メルクマニュアル18版 日本語版
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ランゲルハンス 細胞組織球増加症(ランゲルハンス細胞肉芽腫症;ヒスチオサイトーシスX)

間質性肺疾患: 肺ランゲルハンス細胞肉芽腫症も参照 。)

ランゲルハンス細胞組織球増加症は,臓器への局所的またはびまん性の浸潤を伴う樹状単核球の増殖である。ほとんどの症例が小児に起こる。症候には,肺浸潤,骨病変,皮膚発疹のほか,肝臓,造血,内分泌の機能不全などがある。診断は生検に基づいて行う。予後不良を予測する因子には,年齢2歳未満,播種,特に造血系,肝臓,および/または肺が侵されている場合などがある。治療方法は,疾患の範囲によって支持療法および化学療法,または手術または放射線療法による局所療法などがある。

ランゲルハンス細胞組織球増加症(LCH)は,樹状細胞の疾患である。この疾患は,歴史的に好酸球性肉芽腫,ハンド-シュラー-クリスチャン病,レテラー-ジーヴェ病と呼ばれてきた特有の臨床症候群を引き起こすことがある。これらの症候群は,同じ基礎疾患の異なる微候であること,またLCH患者のほとんどにこれらの2つ以上の症候群の徴候がみられることから,症候群別の名称は,現在ではもっぱら歴史的な意味しかもたない。

LCHの有病率は1:50,000と推定され,15歳までの小児がしばしば罹患するが,そのほとんどは乳幼児である。しかしながら,この疾患は成人や高齢者に生じることもあり,男性患者が多い。

LCHでは,異常に増殖する樹状細胞が1個以上の臓器に浸潤する。骨,皮膚,歯,歯肉組織,耳,内分泌器官,肺,肝臓,脾臓,リンパ節,骨髄が侵される。臓器は浸潤によって侵されて機能不全を引き起こすか,隣接の肥大した器官からの圧迫により侵されることがある。患者の約半数は,複数の臓器が侵される。

症状と徴候

症状と徴候はどの臓器が浸潤されたかによって著しく変わる。これらの症候群は歴史的な名称で呼ばれるが,古典的な徴候を有する患者はごく少数である。

好酸球性肉芽腫: 孤立性あるいは多巣性好酸球性肉芽腫(LCH症例の60〜80%)は圧倒的に児童と若年成人に,通常は30歳までに発生する;罹患率のピーク年齢は5〜10歳である。病変が最も及びやすいのは骨であり,しばしば痛みおよび/または体重を支えられない状態を伴い,さらに圧痛(ときとして熱感)を伴う腫脹がみられる。

ハンド-シュラー-クリスチャン病: この症候群(LCH症例の15〜40%)は,2〜5歳の小児と,一部は児童と成人に生じる。これは古典的に頭蓋骨,肋骨,骨盤,肩甲骨などの扁平骨を侵す全身性疾患である。長骨と腰仙椎骨が侵される頻度は低い;手首,手,膝,足,頸椎が侵されることはまれである。古典的症例としては,眼窩の腫瘍塊に起因する眼球突出がみられる。まれに,視神経や眼窩筋が侵されて視力障害や斜視が生じる。歯根尖部および歯肉への浸潤による歯の喪失は,高齢患者には一般的にみられる。

側頭骨の乳様突起や錐体部への浸潤に起因し耳道の部分的な閉塞を伴う慢性中耳炎および外耳炎は,かなり一般的である。扁平骨への浸潤と眼球突出を含む古典的三徴の最後に挙げられる尿崩症は,5〜50%の患者が罹患し,全身性疾患があり眼窩と頭蓋が侵されている小児には,より高い割合でみられる。全身性疾患をもつ小児の最大40%が低身長を呈する。視床下部の浸潤によって高プロラクチン血症や性腺機能低下症が引き起こされる。他にも多くのまれな症状が起こりうる。

レテラー-ジーヴェ病: この症候群(LCH症例の10%)は全身性疾患であり,LCHの中でも最も重症な型である。2歳未満の小児には典型的に鱗片状の脂漏性湿疹様,また時には紫斑様の発疹が,頭皮,外耳道,腹部,首と顔の間擦部位にみられる。表皮を欠く皮膚は微生物の侵入を促進し,敗血症を引き起こすことがある。耳からの排膿,リンパ節腫脹,肝脾腫が頻繁にみられ,重症例では低蛋白血症や凝固因子合成減少を伴う肝機能障害が生じる。食欲不振,被刺激性,発育不全,肺症状(例,咳,頻呼吸,気胸)も生じることがある。重い貧血と,時に好中球減少症が生じる;血小板減少症は予後不良を示唆する。歯の早熟萌出が親から報告されることが多いが,実際には歯肉が後退して未熟な歯芽を露出している。患者が虐待またはネグレクトを受けているようにみえることがある。

診断

原因不明の肺浸潤,骨病変,または眼の異常もしくは頭蓋顔面異常がある患者(特に若い患者),および典型的発疹または重度の原因不明の多臓器疾患をもつ2歳未満の小児において,LCHを疑う。

初診時の症状から,しばしばX線撮影が実施される。骨病変は通常明瞭な辺縁があり,円か楕円を成しており,端部に傾斜がつき奥行きのような外観を呈する。しかしながら,X線撮影ではユーイング肉腫,骨肉腫,その他の良性疾患,悪性疾患,または骨髄炎との区別ができない病変がある。

診断は生検に基づいて行う。古い病変を除き,通常はランゲルハンス細胞が顕著である。これらの細胞は,細胞表面上のCD1aおよびS-100を含む免疫組織化学的特性に応じて,LCHの診断の経験を積んだ病理学者により同定される。診断が確定したら,適切な画像検査と臨床検査によって疾患の範囲を判定しなければならない。

予後と治療

2歳を超える患児にみられる皮膚,リンパ節,または骨に限局した疾患の予後は良好である。高い罹病率と死亡率は,多臓器への浸潤がみられる若年患者に生じる。多臓器浸潤がみられる患者については疾患リスクが層別化される。約25%は低リスクに分類される。低リスクの基準は,年齢が2歳を超え,かつ造血系,肝臓,肺,または脾臓が侵されていない人である;リスクありの基準は,年齢2歳未満であるか,またはこれらの臓器が侵されている人である。治療を受けた多臓器疾患の全生存率は約80%である。死亡は,低リスク患者では実質的にはみられず,リスクありの患者で初期治療に反応しない人の場合に最も可能性が高まる。再発は一般的である。寛解と増悪を繰り返す慢性の経過が,特に成人患者にみられることがある。

可能な限り,LCH治療の経験を積んだ施設に患者を紹介する。全身支持療法が不可欠であり,病変を耳,皮膚,歯に限局化するための周到な衛生管理などもこれに含まれる。口腔病変は重度に侵された歯肉組織のデブリドマンや切除によって限局化される。頭皮の脂漏様皮膚炎は,セレニウムを基剤とするシャンプーで週2回洗髪すると縮小する。洗髪の効果がみられない場合は,小さな病変部に外用コルチコステロイドを少量で短期間使用する。

多くの患者が尿崩症や他の下垂体機能低下の症候のためにホルモン補充を必要とする。全身性疾患の患者については,心理社会的サポートを要する心理的問題に加え,美容的または整形外科的機能障害や皮膚障害,および神経毒性のような潜在的慢性的障害を監視する。

多臓器への浸潤がみられる患者には,化学療法が適応となる。プロトコルはHistiocyte Societyが主唱するものを使用する;これはリスクカテゴリーによって異なる。治療に対する反応が良好な患者のほぼ全てで,治療を中止できる。反応が不良な患者のプロトコルについては現在研究中である。

局所手術または局所放射線療法は単一の骨を侵す疾患に用いられ,まれに,複数の病変または複数の骨が侵されている場合にも適用される。処置しやすく危険のない場所にある病変に対しては,外科的掻爬術を行う。手術は,美容的および/または整形外科的な激しい変形と機能喪失をまねく恐れのある場合には避けるべきである。高電圧装置を伴う放射線療法は,骨格変形,眼球突出に続発する視力障害,病的骨折,椎骨圧迫骨折,脊髄損傷のリスクのある患者か,または重度の疼痛を伴う患者に用いられる。放射線量は,癌の治療に用いられる線量よりかなり少ない。手術および放射線療法は,LCHの治療経験を積んだ専門医が実施すべきである。

標準治療を施しても進行がみられる多臓器疾患患者は,通常,より積極的な化学療法に反応する。サルベージ化学療法に反応しない患者は,骨髄移植,実験的化学療法,または免疫抑制療法もしくは他の免疫修飾療法を受けることがある。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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