メルクマニュアル18版 日本語版
検索のヒント
ABCDEFGHI
JKLMNOPQR
STUVWXYZ
記号

セクション

トピック

皮膚膿瘍

皮膚膿瘍は皮膚に生じた限局性の膿貯留である。症状および徴候は,自発痛および圧痛と波動のある腫脹である。診察を行えば,診断は通常明らかである。治療は切開排膿である。

典型的な場合,皮膚膿瘍の原因菌は罹患部の皮膚に固有の細菌である。躯幹,四肢,腋窩,頭頸部の膿瘍の場合,最も一般的な原因菌は黄色ブドウ球菌 およびレンサ球菌である。会陰部(すなわち鼠径部,腟,殿部,直腸周囲)の膿瘍は糞便中に存在する菌を含み,それらの菌は嫌気性菌であることが普通だが,好気性菌と嫌気性菌が混合している場合もある。せつおよび癰は毛包を基盤にした皮膚膿瘍で,種々の特徴がある(細菌性皮膚感染症: せつおよび癰(よう)を参照 )。

皮膚膿瘍は,細菌が過増殖している患者,外傷後の患者(特に異物が存在するとき),免疫不全または循環不全のある患者に生じる傾向がある。

症状,徴候,診断

皮膚膿瘍は自発痛および圧痛があり,硬結を触れ,ときに発赤がある。皮膚膿瘍の大きさは様々で,典型的な場合は1〜3cmであるが,それよりはるかに大きいこともある。初めのうち腫脹は硬い;後に膿瘍が“膿点”を形成すると,膿瘍を覆っている皮膚は菲薄化し,波動を触れる。その後,膿瘍は自然に排膿することがある。随伴症状は様々で,局所性蜂巣炎,リンパ管炎,所属リンパ節腫脹,発熱,白血球増多などがある。

診察を行えば,診断は通常明らかである。免疫不全患者の場合を除き,グラム染色および培養は通常不要である。

単純な皮膚膿瘍に似た病態に,化膿性汗腺炎(細菌性皮膚感染症: 化膿性汗腺炎を参照 )および破裂した表皮嚢腫がある。表皮嚢腫(しばしば “脂腺嚢腫”と呼ばれるが不適切な用語である)が感染を起こすことはまれである;しかし,破裂すればケラチンが真皮に放出され,激しい炎症反応を惹起して,臨床的に感染に似ることがある。このような破裂した嚢腫を培養しても,細菌が見つかることはまれである。好ましい治療法は切開排膿である;抗生物質は炎症の軽減に有用なこともあるが,他に全身症状のない患者では,必ずしも必要というわけではない。会陰部の膿瘍は,さらに深部にある直腸周囲膿瘍が皮膚に現れた状態,またはクローン病が瘻孔を経由して排膿している状態かもしれない。このような他の疾患は,通常,病歴および直腸診で確認される。

治療

小さな膿瘍の一部は治療をしなくても消退し,膿点を生じて排膿する。温湿布はこの過程を促進するのに役立つ。自発痛,圧痛,腫脹が強い場合は切開排膿の適応である;波動が生じるまで待つ必要はない。局所麻酔には,無菌状態でリドカインの注射または冷凍スプレーの噴霧を行う。大きくて極度に疼痛の強い膿瘍がある患者では,排膿中に鎮静薬の静脈内投与や静脈麻酔を行えば有用なことがある。メスの刃先で1カ所を穿刺すれば,しばしば膿瘍を開放するのに十分である。排膿後は,膿瘍腔を指で鈍的に探るか小房形成を除くために掻爬し,0.9%生理食塩水で洗浄する。膿瘍腔にガーゼ芯をゆるく詰めて,24〜48時間後にそれを除去するという方法をとる臨床医もいる。局所を温め,挙上すると,炎症の消退が早まる。患者に全身性感染の徴候があったり,免疫不全があったり,患者が海綿静脈洞に還流する領域の顔面膿瘍に罹患していない限り,抗生物質は不要である。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

ページの先頭へ

前へ: 蜂巣炎

次へ: 丹毒

イラスト
個人情報の取扱いご利用条件