メルクマニュアル18版 日本語版
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疥癬

疥癬はダニの仲間であるヒゼンダニの皮膚感染である。疥癬は激烈なそう痒を伴う病変を引き起こし,指趾間,手首,ウエストライン,性器に紅色丘疹および疥癬トンネルを生じる。診断は,診察および皮膚擦過標本に基づいて行う。治療には殺疥癬薬の外用を用いるが,まれにイベルメクチンの内服も使用する。

病因

疥癬はダニの仲間であるSarcoptes scabiei var. hominisで引き起こされるが,このダニはヒトにのみ棲息できる寄生虫であり,角層内にトンネルを掘って住んでいる。疥癬は物理的接触によって容易にヒトからヒトへ感染する;おそらく動物および感染媒介物を介する感染もある。最大の危険因子は込み合った環境である(学校,避難所,兵舎,一部の家屋など);劣悪な衛生環境とは明瞭な関連がない。理由は不明であるが,痂皮性乾癬(後述参照)は,免疫抑制状態の患者(例,HIV感染患者,血液系悪性疾患の患者,長期にコルチコステロイドなどの免疫抑制薬を使用している患者),高度の身体障害または精神遅滞のある患者,オーストラリア先住民で好発する。感染は世界中でみられる。暑い気候に住む患者では,小さな紅色丘疹を生じ,疥癬トンネルはまれである。重症度は患者の免疫状態に関連し,住んでいる場所とは関連しない。

症状,徴候,診断

中心となる症状は激烈なそう痒で,典型的な場合は夜間に悪化するが,夜間に悪化するという現象は疥癬に特異的ではない。

古典的疥癬: 指間部,手首および肘の屈曲面,腋窩のひだ,ベルトラインに沿った部位,殿部下方に,まず紅色丘疹が現れる。丘疹は,乳房および陰茎を含め,体のどの部位にも拡大できる。成人では,顔面が罹患することはない。疥癬トンネルは疥癬に特有で,微細な波状で,軽度に鱗屑を伴った細い線として認められ,長さは数mmから1cmである。片方の端に,しばしば小さな黒い点―ダニ―を認める。

古典的疥癬の徴候が非定型的な場合もある。黒人および色の黒い人では,疥癬の症状が肉芽腫性結節のこともある。乳幼児では,手掌,足底,顔面,頭皮,特に耳後部のひだが侵されることもある。高齢患者では,疥癬がわずかな皮膚所見しかない激烈なそう痒を引き起こすことがあり,この場合は診断が困難である。免疫不全患者では,そう痒を伴わない広範な鱗屑を生じることがある(特に,成人では手掌および足底,小児では頭皮)。

他の病型: 痂皮性疥癬(ノルウェー疥癬)は宿主の免疫反応が障害されているために生じ,ダニが増殖して膨大な数になる。結節性疥癬は乳幼児および年少児に好発し,残存しているダニに対する過敏性が原因かもしれない。水疱性疥癬は小児に好発する。高齢者で水疱性疥癬が生じれば水疱性類天疱瘡に似ることがあり,診断が遅れる。頭皮の疥癬は乳幼児および免疫不全宿主に生じ,脂漏性皮膚炎に似ることがある。修飾された不顕性の疥癬は,コルチコステロイド外用の結果,非定型病変が広範に広がったものである。

疥癬の診断は,身体所見,特に疥癬トンネルがあれば疑い,疥癬トンネルからの擦過物を顕微鏡で観察してダニ,虫卵,糞粒を認めることで確認する。擦過標本は,グリセロール,ミネラルオイル,油浸オイルを疥癬トンネルまたは丘疹に垂らし(擦過中にダニおよび試料が拡散するのを防ぐため),メスの刃で表層を除去して入手する。試料をスライドガラスに置き,カバーグラスで覆う;水酸化カリウムは,糞粒を溶かすので避けるべきである。

治療

主たる治療は殺疥癬薬の外用または内服である(睡眠障害および覚醒障害: 睡眠を改善する方法表 3: 表を参照)。ペルメトリンははファーストチョイスの外用薬である。

年長児および成人では,ペルメトリンまたはリンデンを首から下の全身に塗布し,8〜14時間後に洗い流す。治療は7日後に繰り返すべきである。

乳幼児および年少児ではペルメトリンを頭部および頸部に塗布すべきであるが,眼囲および口囲は避ける。間擦部位,手指爪,足趾爪,臍部では特別に注意を払うべきである。乳幼児では手袋を着用させれば,ペルメトリンが口に入るのを防げる。リンデンは神経毒性を示す可能性があるので,2歳未満の小児およびてんかんをもつ患者では勧められない。

沈降硫黄6〜10%を含有するワセリンを3日連続で24時間塗布する方法は安全で効果的である。

外用療法に反応しない患者,外用療法を守れない患者,免疫不全があってノルウェー疥癬になっている患者ではイベルメクチンが適応である。イベルメクチンは,老人ホームなど濃厚な接触が起こる場所での流行に用いられ,よい成績をおさめている。濃厚な接触も改善されるべきで,個人の持ち物(例,タオル,衣服,寝具)は洗い,少なくとも3日間隔離すべきである。

そう痒はコルチコステロイド軟膏および/または抗ヒスタミン薬の内服(例,ヒドロキシジン25mg,経口,1日4回)で治療できる。滲出液があり黄色の痂皮をつけた病変をもつ患者では二次感染を考えるべきであり,ブドウ球菌およびレンサ球菌に有効である適切な抗生物質の全身投与または局所投与で治療する。

ダニが死んでも症状および病変は消退までに最長3週間かかるので,ダニが抵抗性をもっているための治療の失敗,薬剤の浸透不良,不完全な塗布が行われた治療,結節性疥癬を認識するのは困難である。皮膚擦過標本により疥癬の持続感染を診断できる。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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