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異常なあるいは過度の出血の症状または徴候を呈している場合,または出血性障害を示唆する異常が臨床検査で偶然見つかった場合には出血性障害に関する評価を行う。患者は重症の血栓症につながる疾患を有する可能性もある(血栓性疾患を参照 )。異常なまたは過度の出血には,説明のつかない鼻出血,過度のあるいは長びく月経出血(月経過多),軽い切り傷または外傷後の長引く出血,紫斑ができやすい(組織にできる斑状出血または皮膚にできる点状出血あるいは紫斑性病変),歯磨きあるいはデンタルフロス使用後の原因不明の歯肉出血などがある。
全身性の出血の原因には,血管障害(例,結合組織の疾患,ビタミンC欠乏症,遺伝性出血性毛細血管拡張症),あるいはより一般的なものに,血小板の(血小板減少症と血小板機能不全を参照 )あるいは凝固の(凝固障害を参照 )量的,質的欠陥がある。
血小板または血管の障害は,皮膚や粘膜などの表層部位からの出血をもたらし,その出血は自然発生的かまたは外傷の直後に起こる。対照的に,血液凝固に欠陥(凝固障害)のある患者は,組織内に出血(例,関節出血,筋肉血腫,後腹膜出血)を来し,出血は遅発することもある。
評価
病歴:
病歴では,血小板や凝固の異常に関連する全身性疾患;血小板機能を損なうアスピリン,NSAID,または一般用医薬品などの薬物の使用;過去の過剰なまたは異常な出血;出血性障害の家族歴について尋ねるべきである。過去の過剰なまたは異常な出血の病歴,特に複数の部位からの出血は血小板減少症あるいは凝固異常を示唆する。過剰な出血の家族歴がないことが,遺伝性の凝固異常(例,血友病)がないことにはつながらない。
身体診察:
皮膚および粘膜出血の徴候には,四肢に最もはっきりと現れるピンポイントの皮膚出血である点状出血(特に重度の血小板減少症に多い),斑状出血,紫斑,消化管または尿生殖器官からの出血,鼻出血および喀血がある。深部組織からの出血の徴候には,関節の圧痛および腫脹,筋肉内出血があり,重症になると頭蓋内出血,血液量減少,出血性ショックといった徴候が認められる。
検査:
病歴または診察で出血のリスクが明らかになった患者は,凝固の臨床検査が異常である可能性が非常に高い。過度の出血の徴候または症状のない患者の検査結果が異常を示す場合は,検査でのエラーを除外するため,検査を繰り返すべきである。異常な検査結果が必ずしも臨床的意味を有するわけではない。例えば,内因系経路の第ⅩⅡ因子,プレカリクレイン,高分子キニノーゲンに欠損がある患者は過度の出血を来さない(
止血: 止血に関する臨床検査表 2: 参照)。
スクリーニング検査では循環血の血小板数および血漿の凝固経路を含む止血の構成因子を評価する。出血性障害のスクリーニング検査としては血小板数,プロトロンビン時間(PT)および部分トロンボプラスチン時間(PTT)が最も一般的である。検査結果に異常があれば,通常は特異的な検査によりどこに異常があるかを明らかにできる。フィブリン分解産物の濃度で線溶のin vivo活性化の度合いが分かる。
PTは血液凝固の外因系および共通の経路(血漿第Ⅶ,Ⅹ,Ⅴ因子,プロトロンビン,およびフィブリノーゲン)の異常を検出する。PTは,検査施設の標準値に対する患者のPTの比率を表わす国際標準率(INR)を用いて表される;INRは検査施設間における試薬の違いを調整する。市販の試薬および計測手段は互いに大きく異なるので,各試験施設ではPTおよびPTTの正常域を独自に設定しなくてはならない;PTの典型的な正常域は10〜13秒である。INR>1.5,または検査施設の正常の標準値よりPTが3秒以上延長している場合は通常異常を示し,さらに検査が必要である。INRは,後天性の様々な病態(例,ビタミンK欠乏症,肝疾患,播種性血管内凝固症候群)の凝固異常のスクリーニングにおいて有用である。INRは経口ビタミンK拮抗薬のワルファリンを用いた療法のモニタリングにも使われる。
部分トロンボプラスチン時間(PTT)は血漿を検査して内因系経路および共通の経路の因子(プレカリクレイン;高分子キニノーゲン;第ⅩⅡ,ⅩⅠ,Ⅸ,Ⅷ,Ⅹ,Ⅴ因子;プロトロンビン;フィブリノーゲン)の異常を検出する。PTTは第Ⅶ因子および第ⅩⅢ因子を除く全ての凝固因子の欠乏を検査する(第Ⅶ因子はPTで測定)。正常域は一般に28〜34秒である。正常な検査結果はその経路の全ての凝固因子の少なくとも30%が血漿中に存在することを示唆する。ヘパリンはPTTを延長するため,PTTはヘパリン療法のモニタリングにしばしば用いられる。PTTを延長する抑制因子には,第Ⅷ因子に対する自己抗体(凝固障害: 血友病を参照 および凝固障害: 循環抗凝固物質による凝固障害を参照 )および蛋白-リン脂質複合体(“ループスアンチコアグラント”―凝固障害: 循環抗凝固物質による凝固障害を参照 および血栓性疾患を参照 )に対する抗体が挙げられる。
INRまたはPTTの延長は,因子の欠乏,または凝固系の構成因子に対する抑制因子の存在を反映している場合がある。PTおよびPTTは,検査した凝固因子のうち,ひとつ以上が約70%欠乏していない限り延長しない。時間の延長の理由が,ひとつ以上の凝固因子の欠乏か,または抑制因子の存在かを決定するために,患者の血漿と正常な血漿を1:1の割合で混ぜて検査を繰り返す。この混合検体には正常値の約50%の全ての凝固因子が含まれているため,混合検体の延長時間が改善されないことで,患者の血漿中の抑制因子の存在がほぼ間違いなく推察される。
血小板と血管の相互作用を評価するために出血時間をスクリーニング検査として用いることはその信頼性に疑問が残る。出血時間は血圧測定用のカフを上腕に巻き40mm
Hgになるように膨らませて測定する。使い捨てのばね式の装置を用いて,標準化された切開を前腕の手のひら側に行う。出血が止まるまで30秒ごとに血液を濾紙に吸い取る。出血時間の延長をもたらす可能性があるものに,血小板減少症,血小板機能異常,フォン・ヴィルブランド病,および,他の臨床検査と異なり,原発性の血管壁異常がある。7日以内にアスピリンを服用していれば出血時間の延長を来す可能性がある。理論上,遺伝性または後天性の凝固異常は出血時間を延長させない;しかしながら,実際にはこうした疾患において結果が予測と異なることがある。出血時間の感度および再現性は限界があるため,その使用には議論の余地がある。
全てのスクリーニング検査で正常であれば,多くの出血性障害を除外できる。例外には,重度の第ⅩⅢ因子欠乏症(疑われる場合には特異的な測定法を必要とする);一般的な存在であるフォン・ヴィルブランド病(関連する第Ⅷ因子の欠乏症はPTTを延長させるにはしばしば不十分);および線溶の制御に関わるまれな疾患が挙げられる。PTまたはPTTは1つないしは複数の因子の約70%が欠乏していない限り延長しないため,それほど重症ではない疾患(例,軽症の出血性障害)を疑う場合は特定の因子に対する感度のより高いアッセイが必要である。
出血性障害かつ不顕性出血を示唆する症状のある患者には徹底した検査を行うべきである。例えば,激しい頭痛,頭部外傷,意識障害,腹腔内または後腹膜の出血の可能性がある患者にはCTスキャンを行うべきである。
治療
治療は根底にある原因および出血の合併症に向けて行う(裂創: 閉鎖を参照 の局在性の出血のコントロールおよびショックおよび輸液蘇生術: 予後と治療を参照 の出血性ショックの治療を参照)。凝固異常に起因する出血があり未だ診断結果が出ていない場合の当面の治療としては,決定的な評価が出るまでの間,全ての凝固因子を含む新鮮凍結血漿を輸注する。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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