メルクマニュアル18版 日本語版
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眼窩隔膜前蜂巣炎および眼窩蜂巣炎

眼窩隔膜前蜂巣炎(眼窩周囲蜂巣炎)は眼窩隔膜より前方の眼瞼および周囲の皮膚の感染症であり,眼窩蜂巣炎(眼窩隔膜後蜂巣炎)は眼窩隔膜より後方の眼窩組織の感染症である。いずれも外部の感染巣(例,創傷),鼻腔または歯から波及した感染症や,他の場所の感染症が転移性に広がったものにより起こりうる。症状には眼瞼の疼痛,変色,腫脹があり,眼窩蜂巣炎では発熱,倦怠感,眼球突出,眼球運動制限,視力障害も起こる。診断は病歴,診察,神経画像検査に基づいて行う。治療は抗生物質およびときに外科的排膿である。

眼窩隔膜前蜂巣炎および眼窩蜂巣炎は異なる2つの疾患で,いくつか共通の臨床症状および徴候がある。眼窩隔膜前蜂巣炎は通常,眼窩隔膜より表層で始まるが,眼窩蜂巣炎は通常,眼窩隔膜より深部で始まる。両疾患ともに小児で一般的で,眼窩隔膜前蜂巣炎は眼窩蜂巣炎よりはるかに頻度が高い。

病因と病態生理

眼窩隔膜前蜂巣炎は,顔面局所または眼瞼の外傷,虫刺され,先行する上気道感染症,結膜炎,霰粒腫からの接触性の感染拡大が原因で起こる。

眼窩蜂巣炎は近接する副鼻腔,特に蝶形骨洞(75〜90%)からの感染拡大によるものが最も多く,局所の外傷(例,虫または動物による咬傷,眼瞼の貫通性外傷)に伴う直接の感染,顔面からの接触性の感染拡大によるものはあまり一般的ではない。

病原体は病因および年齢により異なる。肺炎レンサ球菌は副鼻腔感染症に関連する最も頻度の高い病原体であり,黄色ブドウ球菌および化膿レンサ球菌は感染症が局所の外傷から起こった場合に顕著である。b型インフルエンザ菌はかつて一般的な原因であったが,予防接種の普及により今ではあまり一般的ではない。真菌はまれな病原体で,糖尿病または免疫抑制患者で眼窩蜂巣炎の原因となる。9歳未満の小児における感染症は典型的には単一の好気性菌によるものであり,15歳を超える患者では好気性菌と嫌気性菌(バクテロイデス,ペプトストレプトコッカス)の混合による複数菌の感染が典型的である。

眼窩蜂巣炎は,薄い骨の隔壁のみで隔てられた,広く隣接する劇症の感染巣(例,副鼻腔炎)に由来するため,眼窩感染が広範囲で,重篤となる可能性がある。骨膜下の液貯留はときに非常に多く,蓄積することがあり,骨膜下膿瘍と呼ばれるが,多くの場合,初期には無菌である。

合併症には,眼窩内圧亢進が原因の虚血性網膜症および視神経症による視力障害(3〜11%),軟部組織の炎症が原因の眼球運動制限(眼筋麻痺),海綿静脈洞血栓症,髄膜炎,脳膿瘍など,中枢側への感染拡大による頭蓋内続発症がある。

症状と徴候

眼窩隔膜前蜂巣炎では,眼瞼の圧痛,腫脹,発赤または変色(インフルエンザ菌の場合は青紫色)を来す。患者は開瞼できないことがあるが,視力は正常のままである。

眼窩蜂巣炎の症状および徴候には,眼瞼および周囲の軟部組織の腫脹および発赤,結膜の充血と浮腫,眼球運動障害,眼球運動に伴う疼痛,視力低下,眼窩の腫脹により生じる眼球突出がある。原発感染の徴候もしばしば認める(例,副鼻腔炎に伴う鼻漏および出血,膿瘍に伴う歯周の疼痛および腫脹)。発熱,倦怠感,頭痛があれば関連する髄膜炎を疑うべきである。これらの所見のいくつか,または全てを感染進行の初期に認めないことがある。

骨膜下膿瘍は,もし十分大きければ,眼瞼の腫脹および発赤,眼球運動制限,眼球突出,視力低下を起こしうる。

診断

本症は臨床的に診断する。眼窩隔膜前蜂巣炎または眼窩蜂巣炎が疑われる場合は,視力検査を行い,その経過を追うために眼科医に相談すべきである。眼瞼腫脹のため,眼球の検査に開瞼器の使用を要する場合があり,複雑な感染症の初期徴候はとらえにくいことがある。眼窩隔膜前蜂巣炎と眼窩蜂巣炎とはしばしば臨床的に鑑別可能である。眼の所見が眼瞼腫脹以外は正常で,皮膚に限局性の感染巣を認め,患者に全身疾患の症状または徴候を認めない場合は,眼窩隔膜前蜂巣炎の可能性が高い。所見があいまい,診察が困難(幼児など),または鼻漏(副鼻腔炎を示唆)がある場合は,眼窩蜂巣炎を確認し副鼻腔炎の有無を診断するためにCTを行うべきである。海綿静脈洞血栓症が考えられる場合は,MRIを行うべきである。

眼球突出の方向が感染部位の手がかりとなることがあり,例えば,前頭洞からの波及では眼球は下方へ突出し,篩骨洞からの波及では眼球は外側へ突出する。

眼窩蜂巣炎患者では血液培養がしばしば行われるが(理想的には抗生物質開始前),陽性は33%未満である。髄膜炎が疑われる場合は腰椎穿刺を行う。他の臨床検査は特に役立たない。

鑑別診断には,外傷による非感染性炎症,蜂巣炎を伴わない虫の刺咬傷,残存異物,アレルギー反応,腫瘍,その他の炎症性疾患(例,涙嚢炎,涙腺炎,眼窩炎性偽腫瘍)がある。炎症性疾患は通常,部位および外観により診断可能である。

治療

蜂巣炎の両型ともに治療は抗生物質で行う。

眼窩隔膜前蜂巣炎患者では,治療は副鼻腔炎の病原体(肺炎球菌,型別不能のインフルエンザ菌黄色ブドウ球菌,モラキセラ-カタラーリス)に対して行うべきであるが,汚染された創傷ではグラム陰性菌感染症を考慮しなければならない。アモキシシリン/クラブラン酸30mg/kg経口にて8時間毎(12歳未満の小児),500mg経口にて1日3回または875mg経口にて1日2回(成人)10日間は外来治療の選択肢であり,アンピシリン/スルバクタム50mg/kg静脈内6時間毎(小児),1.5〜3g静脈内6時間毎(成人)(アンピシリン最大8g/日)7日間は入院治療の選択肢である。眼窩蜂巣炎が最終的に除外された患者,および監督責任能力のある両親または保護者がおり,全身感染症の徴候がない小児では,外来治療を選択してもよい。

眼窩蜂巣炎患者は入院の上,髄膜炎に処方される抗生物質で治療すべきである。セフォタキシム50mg/kg静脈内6時間毎(12歳未満の小児),1〜2g静脈内6時間毎(成人)14日間などの第2または第3世代のセファロスポリンは副鼻腔炎がある場合の選択肢であり,イミペネム,セフトリアキソン,ピペラシリン/タゾバクタムが他の選択肢である。蜂巣炎が外傷または異物に関連している場合は,グラム陽性菌(バンコマイシン1g静脈内12時間毎)およびグラム陰性菌(例,エルタペネム100mg静脈内1日1回)に対して7〜10日間継続して,または臨床的に改善するまで治療を行うべきである。

視力が障害されている,化膿または異物が疑われる,CTで眼窩膿瘍または大きい骨膜下膿瘍を認める,もしくは感染症が抗生物質に反応しない場合は,眼窩を減圧し,感染した副鼻腔を開放する手術が適応となる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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