メルクマニュアル18版 日本語版
検索のヒント
ABCDEFGHI
JKLMNOPQR
STUVWXYZ
記号

セクション

トピック

疣贅

疣贅(尋常性疣贅)はよくみられる良性の表皮病変で,ヒト-パピローマウイルス感染と関連がある。疣贅は全身のどこにでも生じ,形態も様々である。診断は診察で行う。疣贅は通常自然治癒するが,切除,焼灼,凍結療法,液体窒素,外用薬または注射薬で治療してもよい。

疣贅はほとんど誰にでも,またどんな年齢にもみられるが,小児に最も多く,高齢者ではあまり多くない。疣贅はヒト-パピローマウイルス(HPV)感染が原因である;少なくとも70種類の型のHPVが皮膚病変と関連している。外傷および浸軟があれば,表皮への最初の接種が容易となる。その後は自家接種で拡大すると思われる。局所および全身の免疫要因が拡大に影響するようである;免疫抑制患者(特にHIV感染患者および腎移植患者)では全身に病変の出現するリスクが特に高く,治療は困難である。液性免疫はHPVに感染しにくくするが,細胞性免疫は確立された感染が消退するのを助ける。

症状と徴候

疣贅は臨床像および発症部位によって命名される;HPVの型が異なれば臨床型も異なる。あまりみられない臨床像をウイルス性皮膚疾患: 疣贅の亜型および臨床的関連事項表 1: 表に列挙する。

表 1

疣贅の亜型および臨床的関連事項

臨床型

ヒト-パピローマウイルス

臨床的関連事項

ボーエン様丘疹症

16, 18, 33, 39

女性の外陰部および陰茎に生じる扁平で褐色の疣状丘疹(良性);本症に罹患している女性および本症患者と性交渉をもつ女性では,子宮頸癌が発症しないか綿密にフォローすべきである

ブシュケ-ローウェンシュタイン腫瘍

6, 11

大型のカリフラワー様腫瘍

肉屋の疣贅(食肉業者の疣贅)(Butcher's wart [meat handler's wart])

7

普通の疣贅,通常は良性

皮膚有棘細胞癌

38, 41, 48

早期病変は疣贅に似ることがある

疣贅状表皮発育異常症

1-5, 7-9, 10, 12, 14, 15, 17-20, 23-25, 36, 47, 50

有棘細胞癌などの皮膚悪性腫瘍を生じることがある

ケラトアカントーマ

77

非常に分化した有棘細胞癌と考えられている

口腔局所性上皮過形成症(ヘック病)

13, 32

良性

腎移植患者の疣贅

75-77

しばしば多発して治療が困難

普通の疣贅 (尋常性疣贅)はHPV1型,2型,4型,27型,29型で生じる。一般的に尋常性疣贅は症状がないが,ときに軽度の疼痛を来すことがあり,特に足底のような荷重面に存在するものは痛い。尋常性疣贅は境界明瞭で,表面は粗造であり,円形または不整形で固く,うすい灰色,黄色,褐色,灰黒色の結節で,直径は2〜10mmである。尋常性疣贅は外傷を受けやすい部位(例,手指,肘,膝,顔面)に最も好発するが,他の部位に拡大することもある。珍しい形状の亜型(例,有茎性またはカリフラワー様)は,頭部および頸部,特に頭皮および鬚毛部で最も多い。

糸状疣贅は,通常眼瞼,顔面,頸部,口唇でみられる長細い葉状の腫瘍である。糸状疣贅も通常症状がない。形態学的に特徴のあるこの尋常性疣贅の亜型は,良性で,治療も容易である。

扁平疣贅はHPV3型,10型,28型,49型で生じる,平滑で表面が平坦な黄褐色の丘疹であり,顔面および掻破痕に沿って生じることが最も多い;扁平疣贅は小児および若年成人に好発し,自家接種で広がる。扁平疣贅は症状がないが,治療は困難なことがある。

手掌疣贅および足底疣贅はHPV1型で生じる手掌および足底の疣贅であり,圧力を受けて扁平になり,角化した上皮で囲まれている。手掌疣贅や足底疣贅はしばしば圧痛を伴い,歩いたり立ったりする動作を不快に感じることがある。手掌疣贅および足底疣贅は表面を薄く切り取ったときに点状に出血する傾向があるので,鶏眼および胼胝と鑑別できる。従来,疣贅は“側方から”つまむと痛く,胼胝は上から押すと痛いといわれている;この徴候は,実際には,あてにならない。

モザイク疣贅は,小さい足底疣贅が密にかつ無数に融合して形成された局面である。他の足底疣贅と同様,モザイク疣贅もしばしば圧痛がある。

爪囲疣贅は,肥厚して亀裂のあるカリフラワー様の皮膚として爪甲周囲に出現する。患者は爪上皮を失うことが多く,爪囲炎に罹患しやすい。爪囲疣贅は自分の爪を噛む患者に好発する。

陰部疣贅は,会陰,直腸周囲,陰唇,陰茎に生じる散在性の丘疹で,平坦なものから広基性のものまで様々であり,また表面も平滑なものからビロード状のものまで様々である。高リスク型HPV (16型および18型が最も有名)の感染は子宮頸癌の主因である。陰部疣贅は一般に症状がない。

診断

診断は臨床像に基づいて行う;生検が必要なことはまれである。疣贅の主要な徴候は表面に皮膚紋理を欠くということ,および点状の黒点(血栓を生じた毛細血管)が存在するか,削れば出血するということである。鑑別診断には,ウオノメ(鶏眼),扁平苔癬,脂漏性角化症,有茎性軟腫,有棘細胞癌がある。DNAのタイピングは一部の医療施設で施行可能であるが,一般には行う必要がない。

予後と治療

多くの疣贅は自然に消退する;消退しない疣贅は何年も持続し,治療を行っても,同一部位または異なる部位に再発する。再発に影響する因子は,局所要因に加え,患者の全般的な免疫状態に関連があるようである。局所に外傷を受けやすい患者(例,運動選手,機械工,肉屋)は,難治性で再発性のHPV感染を起こすことがある。陰部のHPV感染は悪性化の恐れがあるが,(免疫抑制患者を除いて)一般的に,HPVが惹起した皮膚の疣贅の悪性化は今までのところ認められていない。

治療の目的はHPVに対する免疫反応を引き出すことである。ほとんどの例で,このことは刺激物質(例,サリチル酸[SCA],トリクロロ酢酸,5-フルオロウラシル,ポドフィルム樹脂,トレチノイン,カンタリジン)を塗布することにより達成される。

これらの化合物は互いに併用して用いてもよいし,破壊的な方法(例,凍結外科療法,電気焼灼,掻爬,切除,レーザー)と併用してもよい。ブレオマイシンやインターフェロン-α2bを用いれば直接抗ウイルス効果が得られるが,これらの治療は最も難治性の疣贅用に残しておく。5%イミキモドクリームを外用すれば,皮膚細胞が局所的に抗ウイルス性のサイトカインを産生する。HPVワクチンであるシドフォビルの外用および接触免疫療法(例,スクアリン酸ジブチルエステルおよびカンジダ抗原)もイボの治療に用いられてきた。内服薬による治療には,シメチジン,イソトレチノイン,経口用亜鉛がある。治療が成功する可能性を高めるため,ほとんどの例で治療法は併用すべきである。

尋常性疣贅: 免疫が正常の宿主では,尋常性疣贅は通常2年以内に消退するが,一部の疣贅は何年も持続する。多くの治療法がある。破壊的方法には,電気焼灼,液体窒素を用いた凍結外科療法,SCA製剤がある。これらのうちどの方法を用いるかは,病変の部位および重症度により異なる。例えば,17%液体SCAは指に用いることができ,40%SCA絆創膏は足底に用いることができる。

最も普通に使われる外用薬はSCAである。SCAは液体,絆創膏,SCA含有テープの形で使用できる。患者は夜間にSCAをイボに外用し,部位に応じて8〜48時間放置する。

カンタリジンは単独で用いてもよいし,コロジオンの基剤にカンタリジン(1%),SCA(3%),ポドフィルム(2%)を配合して用いてもよい。カンタリジン単独の場合は6時間後にセッケンと水で除去する;カンタリジンとSCAまたはカンタリジンとポドフィルムを併用した場合は2時間後に除去する。これらの薬剤が皮膚に接触している時間が長いほど,水疱反応は激しくなる。

凍結外科療法は疼痛があるが,極めて効果的である。電気乾固法と掻爬および/またはレーザー手術は効果的で,孤立性病変に適応であるが,瘢痕を残すことがある。1年以内に約35%の患者で再発したり新しい疣贅が出現したりするので,瘢痕を残す治療法はできるだけ避けるべきである。

糸状疣贅: 治療は,メス,剪刀,掻爬,液体窒素による除去である。液体窒素による治療は,イボ周囲2mmの皮膚が白くなるまで行う。皮膚が解凍するときに皮膚が障害されるが,これには通常10〜20秒かかる。液体窒素による治療後24〜48時間で水疱の生じることがある。液体窒素による治療後は高頻度に色素減少が生じるので,顔面や頸部など美容的に問題となる部位を治療するときは注意しなければならない。色の黒い患者では,永久的な色素脱失を来すことがある。

扁平疣贅: 治療はトレチノイン(0.05%レチノイン酸クリーム)を毎日塗布することである。剥離がイボの除去に不十分な場合は,別の刺激物質(例,5%過酸化ベンゾイル)または5%SCAクリームをトレチノインの塗布前または塗布後に外用してもよい。5%イミキモドクリームは単独で用いてもよいし,外用薬または破壊的方法と併用してもよい。5-フルオロウラシル(1%または5%クリーム)の外用を用いてもよい。病変に炎症が自然に生じた後,自然消退することがある;しかし,扁平疣贅は難治性のことが多い。

足底疣贅: 治療は40%SCA絆創膏を数日間貼りつけて,強力に浸軟させることである。湿潤して柔軟な間に疣贅を削り取り,凍結または腐食薬(例,30〜70%トリクロロ酢酸)を用いて破壊する。他の破壊的治療(例,CO2レーザー,パルス発振ダイレーザー,種々の酸)もしばしば効果的である。ダクトテープ(水道管用のテープ)を6日間隔で貼り,浸軟した組織にデブリドマンを行っても効果がある。

爪囲疣贅: 液体窒素に5%イミキモドクリーム,トレチノイン,SCAのいずれかを併用して治療すれば効果的である。

難治性の疣贅: 難治性の疣贅には治療法がいくつかあるが,長期的な有用性とリスクが十分に分っているわけではない。0.1%ブレオマイシン生食液を病変内に少量注射すると,しばしば頑固な足底疣贅や爪囲疣贅が治癒する。しかし,注射を行った指趾にレイノー現象または血管傷害の生じることがあり(特に指趾の基部に注射した場合),注意が必要である。インターフェロン,特にインターフェロン-αを病変内に注射(3回/週,3〜5週間)または筋注しても,難治性の皮膚の疣贅や陰部の疣贅が消失する。イソトレチノインまたはアシトレチンの内服で,ときに広範な疣贅が改善したり消失したりする。シメチジンを最大800mgの用量で,経口,1日3回投与する方法が以前から用いられており有効であるが,他の治療法と併用すればさらに効果的である。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

ページの先頭へ

前へ: 伝染性軟属腫

次へ: 人畜共通感染病

イラスト
個人情報の取扱いご利用条件