メルクマニュアル18版 日本語版
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皮膚病変の記載

一次的形態(病変の種類),二次的形態(形状),質感,分布,色調を含め,皮膚病変の記載を標準化するために膨大な数の用語が生み出された。発疹は当座の皮疹を表す一般的な用語である。

一次的形態

は平坦で触知されない病変であり,この用語を大きさに関係なく用いる者もいるが,直径は通常10mm未満である。斑は色調または表面の質感の変化を表わし,皮膚表面から隆起しない。パッチは,大型の斑である。例として,雀卵斑,平坦なほくろ,刺青,ポートワイン血管腫,リケッチア感染の発疹,風疹,麻疹,一部のアレルギー性薬疹があげられる。

丘疹は隆起性病変で,直径は通常10mm未満であり,触知できる。例として母斑,疣贅,扁平苔癬,虫刺症,脂漏性角化症および日光角化症,一部のざ瘡病変,皮膚癌がある。“斑状丘疹状”という用語は,しばしば多発した赤色の発疹を記述するのに漫然と不適当に用いられている;この用語は非特異的でたやすく誤用されるので,避けるべきである。

局面は触知できる病変で,直径は10mmを超え,皮膚表面から隆起する。局面は台地に似ている。乾癬および環状肉芽腫の病変はふつう局面を形成する。

結節は硬い丘疹または病変で,真皮または皮下組織まで広がっている。例としては,嚢腫,脂肪腫,線維腫がある。

小水疱は透明な液体で満たされた小型の水疱で,直径は10mm未満である。小水疱はヘルペス感染,急性アレルギー性接触皮膚炎,ある種の自己免疫性水疱性疾患(例,疱疹状皮膚炎)の特徴である。

水疱は透明な液体で満たされた水ぶくれで,直径は10mmを超える。水疱は熱傷,虫刺症,刺激性またはアレルギー性接触皮膚炎,薬疹で生じることがある。古典的な水疱性疾患には,尋常性天疱瘡および水疱性類天疱瘡がある。

膿疱は膿を含んだ隆起性病変である。膿疱はふつう細菌感染,毛包炎でみられるが,膿疱性乾癬を含め一部の炎症性疾患でも生じることがある。

じんま疹(膨疹またはみみずばれ)は局所的な浮腫で起こる隆起性病変が特徴である。膨疹は薬物過敏,虫刺症または虫咬症,自己免疫疾患でよくみられる症状であり,それほど多くはないが,温度,圧迫,日光といった物理的刺激でもみられる。

鱗屑は角層上皮が厚く堆積したもので,乾癬,脂漏性皮膚炎,真菌感染などの疾患でみられる。ばら色粃糠疹およびいかなるタイプでも慢性皮膚炎は,鱗屑を伴うことがある。

痂皮(かさぶた)は乾燥した血清,血液,または膿からなる。痂皮形成は炎症性または感染性皮膚疾患で生じることがある(例,膿痂疹)。

びらんは表皮の一部あるいは全層の欠損で生じた皮膚の創面である。びらんは外傷で生じることもあり,種々の炎症性または感染性皮膚疾患で生じることもある。表皮剥離は線状のびらんで,掻破したり,擦ったり,つまんだりして生じる。

潰瘍は,表皮および少なくとも真皮の一部が欠損した結果生じる。原因には,静脈うっ滞性皮膚炎,血管の障害を伴う物理的外傷および血管の障害を伴わない物理的外傷(褥瘡,末梢動脈疾患),感染症,血管炎がある。

点状出血は押しても消退しない点状の出血巣である;原因には,血小板異常(血小板減少症,血小板機能不全),血管炎,感染症(例,髄膜炎菌血症,ロッキー山脈紅斑熱,その他のリケッチア性疾患)がある。

紫斑は比較的大型の出血であり,触知できることもある。触知可能な紫斑は白血球破砕性血管炎の特徴的所見と考えられている。紫斑は凝固障害を示すこともある。大型の紫斑は斑状出血または皮下出血と呼ばれることがある。

萎縮は皮膚の菲薄化であり,乾燥して皺が寄った外観を呈し,シガレットペーパーに似ている。萎縮は,慢性的な日光暴露,加齢,ある種の炎症性および/または腫瘍性皮膚疾患で生じ,その例として皮膚T細胞リンパ腫およびエリテマトーデスがある。萎縮は,長期間強力なコルチコステロイドを外用しても生じることがある。

瘢痕は,皮膚が損傷を受けた後に線維化を生じて正常皮膚と置き換わった部分である。一部の瘢痕は肥厚,すなわち厚さを増して隆起する。ケロイドはもともとの創縁を越えて拡大する肥厚性瘢痕である。

毛細血管拡張は永続的に拡張した細い血管であり,ほとんどは特発性であるが,酒さ,全身性疾患(特に強皮症),遺伝性疾患(例,毛細血管拡張性失調症,遺伝性出血性毛細血管拡張症)で生じることがあり,また長期間フッ化コルチコステロイドの外用で治療した後に生じることもある。

二次的形態

形状とは単一病変の形および集合性病変の配列をいう。

線状病変は直線の形をとり,何らかの型の接触皮膚炎,線状表皮母斑,線状苔癬を疑わせる。

環状病変は中心治癒を伴う輪状の病変である;例としては,環状肉芽腫,ある種の薬疹,ある種の皮膚糸状菌感染症(たむし),二期梅毒がある。

貨幣状病変は円形または硬貨の形をしている;例として貨幣状湿疹がある。

標的状(ウシの眼状または虹彩状)病変は中央が濃色の輪状病変で,多形紅斑の古典的症状である。

蛇行性病変は線状,分枝状,曲線状の要素をもつ;例として,ある種の真菌および寄生虫感染症がある(例,皮膚幼虫移行症)。

網状病変はレース状または網目状のパターンを示す;例としては,大理石様皮膚および網状皮斑がある。

疱疹状とは,単純ヘルペス感染のように配列した集簇性の丘疹または小水疱を記載する用語である。帯状疱疹様とは帯状疱疹のようにデルマトーム(皮膚知覚帯)に沿った配列を示す集簇性病変を記載する用語である。

質感

皮膚病変の中には,目で見える特有の質感または触れて感じる特有の質感を持っているものがあり,このような質感から診断が示唆される。

疣状病変は表面が不規則でときにビロード状である;よくみられる例として,疣贅および脂漏性角化症がある。

苔癬化は,正常の皮膚紋理が増強した皮膚の肥厚である;この変化は繰り返し擦ることで生じる。

硬結すなわち皮膚深部の肥厚は,浮腫,炎症,浸潤で生じ,浸潤には悪性腫瘍の浸潤も含まれる。硬結のある皮膚は,触れると硬く抵抗性がある。硬結は,脂肪織炎,ある種の皮膚感染症,悪性腫瘍の皮膚転移といった皮膚疾患の特徴である。

臍窩状病変は中央が凹んでおり,通常ウイルス性の病変である;例としては,伝染性軟属腫および単純ヘルペスがある。

黄色腫のような黄色調ロウ様病変は脂質障害で生じることがある。

部位および分布

病変が単発性か多発性か;罹患しているのは特定の身体部位か(例,手掌または足底,頭皮,粘膜);配列がでたらめか,パターンがあるか,対称性か,非対象性か;病変があるのは露光部皮膚か被覆部皮膚かに注意することが重要である。

疾患に特徴的なパターンはほとんどないが,特定の疾患に合致するパターンはある。乾癬は頭皮,肘と膝の伸側,臍部,殿裂に生じることが多い。扁平苔癬は手首,前腕,外陰部,下腿に生じることが多い。白斑は四肢の遠位部および顔面に,斑状かつ孤立性に,または集簇して発症することがある。顔面の露光部皮膚,特に前額,鼻,耳介腔の病変は,慢性皮膚エリテマトーデスの特徴である。化膿性汗腺炎は,腋窩および鼠径部などアポクリン腺を高密度に含む皮膚に生じる。

色調

赤色の皮膚は,種々の炎症性または感染性疾患で生じる。皮膚腫瘍はしばしばピンク色または赤色をしている。ポートワイン血管腫のように表在性の血管病変は赤くみえる。

オレンジ色の皮膚が最もよくみられるのは高カロチン血症で,これは通常βカロチンを食事で過剰摂取した後に生じる良性のカロチン沈着状態である。

黄色は黄疸,眼瞼黄色腫および黄色腫,弾力線維性仮性黄色腫で典型的にみられる色調である。

緑色の手指爪は緑膿菌感染を示唆する。

紫色の皮膚は,皮膚の出血または血管炎で生じることがある。カポジ肉腫や血管腫のように血管性の病変または腫瘍は紫色にみえることがある。ライラック色の眼瞼すなわち“ヘリオトロープ”疹は皮膚筋炎の特徴である。

青色調,銀色調,灰色調の皮膚は,ミノサイクリン,アミオダロン,銀(銀皮症)などの薬物や金属が皮膚に沈着して生じることがある。虚血性の皮膚の色調は紫色から灰色である。真皮深部の母斑は青くみえる。

黒色の皮膚病変は,色素性母斑や黒色腫のように色素細胞性のことがある。黒色の痂皮は血管の梗塞で生じることがあり,その原因として考えられるものに,感染症(例,炭疽,リゾプスを含む血管侵入性真菌,髄膜炎菌血症),カルシフィラキシス,動脈不全,血管炎がある。

他の臨床的徴候

皮膚描記症は,皮膚を擦った後,皮膚を擦った通りに出現するじんま疹様の膨疹である。正常人の5%までがこの徴候を示すことがあり,これは物理的じんま疹の一型でもある。

ダリエ徴候は病変を擦ったときに,その部分が膨れる現象である。この徴候は色素性じんま疹すなわち肥満細胞症の患者で生じる。

ニコルスキー徴候は,中毒性表皮壊死剥離症およびある種の自己免疫性水疱性疾患の患者で皮膚を優しくずらすように圧迫するときに生じる表皮の剥離である。

アウスピッツ徴候は,乾癬の局面から鱗屑を剥がした後に点状の出血を生じる現象である。

ケブネル現象は,外傷(例,引っかく,擦る,損傷)を受けた部位に病変が生じる現象のことである。乾癬は高頻度にこの現象を示すが,扁平苔癬でもこの現象を示すことがある。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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