メルクマニュアル18版 日本語版
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リンパ球減少症

リンパ球減少症は,リンパ球総数が成人で1000/μL未満または2歳未満の小児で3000/μL未満の状態をいう。リンパ球減少症に伴って発現するものに,日和見感染症,悪性疾患および自己免疫疾患のリスク増加などがある。全血球計算によりリンパ球減少症が認められた場合は,続いて免疫不全症の有無を調べる検査およびリンパ球の内訳の解析を行うべきである。治療は基礎原因に向けられる。

リンパ球数の正常値は,成人で1000〜4800/μL;2歳未満の小児で3000〜9500/μLである。6歳で正常値の下限は1500/μLである。B細胞およびT細胞はともに末梢血液中に存在し,リンパ球の約75%はT細胞,約25%がB細胞である。リンパ球は白血球総数のわずか20〜40%しか占めないため,白血球分画を伴わない白血球数の検査ではリンパ球減少症に気づかないこともある。

血液中のT細胞のほぼ65%はCD4+(ヘルパー)T細胞である。リンパ球減少症のほとんどの患者に,T細胞の絶対数,特にCD4+T細胞数の減少が認められる。成人の血液中のCD4+T細胞の平均的な数は1100/μL(300〜1300/μLの範囲)で,T細胞のもう一方の主要なサブグループであるCD8+(サプレッサー)T細胞の平均数は600/μL(100〜900/μLの範囲)である。

病因

遺伝性リンパ球減少症( 好中球減少症とリンパ球減少症: リンパ球減少症の原因表 2: 表参照)は遺伝性免疫不全疾患(免疫不全疾患を参照 )およびリンパ球産生障害に関連する疾患に伴うこともある。その他の遺伝性疾患,例えば,ヴィスコット-オールドリッチ症候群,アデノシンデアミナーゼ欠損症,およびプリンヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症などはT細胞破壊亢進に関連がある可能性がある。多くの疾患で抗体も不十分である。

表 2

リンパ球減少症の原因

遺伝的原因

後天的原因

リンパ球系幹細胞の無形成

毛細血管拡張性運動失調

軟骨毛髪形成不全

特発性CD4 T細胞減少症

胸腺腫を伴う免疫不全

インターロイキン2受容体γ鎖における欠損,ADA,PNPまたは未知の欠損による重症複合型免疫不全症

ヴィスコット-オールドリッチ症候群

AIDS,肝炎,インフルエンザ,結核,腸チフス,敗血症を含む感染症

エタノール乱用による食物摂取不足,蛋白-エネルギー栄養障害,亜鉛不足

細胞傷害性化学療法,グルココルチコイド,高用量ソラレンおよびA波長紫外線照射,免疫抑制療法,放射線療法,または胸管ドレナージ処置後に発現する医原性のもの

自己免疫疾患を伴う全身性疾患;例,再生不良性貧血,ホジキンリンパ腫,重症筋無力症,蛋白喪失性腸症,関節リウマチ,腎不全,サルコイドーシス,SLE,熱性損傷

ADA=アデノシンデアミナーゼ;PNP=プリンヌクレオシドホスホリラーゼ。

後天性リンパ球減少症は他の多くの疾患とともに発現する(好中球減少症とリンパ球減少症: リンパ球減少症の原因表 2: 表参照)。蛋白-エネルギー栄養不良は世界中で最も一般的な原因である。AIDSは,リンパ球減少症を惹起する最も一般的な感染症で,HIVに感染したCD4+T細胞の崩壊がその原因である。リンパ球減少症はまた,胸腺またはリンパ組織の構造破壊から起こるリンパ球産生障害を反映することもある。HIVまたは他の病原体が原因の急性のウイルス血症では,リンパ球は,それらのウイルスによる活動性感染から来る崩壊が亢進したり,脾臓またはリンパ節で捕捉されたり,あるいは気道に遊走する場合もある。

医原性のリンパ球減少症は,細胞傷害性化学療法,放射線療法,または抗リンパ球グロブリン投与によって起こる。ソラレンおよび紫外線照射を使用した長期にわたる乾癬治療はT細胞を破壊する可能性がある。グルココルチコイドはリンパ球崩壊を誘発する可能性がある。

リンパ球減少症は,自己免疫疾患,例えばSLE,関節リウマチ,重症筋無力症および蛋白質喪失性腸症に伴って発症する場合もある。

症状,徴候,診断

リンパ球減少症それ自体は一般に無症状である。しかしながら,関連疾患の所見には細胞性免疫不全を示唆する扁桃またはリンパ節の欠如または縮小;脱毛症,湿疹,膿皮症,または末梢血管拡張などの皮膚の異常;蒼白,点状出血,黄疸,または口腔潰瘍などの血液疾患の証拠;HIV感染を示唆する場合もある全身性のリンパ節腫脹および脾腫などが含まれる。

リンパ球減少症患者は反復性の感染症に罹患したり,またはまれな微生物による感染症を発病する。ニューモシスチス-ジロヴェン(以前のニューモシスチス-カリニ),サイトメガロウイルス,麻疹および水痘肺炎はしばしば致死的である。リンパ球減少症はまた,悪性腫瘍および自己免疫疾患の危険因子である。

リンパ球減少症は,ウイルス,真菌または寄生虫感染症を反復して発症する患者に疑われるが,通常は全血球計算で偶然発見される。リンパ球減少症を伴うニューモシスチス-ジロヴェン,サイトメガロウイルス,麻疹,あるいは水痘肺炎では免疫不全を疑う。リンパ球減少症患者ではリンパ球の内訳を測定する。免疫グロブリン濃度の測定を伴う抗体産生検査も行われるべきである。反復性感染症の病歴がある患者には,最初のスクリーニングテストが正常であっても免疫不全(免疫不全疾患: 免疫不全が疑われる患者へのアプローチを参照 )に関する包括的な臨床検査評価を行う。

治療

リンパ球減少症は通常,根底にある要因の除去または基礎疾患の治療の奏効で寛解する。患者に慢性免疫グロブリンG欠乏症,リンパ球減少症,および反復性感染症がある場合は免疫グロブリン静注を行う。造血幹細胞移植は先天性免疫不全症の全ての患者に適応可能で,治癒的効果がある場合もある(移植: 造血幹細胞移植を参照 )。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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