下および視野中の黒点または光視症がある。硝子体出血または網膜剥離が起こる可能性があり,突然重度の視力障害が生じる。

視神経または網膜表面上に細い網膜前毛細血管が観察された場合に,増殖網膜症と診断される。これらの異常な血管が損傷し,硝子体中に網膜出血が生じることがある。極端な例では,網膜表面,特に主要な網膜血管上の白い網膜上膜形成を伴って網膜剥離が起こることがある。硝子体ゲルの剥離および収縮は,大血管上の付着部から網膜を前方に引っ張ることにより網膜剥離を引き起こす。

予後と治療

糖尿病および血圧のコントロールが重要であり,血糖値を徹底的にコントロールすることで網膜症の発症を遅らせ,進行を遅くすることができる。非増殖糖尿病網膜症は,臨床上著しい黄斑浮腫が生じた場合は局所レーザーで治療する。さらに広範囲な汎網膜光凝固術は,非増殖網膜症が重篤になった場合に行うことがある。硝子体内または眼周囲へのコルチコステロイド注射は,重度の黄斑浮腫を管理する方法として支持を得つつあり,より良好な視力改善をもたらす可能性がある。増殖網膜症の予後は,重度の網膜虚血,広範な新生血管,または広範な網膜前線維組織形成とともに悪化する。硝子体出血および網膜剥離を除き,失われた視力の回復はまれで,それ以上の視力障害を予防するために,治療的介入を計画する。

汎網膜光凝固術により増殖網膜症および新生血管が減少または消失し,新生血管緑内障の危険が低下する可能性がある。硝子体切除術は硝子体出血に有用なことがある。網膜剥離の治療は後述する。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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