メルクマニュアル18版 日本語版
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本態性血小板血症(本態性血小板増加症;原発性血小板血症)

本態性血小板血症は,血小板数の増加,巨核球の過形成,出血や血栓傾向を特徴とする。症状と徴候には,脱力,頭痛,感覚異常,出血,脾腫,指の虚血などがある。診断は,血小板数が500,000/mLを超えていること,正常赤血球量または正常ヘマトクリットを示し十分な鉄貯蔵があること,骨髄線維症を,フィラデルフィア染色体(またはABL-BCRの再構成),および血小板増加症を引き起こしうるその他のあらゆる疾患の存在しないことに基づいて行う。議論の余地はあるものの,治療はアスピリン81mg/日,経口投与にて行う。60歳を超える患者および複数の併存疾患を有する患者の場合は,血小板数を減少させるための細胞傷害性薬物が必要となる。

病因と病態生理

本態性血小板血症(ET)は典型的に,多能性造血幹細胞のクローン異常である。しかしながら,ETの診断基準を満たす一部の女性患者は,多クローン性造血を示す。ETは通常,50〜70歳の間に生じる。

血小板産生は増加する。血小板の寿命は通常正常であるが,脾臓による捕捉によって短縮することもある。アテローム動脈硬化を有する高齢患者の場合,血小板数の増加は重篤な出血をまねくことがあり,またはより一般的には血栓症をまねくことがある。極度の血小板増加,すなわち血小板数が150万/μLを超える場合には,後天的なフォン・ヴィルブランド因子の欠乏による出血を起こしやすくなる。

症状,徴候,診断

最も一般的にみられる症状は,脱力,出血,非特異的頭痛,手足の感覚異常である。出血は通常軽度で,鼻出血,易傷性,消化管出血として発現する。指の虚血が起こることもあり,脾腫(通常左肋骨縁の下3cmを超えては広がらない)は患者の60%に生じる。肝腫も生じることがある。妊娠中の患者の場合,血栓症が反復自然流産を引き起こすこともある。

症状は一般的なものであるが,疾患の経過は通常良性である。重篤な合併症はまれであるが,生命を脅かすこともある。

脾腫を有するほか,骨髄増殖性疾患の症状と徴候が,血小板数の上昇,または血小板の形態的異常のみられる患者については,ETを考慮すべきである。この疾患が疑われる場合は,フィラデルフィア染色体またはABL-BCRの測定を含め,全血球計算,末梢血塗抹標本による検査,骨髄検査,細胞遺伝学的検査を実施すべきである。血小板数は,1,000,000/μLを超える可能性があるが,500,000/μL程度の場合もある。妊娠中はしばしば血小板数が自然に減少する。末梢血塗抹標本では,血小板凝集,巨大血小板,巨核球の断片が示されることがある。骨髄は,巨核球の過形成を示し,大量の血小板が放出される。骨髄鉄がみられる。血小板増加症をもたらすその他の骨髄増殖性疾患と鑑別するため,ETの診断に必要とされるのは,ヘマトクリット,MCV,鉄の検査結果が正常である;フィラデルフィア染色体とABL-BCR転座(慢性骨髄性白血病にみられる)が認められない;涙滴赤血球および,骨髄線維化の著しい増加(特発性骨髄線維症にみられる)が存在しないことである。診断には,二次性血小板増加症の原因となりうる疾患として臨床的に疑われるものを全て除外することも必要である(骨髄増殖性疾患: 血小板増加症の原因表 2: 表参照)。

表 2

血小板増加症の原因

慢性炎症性疾患:関節リウマチ,炎症性腸疾患,結核,サルコイドーシス,ウェーゲナー肉芽腫症

急性感染症

出血

鉄欠乏

溶血

腫瘍:癌,ホジキンリンパ腫(ホジキン病),非ホジキンリンパ腫

手術:脾摘出

骨髄増殖性疾患および血液疾患:真性赤血球増加症,慢性骨髄性白血病,鉄芽球性貧血,骨髄異形成(5q-症候群),特発性骨髄異形成

予後と治療

平均余命は正常に近い。白血病への転化は2%未満の患者にみられるが,細胞傷害性薬物を用いた療法,特にアルキル化剤による治療に暴露した後は増加する。

治療に対する適応については議論の余地がある。軽度の血管運動症状(例,頭痛,軽度の指の虚血,先端紅痛症)の場合,また,低リスク患者の血栓症リスクを低下させる場合は,アスピリン81mg,経口にて1日1回の投与で十分である。予後はしばしば良好であることから,血小板数を低下させ潜在的に毒性のある療法は控えめに用いるべきである。著しい出血がみられる患者には,血小板数を低下させる治療法が必要である。血栓症の既往がある,または血栓症リスクを増大させる併存疾患を有する60歳を超える患者には,血小板を低下させる薬物を投与する。60歳未満の無症候の患者に対する血小板の低下薬物の必要性については,研究を要するところである。妊娠中の患者の大半は,アスピリンを投与される。

血小板数を低下させる骨髄抑制療法は通常,アナグレライド,ヒドロキシ尿素,またはインターフェロンαから成る。用量とモニタリングについては,真性赤血球増加症の治療の項に記載されている(後述参照)。治療の目標は,重大な臨床上の毒性や,他の骨髄成分の抑制を伴わずに,血小板数を450,000/μL未満にすることである。アナグレライドおよびヒドロキシ尿素は胎盤を通過するため妊娠中には用いられない;インターフェロンは妊婦に使用できる。

血小板フェレーシスは,血小板数を直ちに減少させるために用いられているが(例,重篤な出血や血栓症において;緊急手術の前),この手技が必要となることはまれである。血小板の半減期は長いため(7日間),ヒドロキシ尿素およびアナグレライドでは即時効果は得られない。

血小板増加症

(二次性血小板血症)

血小板増加症は,慢性炎症性疾患,急性感染症,出血,鉄欠乏症,溶血,または腫瘍により二次的に発症しうる(骨髄増殖性疾患: 血小板増加症の原因表 2: 表参照)。血小板機能は通常,正常である。しかしながら,骨髄増殖性疾患においては,血小板凝集の異常が患者の約50%に起こる。ETとは異なり,患者に重度の動脈疾患または長期にわたる不動状態がない限り,血小板増加症が血栓性または出血性の合併症のリスクを増大させることはない。二次性血小板増加症を伴う場合,血小板数は通常1,000,000/μL未満であり,その原因は,病歴,身体診察,X線検査,または血液検査から明らかになる。通常,基礎疾患の治療により血小板数は正常に戻る。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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