メルクマニュアル18版 日本語版
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慢性疾患に伴う貧血(鉄再利用障害性貧血)

慢性疾患に伴う貧血は,しばしば鉄欠乏と合併する多因子性貧血である。診断には一般的に慢性の感染,炎症,または癌の存在;小球性またはかろうじて正球性の貧血;および鉄欠乏性貧血に典型的な値と鉄芽球性貧血に典型的な値の間に位置する血清トランスフェリン受容体および血清フェリチンの値が必要である。治療は基礎疾患を回復させることであり,疾患が不可逆性であれば,エリスロポエチンの投与である。

慢性疾患に伴う貧血は,世界中で2番目にありふれた貧血である。早期には赤血球は正球性であるが,時間が経つにつれて小球性になる。主要な問題点は,骨髄の赤血球造血系が貧血に応じて十分拡大できないということである。

病因と病態生理

この種の貧血は以前は慢性疾患の一部分として生じると考えられ,その慢性疾患は感染症,炎症性疾患(特に関節リウマチ)または癌が最も高頻度であるとされていた。しかしながら,同じプロセスが実質的にはどのような感染症や炎症においても急性に始まるようである。以下の3つの病態生理学的機序が同定されている:

  • 癌または慢性肉芽腫性感染症患者において機序は不明であるが,赤血球寿命のわずかな短縮が認められる
  • エリスロポエチン(EPO)産生およびEPOへの骨髄反応の両者が減少するため,赤血球産生が障害される
  • 細胞内鉄代謝が損なわれる。

網内系細胞が老赤血球由来の鉄を保持して,ヘモグロビン合成のための鉄利用を不可能にしている。そのため赤血球産生増加による貧血の代償ができない。感染症,炎症状態,癌の患者にみられるマクロファージ由来のサイトカイン(例,IL-1β,腫瘍壊死因子α,インターフェロンβ)が,EPO産生減少および鉄代謝障害を引き起こすか,またはその一因となる。

症状,徴候,診断

臨床所見は通常,基礎疾患(感染症,炎症または癌)によるものである。慢性疾患に伴う貧血は,慢性の感染症,炎症または癌を伴う小球性またはかろうじて正球性の貧血患者で疑われる。慢性疾患に伴う貧血が疑われる場合,血清鉄,トランスフェリン,トランスフェリン受容体,および血清フェリチンが測定される。貧血の一因となる付加的機序がなければ,ヘモグロビン濃度は通常8g/dLを超える(赤血球産生低下による貧血: 赤血球産生低下による小球性貧血の鑑別診断表 1: 表も参照)。慢性疾患に伴う貧血に加えて鉄欠乏が認められる場合,一般に血清フェリチンは100ng/mL未満にとどまるので,感染症,炎症または癌の存在下でフェリチン値が100ng/mLをわずかに下回る場合は,慢性疾患に伴う貧血に鉄欠乏が合併していることが示唆される。しかしながら,血清フェリチンは急性期反応物として誤って上昇することがあるので,血清フェリチンが100ng/mLを上回る場合には,血清トランスフェリン受容体の方が鉄欠乏と慢性疾患に伴う貧血をよりよく鑑別できることがある。

治療

基礎疾患を治療することが最も重要である。貧血は一般に軽度であるので,輸血は通常必要とされず,遺伝子組換えEPOで十分である。EPOの産生減少とEPOに対する骨髄の不応性がともに起こるので,EPOの用量は150〜300単位/kg,皮下注,3回/週の投与が必要となりうる。2週間の治療後,ヘモグロビン量が0.5g/dLを超えて増加し,血清フェリチンが400ng/mL未満であれば反応がよいと考えられる。十分なEPO反応を確保するには鉄補充が必要である(赤血球産生低下による貧血: 治療を参照 )。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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