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自己免疫性溶血性貧血は,37℃以上(温式抗体溶血性貧血)または37℃未満(寒冷凝集素症)の温度で赤血球と反応する自己抗体により引き起こされる。溶血は通常血管外性である。直接抗グロブリン(クームス)試験により診断が確定され,原因が示唆される。治療は原因によって異なり,コルチコステロイド,脾摘出,静注免疫グロブリン,免疫抑制薬,輸血の回避,薬物の中止などがある。
病因と病態生理
温式抗体溶血性貧血は最も一般的な自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の型で,女性により一般的である。温式抗体溶血性貧血における自己抗体は一般に,37℃以上の温度で反応する。自己抗体は自然発生的に,または特定の疾患(SLE,リンパ腫,慢性リンパ性白血病)と関連して生じる。複数の薬物(例,αメチルドパ,レボドパ―
溶血による貧血: 温式抗体溶血性貧血を引き起こしうる薬物表 3: 参照)がRh抗原に対する自己抗体の産生を刺激する(AIHAのαメチルドパ型)。複数の薬物が一過性のハプテン機序の一部として抗生物質-赤血球膜複合体に対する自己抗体の産生を刺激する;ハプテンは,安定していることもあれば(例,多量のペニシリン,セファロスポリン系),不安定なこともある(例,キニジン,スルホンアミド系)。温式抗体溶血性貧血では,主に脾臓で溶血が生じる。溶血はしばしば重度であり,致死的になることもある。温式抗体溶血性貧血におけるほとんどの自己抗体はIgGである。ほとんどが汎凝集素であり,特異性は限定的である。
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表 3
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温式抗体溶血性貧血を引き起こしうる薬物
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Rh抗原に対する
自己抗体
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安定なハプテン
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不安定なハプテン
または機序不明
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セファロスポリン系
ジクロフェナク
イブプロフェン
インターフェロンα
レボドパ
メフェナム酸
メチルドパ
プロカインアミド
テニポシド
チオリダジン
トルメチン
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セファロスポリン系
フルオレセインナトリウム
ペニシリン系
テトラサイクリン
トルブタミド
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アムホテリシンB
アンタゾリン
セファロスポリン系
クロルプロパミド
ジクロフェナク
ジエチルスチルベストロール
ドキセピン
ヒドロクロロチアジド
イソニアジド
p-アミノサリチル酸
プロベネシド
キニジン
キニン
リファンピン
スルホンアミド系
チオペンタール
トルメチン
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寒冷凝集素症(冷式抗体疾患)は,37℃未満で反応する自己抗体によって引き起こされる。この疾患は時に感染(特にマイコプラズマ性肺炎または伝染性単核球症)とリンパ増殖性状態により起こる;症例の約2分の1は特発性で,これは高齢者に一般的な型である。感染は急性疾患の原因となる傾向があり,一方,特発性疾患は慢性の傾向がある。溶血は大部分が肝臓の血管外単核食細胞系において生じる。貧血は通常は軽度である(ヘモグロビンは7.5g/dLを超える)。寒冷凝集素症における自己抗体は通常IgMである。これらの抗体が赤血球と反応する温度が高ければ高いほど(すなわち正常体温に近づくほど),溶血は大きくなる。
発作性寒冷血色素尿症(PCH;ドナート-ランドシュタイナー症候群)は寒冷凝集素症のまれなタイプの疾患である。溶血は寒冷への暴露の後,暴露が局所的(例,冷たい水を飲む,冷たい水で手を洗う)であっても生じる。IgG自己溶血素が,低温で赤血球と結合し,復温後に血管内溶血を起こす。非特異的なウイルス性疾患の後や,他の点では健康な患者に最もしばしば起こるが,先天性または後天性梅毒患者の一部にも起こる。貧血の重症度と発生速度は多様であり,劇症型の場合もある。
症状と徴候
温式抗体溶血性貧血の症状は,貧血に起因する傾向がある。疾患が重度の場合,発熱,胸痛,失神または心不全が起こりうる。軽度の脾腫が典型的である。
寒冷凝集素症は急性または慢性の溶血性貧血として現れる。他の寒冷症の症状と徴候が現れることもある(例,先端チアノーゼ,レイノー現象,寒冷に伴う閉塞性変化)。PCHの症状には,背中や下肢の重度の痛み,頭痛,嘔吐,下痢および暗褐色尿がある;肝脾腫がみられる場合もある。
診断
AIHAは,溶血性貧血患者において特に症状が重度であるか,またはその他の示唆的な症状が存在する場合に疑われる。通常の臨床検査は一般的に,貧血が急性発症で重度であるかPCHが原因である場合を除いて,血管外溶血を示唆する(例,ヘモジデリン尿がみられない;ハプトグロビン値が正常に近い)。球状赤血球症およびMCHC高値が典型的である。
AIHAは,直接抗グロブリン(クームス)試験を使用して自己抗体が発見されることで診断される。抗グロブリン血清を患者の洗浄赤血球に加えると,凝集反応によって赤血球と結合した免疫グロブリン(一般にIgG)やC3の存在が示される。AIHA検査の感度は98%以下である;偽陰性は抗体の密度が非常に低いか,自己抗体がIgAかIgMである場合に起こる。直接抗グロブリン試験の強さは一般に赤血球に結合したIgGやC3の分子数に相関し,概ね,溶血の速度に相関する。相補的な検査では患者の血漿を正常赤血球と混ぜることによって,血漿中にそのような抗体が遊離しているかどうかを判定する(間接抗グロブリン[間接クームス]試験)。間接抗グロブリン試験が陽性で直接試験が陰性の場合は一般に,免疫溶血よりもむしろ妊娠,事前の輸血,またはレクチン交叉反応から生じた同種抗体を示している。正常血液供給者の1/10,000はクームス試験結果が陽性であるので,温式抗体が同定されても溶血を証明したことにはならない。
クームス試験によりAIHAが同定されたら,検査により温式抗体溶血性貧血および寒冷凝集素症,ならびに温式抗体溶血性貧血に関与する機序を鑑別すべきである。これは直接抗グロブリン反応のパターンによって,しばしば決定できる。以下の3つのパターンが考えられる:(1)反応は抗IgGには陽性だが抗C3には陰性である。このパターンは特発性AIHAにおいて,および薬物つまりαメチルドパ型AIHA(通常は温式抗体溶血性貧血)で一般的である。(2)反応は抗IgGにも抗C3にも陽性である。このパターンはSLEおよび特発性AIHA(通常は温式抗体溶血性貧血)の症例において一般的であり,薬物関連症例ではまれである。(3)反応は抗C3では陽性だが抗IgGでは陰性である。これは,IgG抗体が低親和性のときの特発性AIHA(通常は温式抗体溶血性貧血),薬物関連症例の一部,および寒冷凝集素症と発作性寒冷血色素尿症において生じる。
その他の検査はAIHAの原因を示唆しうるが,決定的でない。寒冷凝集素症では,赤血球は末梢血塗抹標本上に凝集し,自動血球計数器では,そのような凝集のためにしばしばMCV増加および偽りのヘモグロビン底値が呈示される;試験管を手で温めてもう一度数えると,かなり正常値に近くなる。温式抗体溶血性貧血はしばしば,直接抗グロブリン試験が陽性となる温度により寒冷凝集素症と鑑別可能である;37℃以上の温度で陽性となる場合は温式抗体溶血性貧血を示し,37℃未満で陽性となる場合は寒冷凝集素症を示す。
PCHが疑われる場合,PCHに対する特異度が高いドナート-ランドシュタイナー試験を実施すべきである。梅毒に対する検査が勧められる。
治療
薬物で誘発された温式抗体溶血性貧血では,薬物中断により溶血速度が低下する。αメチルドパ型AIHAでは,溶血は通常3週間以内に終焉する;しかしながら,クームス試験陽性は1年を超えて続くことがある。ハプテン媒介性AIHAでは,薬物が血漿から一掃されると溶血が止まる。コルチコステロイドは薬物誘発性溶血においては,ほとんど効果がない;Igの注入の方が有効なようである。
コルチコステロイド(例,プレドニゾン1mg/kg,経口投与,1日2回)が温式抗体特発性AIHAにおいて選択される治療である。非常に重度の溶血では,100〜200mgの初回負荷投与量が推奨される。大部分の患者が非常によく反応し,そのうち約3分の1では治療後12〜20週間が経過しても反応が持続する。安定的な赤血球値が達成されたら,コルチコステロイドをゆっくりと漸減する。コルチコステロイド中止後に再発する患者やコルチコステロイドが有用でない患者では,脾摘出が行われる。患者の約3分の1〜2分の1は脾摘出後に持続性の反応を有する。劇症性の溶血の症例では血漿交換が効果を示している。重度ではなくてもコントロール困難な溶血には,免疫グロブリン注入により一時的なコントロールが得られている。免疫抑制薬(シクロスポリンを含む)を用いた長期間の管理は,コルチコステロイドと脾摘出での無効例に有効である。
温式抗体溶血性貧血における汎凝集素抗体の存在は供血者の血液の交差試験を困難にする。さらに,輸血は,しばしば同種抗体を自己抗体に上乗せし,溶血を悪化させる。したがって,可能な限り輸血は回避すべきである。必要な場合は,少量の輸血のみに留めるべきである(100〜200mLを1〜2時間かけて,溶血を観察しながら行う)。
寒冷凝集素症の治療は,急性の症例ではおおむね支持療法となるが,これは貧血が自己限定性だからである。慢性の症例では基礎疾患の治療がしばしば貧血をコントロールする。しかしながら,特発性かつ慢性の症例では,軽度の貧血(ヘモグロビン量9〜10g/dL)が生涯続くこともある。寒冷暴露を避けるのがしばしば有益である。脾摘出は無効である。免疫抑制薬は,わずかな有効性しか有さない。輸血は輸血ライン加温器で温めた血液を用いて少なめに施行すべきである。自己赤血球はすでに自己抗体から生きのびているため,自己赤血球の寿命の方が輸血赤血球の寿命よりも長く,輸血の効果は限定される。
PCHでは,治療は,寒冷暴露からの厳格な回避から成る。脾摘出は無効である。免疫抑制薬は効果的であるが,進行性または特発性の症例に限るべきである。随伴する梅毒の治療により,PCHが治癒することもある。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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