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尋常性天疱瘡はまれであるが,致死的なこともある自己免疫性疾患で,一見正常な皮膚および粘膜に表皮内水疱や広範なびらんを生じる特徴がある。診断は皮膚生検および血清抗体価で行う。治療にはコルチコステロイドを用いるが,免疫抑制薬を使用することもある。通常維持療法が必要である。
表皮のデスモゾーム成分に対する抗体が産生されるため表皮内で層の分離が生じ,その結果水疱が生じる。この抗体は,活動性の病変があれば,血清中にも皮膚にも存在する。重層扁平上皮のある部位なら,粘膜表面を含み,どこでも侵される。
尋常性天疱瘡は通常中年または高齢者に発症し,小児ではまれである。亜型の1つである腫瘍随伴性天疱瘡は,悪性疾患(主にリンパ細網系)をもつ高齢者に発症する;転帰は不良である。
症状と徴候
原発病変は様々な大きさの弛緩性水疱だが,しばしば皮膚や粘膜が剥離し,疼痛を伴うびらんを残す。典型的な場合,病変は初め口腔内に現れ,そこで破裂して,ある期間,慢性的でしばしば疼痛を伴うびらんとなり,その後皮膚病変が出現する;嚥下困難および摂食不良はよくみられる。病変は食道上部に生じることもある。典型的な場合,皮膚水疱は正常にみえる皮膚に発生し,破裂してびらん面と痂皮を残す。かゆみは通常欠如する。びらんした皮膚病変はしばしば感染を来す。身体の大部分が侵されれば,相当な体液および電解質の消失が生じる。
診断
水疱性疾患または慢性の粘膜潰瘍を見れば,尋常性天疱瘡を疑うべきである。本疾患は他の慢性の口腔潰瘍,水疱性皮膚疾患(例,落葉状天疱瘡,水疱性類天疱瘡,良性粘膜性[瘢痕性]類天疱瘡―結膜と強膜の疾患: 瘢痕性類天疱瘡を参照 ,薬疹,中毒性表皮壊死剥離症,多形紅斑,疱疹状皮膚炎,水疱性接触皮膚炎)と鑑別しなければならない。天疱瘡の診察では2つの身体徴候が役立つ:水疱に隣接する皮膚に側方から圧力を加えると表皮が剥離し(ニコルスキー徴候),水疱に圧力を加えると水疱は隣接する皮膚に拡大する。
患者の生検は,新鮮な病変の辺縁およびその近傍の正常皮膚から行うべきである;通常,光顕での観察および直接免疫蛍光抗体法で診断する。血清抗体(例,デスモグレイン3に対する抗体)は診断および落葉状天疱瘡との鑑別に使うことができる;抗体価の希釈倍数は病気の活動性を追跡するのに役立つ。
治療
たとえ治療を行っても尋常性天疱瘡は重篤な疾患で,治療に対する反応は一定せず予測不能で,経過は長く,実質上薬物による副作用を避けることはできない。この疾患の治療に関する専門的知識の豊富な皮膚科医に紹介することが勧められる。非常に軽症な例を除いて,初めは入院する必要がある。びらんを来した病変の清浄化とドレッシングは,2度熱傷の場合とほぼ同様である(例,逆隔離,ハイドロコロイドまたはスルファジアジン銀を用いたドレッシング―熱傷: 初期治療を参照 )。
薬物治療の目的は新しい病変の出現を止めることである。治療の主要な柱はコルチコステロイドの全身投与である。病変のほとんどない患者ではプレドニゾン20〜30mg,1日1回の内服に反応することもあるが,大部分の患者ではプレドニゾロン1mg/kg,1日1回の静脈内投与から始める必要がある。はるかに高用量で始める臨床医もおり,そのような高用量で始めれば初めの反応は若干促進されるが,転帰を改善するとは思えない。5〜7日経過しても病変の新生が続くようなら,投与量を増加する。
メトトレキサート,シクロホスファミド,アザチオプリン,金製剤,ミコフェノール酸モフェチル,シクロスポリンなどの免疫抑制薬を用いればコルチコステロイドの必要性を下げることができ,コルチコステロイド長期使用の悪影響を最小限に抑えることができる。抗体価を減少させる血漿分離交換法も効果がある。
7〜10日間病変の新生がなければ,コルチコステロイドの用量を1カ月におよそ10mg/日ずつ減量していくべきである(用量が一旦20mg/日になれば,減量はさらにゆっくりと行う)。再燃すれば治療開始時の用量に戻る必要がある。1年経過して患者の状態が安定していれば治療の中止を試みてもよいが,十分な観察が必要である。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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