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魚鱗癬は皮膚の鱗屑および落屑で,軽度であるが不快な乾燥があるもの(乾皮症)から重症で醜状を来す疾患(遺伝性魚鱗癬)まで程度は様々である。魚鱗癬は全身疾患の徴候のこともある。診断は臨床像で行う。皮膚軟化剤で治療するが,ときにレチノイドの内服も用いられる。
乾皮症:
乾皮症(乾燥皮膚)は魚鱗癬の最も軽症な型で,遺伝せず,全身的な異常も伴わない。乾皮症は通常中年以降の患者の下腿に出現し,寒い季節や入浴回数の過剰な人に最も好発する。軽度から中等度のかゆみがあったり,洗剤などの刺激物による皮膚炎を伴っていることがある。
遺伝性魚鱗癬:
遺伝性魚鱗癬は,皮膚表面に鱗屑が過度に蓄積するという特徴があり,臨床的ならびに遺伝的事項を考慮した基準で分類される(角化障害: 主な遺伝性魚鱗癬の臨床的および遺伝的特徴表 1: を参照)。魚鱗癬の一部は,他の異常を伴わずに魚鱗癬のみを生じる (例,尋常性魚鱗癬,伴性遺伝性魚鱗癬,葉状魚鱗癬,表皮融解性角質増殖)。多臓器を侵す症候群の部分症状としての魚鱗癬もある。例えば,レフサム病(先天性代謝障害: 古典的レフサム病を参照 )およびシェーグレン-ラルソン症候群(脂肪アルデヒド脱水素酵素の欠損で生じる遺伝性知能障害および痙性麻痺)は,皮膚および皮膚以外の臓器を侵す常染色体性劣性遺伝の疾患である。皮膚科医は診断および管理を助けるべきで,遺伝医学の専門家は遺伝相談を行うべきである。
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表 1
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主な遺伝性魚鱗癬の臨床的および遺伝的特徴
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疾患
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遺伝の型/有病率
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開始
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鱗屑の型
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分布
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その他の臨床所見
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尋常性魚鱗癬
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常染色体優性
1:300
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小児期
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微細
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通常背部および伸側面に生じるが屈側面には生じない;通常手掌および足底の紋理が多い
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アトピー;毛孔性角化症
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伴性遺伝性魚鱗癬
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X染色体に連鎖
1:6000 (男性)
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出生時または乳幼児期
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大型,濃色(微細なこともある)
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頸部および体幹に顕著;手掌および足底は正常
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角膜混濁,停留睾丸
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葉状魚鱗癬(非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症;コロジオン児)
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常染色体劣性
1:300,000
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出生時
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大型,粗い
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身体の大部分;手掌および足底は厚い
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眼瞼外反
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表皮融解性角質増殖(水疱性先天性魚鱗癬様紅皮症)
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常染色体優性
1:300,000
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出生時
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厚い,疣状
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身体の大部分;屈側部の皺では特に疣状
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水疱
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後天性魚鱗癬:
魚鱗癬は全身疾患(例,ハンセン病,甲状腺機能低下症,リンパ腫,AIDS)の初期症状のことがある。魚鱗癬を生じる薬剤もある(例,ニコチンアミド,トリパラノール,ブチロフェノン)。乾燥した鱗屑は,微細で体幹と下肢に限局していることもあれば,厚く広範囲にわたることもある。魚鱗癬の皮膚を生検しても通常全身疾患を診断する助けにはならない;しかし例外もあって,その最も顕著な例はサルコイドーシスであり,この場合厚い鱗屑が下肢に現れ,通常,生検で典型的な肉芽腫像を得る。
治療
どの魚鱗癬でも,入浴またはシャワーを最小限にとどめることが有用である。セッケンは,間擦部位の使用のみにとどめるべきである。吸収と毒性が増加するので,ヘキサクロロフェン製剤は使用すべきでない。皮膚軟化剤―ワセリン単独,鉱物油,尿素またはα-ヒドロキシ酸(例,乳酸,グリコール酸,ピルビン酸)を含むローションが望ましい―を1日2回,特に入浴後まだ皮膚が湿っている間に塗布する。タオルでポンポンと叩くようにして,余分な皮膚軟化剤を除く。基礎に全身疾患があって起きる魚鱗癬は,プロピレングリコールで滑らかにしてやると,やや改善することがある。しかし,最も改善するのは基礎疾患が治癒した時である。
遺伝性魚鱗癬の鱗屑を除去する目的で,患者は,皮膚に水分を補給した後で,50%プロピレングリコール水溶液を含む製剤を密封状態で(例,薄いラップかビニール袋を使用)毎晩使用してもよい。小児では,プロピレングリコール製剤を1日2回外用し,夜間の密封療法は行わない。鱗屑が減少すれば,外用頻度を減らす必要がある。他の有用な薬剤として,6%サリチル酸ゲル,親水ワセリンと水(等量混合),コールドクリームとα-ヒドロキシ酸を様々な基剤に混ぜたもの等がある。カルシポトリオールクリームの外用が用いられ,好結果が得られている;しかし,このビタミンDの誘導体は,広範囲に用いると,特に年少児で,高カルシウム血症を来す可能性がある。
表皮融解性角質増殖(水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症)の患者では,細菌感染が加わって疼痛と悪臭を伴う膿疱が形成されるのを防ぐ目的で,間擦部に厚い鱗屑が存在する限り,長期にわたってクロキサシリン250mg,経口,1日3〜4回またはエリスロマイシン250mg,経口,1日3〜4回を投与する必要があるかもしれない。クロルヘキシジン含有セッケンを定期的に使用しても細菌を減少させるが,皮膚は乾燥しがちになる。
合成レチノイドの内服はほとんどの魚鱗癬に有効である。アシトレチン(乾癬および鱗屑を伴う疾患: 全身療法を参照 )は,伴性遺伝性魚鱗癬および表皮融解性角質増殖に有効である。葉状魚鱗癬では,0.1%トレチノインクリームまたはイソトレチノインの内服が効果的なこともある。最少有効量を用いるべきである。イソトレチノインの内服で長期に(1年)治療すると,一部の患者で外骨腫を来し,それ以外にも長期使用による副作用の生じることがある。(注意:レチノイドの内服は催奇形性のため妊娠時は禁忌であり,アシトレチンは催奇形性があり半減期が長いため,妊娠の可能性がある女性での使用を避けるべきである。)
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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