メルクマニュアル18版 日本語版
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急性白血病

急性白血病は,造血幹細胞が,寿命の異常に長い原始的な未分化細胞に悪性化して生じる。これらのリンパ球(急性リンパ性白血病)または骨髄系細胞(急性骨髄性白血病)が異常に増殖し,正常な骨髄組織や造血細胞を置換し,貧血,血小板減少と顆粒球減少を誘発する。これらは血液由来であるため,様々な臓器や部位に浸潤し,肝臓,脾臓,リンパ節,中枢神経系,腎臓,性腺に及ぶ。

症状と徴候

症状は通常,診断の数日間数週間前からしかみられない。造血の障害は最も一般的にみられる主症状(貧血,感染,易傷性,易出血性)をもたらす。その他にみられる症状と徴候は,通常非特異的(例,蒼白,疲労,発熱,倦怠感,体重減少,頻脈,胸痛)であり,貧血と代謝亢進状態に起因する。発熱はしばしば原因不明であるが,顆粒球減少症は,急速に進行し生命にかかわる可能性をもつ細菌感染をまねくことがある。出血は通常,点状出血,易傷性,鼻出血,歯肉出血,または月経不順により発現する。血尿や消化管出血はまれである。骨髄および骨膜への浸潤は,骨や関節の痛みを引き起こし,ALLを有する小児に特にみられる。初期の中枢神経系浸潤,すなわち白血病性髄膜炎(頭痛,嘔吐,被刺激性,脳神経麻痺,痙攣,乳頭浮腫として呈示)はまれである。白血病細胞による髄外浸潤は,リンパ節腫脹,脾腫,肝腫,皮膚白血病(隆起したかゆみのない皮膚発疹)を引き起こすことがある。

診断

血算と末梢血塗抹標本は最初に実施する検査である;汎血球減少症および末梢血芽球は,急性白血病を示唆する。白血球数が著しく減少していなければ,血液塗抹標本中の芽球は90%近くになる。通常は血液塗抹標本から診断できるが,常に骨髄検査(穿刺または針生検)を行うべきである。骨髄中の芽球は30〜95%である。重度の汎血球減少症の鑑別診断においては,再生不良性貧血,伝染性単核球症などのウイルス感染,ビタミンB12欠乏,葉酸欠乏を考慮に入れる必要があり,感染性疾患(結核など)に対する類白血病反応より,芽球数が多くなることもある。

組織化学検査や,細胞遺伝学,免疫表現型,分子生物学などの検査は,ALLの芽球を,AMLの芽球またはその他の疾患過程と識別するのに役立つ。B細胞やT細胞および骨髄系抗原に特異的なモノクローナル抗体は,フローサイトメトリーによってALLとAMLを分類するのに非常に役立ち,このことは治療にとって重要である。

その他の検査所見には,高尿酸血症,高リン酸血症,高カリウム血症または低カリウム血症,血清中の肝トランスアミナーゼまたは肝乳酸脱水素酵素の上昇,低血糖,低酸素などが含まれる。腰椎穿刺および頭部CTスキャンは,中枢神経系の症状,B細胞ALL,白血球数の高値,またはLDHの高値がみられる患者に対して実施する。胸部X線撮影を実施する;縦隔腫瘤がみられる場合はCTを行う。CT,MRI,腹部超音波検査は,脾腫または白血病の他の臓器への浸潤の評価に役立つことがある。

予後と治療

ALLとAML両疾患の,特に若年患者では,治癒が現実的な目標となる。乳児および高齢者,ならびに肝機能障害,腎機能障害,中枢神経系転移,骨髄異形成,または白血球数の高値(25,000/μL以上)がみられる患者の場合は,予後がより悪くなる。未治療の急性白血病の一般的な生存期間は3〜6カ月である。予後は核型によっても異なる。

治療目標は完全寛解であり,異常な臨床像の消散,正常血球数への回復,芽球が5%未満の正常な造血,白血病性クローンの消失などが含まれる。ALLとAMLの治療の基本的原則は同様だが,薬物レジメンは異なる(白血病: 治療を参照 )。患者の臨床状況も利用できる治療プロトコルも複雑であるため,経験のある治療チームが必要である。可能なときはいつでも,特に危険な段階(例,寛解導入)の間は専門の医療センターで患者を治療すべきである。

支持療法: 通常血小板減少の結果である出血は,一般的に血小板投与に反応する。血小板が10,000/μL未満に低下した場合は,予防的血小板輸血を実施し,化学療法に続発する発熱,播種性血管内凝固症候群,粘膜炎の三徴がみられる患者には,より高い閾値(20,000/μL)を用いる。貧血(ヘモグロビン8g/dL未満)は濃厚赤血球輸血で治療する。

感染は,好中球の減少した免疫抑制患者では重篤になり,通常の臨床的証拠がみられないまま急速に進行する可能性がある。適切な検査と培養を行った後は,好中球数が500/μL未満の,熱性および無熱性の患者双方に対し,グラム陽性菌とグラム陰性菌に対する適用を含む広域殺菌性抗生物質療法を始めるべきである(例,セフタジジム,イミペネム+シラスタチン)。真菌感染,特に肺炎は一般的になりつつあり,診断が困難である;抗菌治療の効果が72時間以内に現れない場合は,経験的に抗真菌薬を投与すべきである。難治性肺炎の患者ではニューモシスチス-ジロベジー(以前のニューモシスチス-カリニ)やウイルス感染の可能性を疑い,気管支鏡検査や気管支肺胞洗浄によって確認し,適切に治療すべきである;トリメトプリム-スルファメトキサゾール(TMP-SMX),アムホテリシン,アシクロビル,またはその他の類似体による経験的治療が,多くの場合顆粒球輸血と併用して,しばしば必要となる。顆粒球輸血は,グラム陰性敗血症やその他の重篤な敗血症を有する好中球減少症患者に有用だが,予防投与としての効果は立証されていない。薬物誘発性の免疫抑制状態にある患者で日和見感染のリスクを有する場合は,ニューモシスチス-ジロベジー肺炎を予防するためにTMP-SMXを投与すべきである。

初期治療期の白血病細胞の急速な破壊(特にALLの場合)は,高尿酸血症,高リン酸血症,高カリウム血症を引き起こす可能性がある(腫瘍崩壊症候群―癌治療の原則: 腫瘍崩壊症候群を参照 )。これらの異常は,水分補給を増やすこと(1日の維持量分の2倍),尿のアルカリ化(pH7〜8),電解質モニタリングにより予防できる。高尿酸血症は,キサンチンから尿酸への転換を抑制するため,化学療法開始前にアロプリノール(キサンチン酸化酵素阻害剤)またはラスブリケース(組換え尿酸オキシダーゼ酵素)を与えることにより,最小限に抑えられる。

心理的支援は,患者とその家族が,疾患のショックと,生命の危険がある状態に対する治療の過酷さを乗り切る助けとなる。

急性リンパ性白血病

(急性リンパ芽球性白血病)

ALLは最も一般的にみられる小児癌であるが,全年齢の成人にも生じる。異常に分化した長命の造血前駆細胞の悪性化および制御されない増殖が,血中の芽球数の高値,正常な骨髄の悪性細胞による置換,中枢神経系および腹部臓器への白血病浸潤の可能性をもたらす。症状には,疲労,蒼白,感染,易傷性,易出血性などがある。末梢血塗抹標本と骨髄の検査は通常,診断に役立つ。治療には典型的に,寛解に到達するための多剤併用化学療法,中枢神経系予防のための髄腔内化学療法および/または脳内の白血病浸潤に対する大脳への放射線照射,幹細胞移植を伴うまたは伴わない地固め化学療法,再発防止のための1〜3年間の維持化学療法が含まれる。

ALLの全症例の3分の2は小児に生じ,発生率のピーク年齢は2〜10歳である;ALLは小児では最も多くみられる癌であり,15歳未満の小児の2番目に多い死亡原因である。発生率は,45歳以上で2度目の上昇をみせる。

予後

予後因子は,治療プロトコルと治療の強度を決定するのに役立つ。予後良好因子には,年齢3〜7歳,白血球数25,000/μL未満,FABL1形態,染色体数が50を超えt(12;21)を伴う白血病細胞核型,診断時に中枢神経系病変がないことが含まれる。予後不良因子は,白血病細胞核型の染色体数は正常だが形態が異常である(偽性2倍体),フィラデルフィア(Ph)染色体t(9;22)がある,高年齢の成人,表面免疫グロブリンまたは細胞質免疫グロブリンを有するB細胞免疫表現型,などである。

危険因子にかかわらず,初回寛解の可能性は小児で95%以上,成人で70〜90%である。小児の4分の3は継続的な5年無病生存率を有し,治癒すると思われる。治療のリスクと毒性の増大よりも,治療が失敗して死にいたる危険性が大きく上回るので,大部分の研究プロトコルでは不良な危険因子を有する患者に対し,より強力な治療を選択する。

治療

ALL治療は一般的に4つの段階別に分けられる:寛解導入期,中枢神経系予防期,寛解後の地固めまたは強化期,および維持期である。

いくつかのレジメンは,初期に強力な多剤併用レジメンを導入することを強調している。連日経口プレドニゾンと毎週のビンクリスチン静注にアントラサイクリンかアスパラギナーゼのどちらかを加えることにより,寛解へ導入できる。初期治療に導入される他の薬物やその組み合わせは,シクロホスファミドのほか,シタラビンおよびエトポシドである。一部のレジメンでは,メトトレキサート中等量または大量静注がロイコボリンのレスキュー投与とともに投与される。薬物の組み合わせと投与量は,危険因子の存在に応じて変更される。同種幹細胞移植は,Ph染色体陽性ALLの強化として,あるいは2回目以後の再発や寛解期に用いることが勧められている。

白血病浸潤の重要な場所は髄膜である;予防と治療には,メトトレキサート,シトシンアラビノシド,コルチコステロイド脳脊髄腔内大量投与がある。脳神経系または脳全体の放射線照射が必要であることもあり,ハイリスク患者の中枢神経系病変にはしばしば用いられるが(例,高白血球数,高血清LDH,B細胞表現型),近年ではあまり用いられていない。

大半のレジメンにメトトレキサートやメルカプトプリンによる維持療法が含まれる。治療期間は通常2年半〜3年であるが,初期段階で用いた場合とB細胞(L3)症例では,より強力なレジメンを用いればさらに短くなる。2年半の間,完全寛解を持続した患者の治療停止後の再発リスクは約20%で,通常1年以内に起こる。このように,治療中止の際に大半の患者は治癒している。

再発: 白血病細胞は,骨髄,中枢神経系,または精巣に再出現することがある。骨髄再発は特によくない前兆である。新たに追加する化学療法で小児の80〜90%に再寛解を得ることができるが(成人では30〜40%),その後に続く寛解は短い傾向にある。骨髄再発が遅い時期にみられた患者の一部のみが,2度目の長期無病寛解を得,治癒する。HLA適合同胞がいれば,幹細胞移植により,長期の寛解または治癒の最大の希望が得られる(移植: 造血幹細胞移植を参照 )。

再発により中枢神経系への浸潤がみられる場合は,治療にはメトトレキサートを(シタラビンまたはコルチコステロイドを併用するまたは併用しない)全ての徴候が消えるまで,週2回髄腔内に投与する。全身に芽球が広がる可能性があるので,大半のレジメンでは,全身性再寛解導入化学療法を行う。連続脊髄腔内薬物投与や中枢神経系照射の役割については明らかにされていない。

精巣再発は,精巣の無痛性の堅い腫大で臨床的に明らかなこともあれば,生検で同定されることもある。片側の精巣再発が臨床的に明らかであれば,外見上異常のないもう一方の精巣の生検を行うべきである。治療は,精巣への放射線照射であり,中枢神経系単独再発と同様に,全身性再寛解導入療法を実施する。

急性骨髄性白血病

AMLでは,異常に分化した長命の骨髄前駆細胞の悪性化および制御されない増殖が,血中の未熟造血細胞数の高値,正常な骨髄の悪性細胞による置換をまねく。症状には,疲労,蒼白,易傷性,易出血性,発熱,感染などがある;白血病浸潤の症状は患者のわずか5%程度にしかみられない(しばしば皮膚症候として)。末梢血塗抹標本と骨髄の検査は診断に役立つ。治療には,寛解に到達するための導入化学療法,および再発防止のための寛解後の化学療法(幹細胞移植を伴うまたは伴わない)がある。

AMLの発生率は加齢とともに上昇する;発症年齢の中央値は50歳で,成人により多くみられる急性白血病である。AMLは,別の型の癌に対する化学療法または放射線照射後に,二次癌として生じることもある。

AMLには,形態,免疫表現型,細胞化学によってそれぞれ区別される数多くの亜型がある。主な細胞型に基づいた5種類の分類を示すと,骨髄球性,骨髄単球性,単球性,赤血球系,巨核球系となる。

急性前骨髄球性白血病は特に重大な亜型で,AMLの全症例の10〜15%に相当し,一般的に凝固異常を呈する。若年層(年齢中央値31歳)や特定の民族系(ヒスパニック系)に多い。

予後と治療

寛解導入率は50〜85%である。長期間の無病生存は20〜40%の患者でみられることが報告されており,幹細胞移植を受けた若い患者では40〜50%と高くなる。

治療プロトコルと治療の強度の決定には予後因子が役立つ;治療の毒性増大が予想される便益により正当化されると考えられることから,予後不良の特徴が強くみられる患者には通常,より強化されたタイプの療法を施す。最も重要な予後因子は白血病細胞の核型であり,好ましい核型は,t(15;17),t(8;21),およびinv16(p13;q22)である。その他の負の予後因子は,加齢,先行する骨髄異形成期,二次性白血病,白血球数の高値,およびアウエル小体の非存在である。FAB分類またはWHO分類だけでは,治療への反応を予測できない。

初期治療では寛解導入を目指し,またAMLに有効な薬物はより少ないという点で,治療はALLの場合とは大きく異なる。基本的な導入レジメンは,5〜7日間のシタラビンの持続静注または高用量投与である;この間の3日間,ダウノルビシンまたはイダルビシンが静注で投与される。6-チオグアニン,エトポシド,ビンクリスチン,プレドニゾンを含むレジメンもあるが,これらがどれほど貢献しているかは不明である。治療は通常,重大な骨髄抑制を引き起こし,感染症や出血を伴う骨髄が回復するまでにかなりの時間がかかる。この間には注意深い予防措置と支持療法が必須である(白血病: 支持療法を参照 )。

急性前骨髄球性白血病(APL)および他のAMLの一部の症例では,診断時に播種性血管内凝固症候群(DIC)がみられ,白血病細胞崩解によって凝固因子が放出されるにつれ悪化しうる。転座t(15;17)がみられるAPLの場合,DICは全トランス型レチノイン酸により2〜5日で治療され,ダウノルビシンまたはイダルビシンと併用すれば,このレジメンで患者の80〜90%に寛解が得られ,65〜70%は長期生存を得ることができる。三酸化ヒ素もまたAPLに非常に活性がある。

多くのレジメンには,寛解後の同一あるいは他の薬物による強化療法の期間が含まれている;シタラビンの高用量レジメンは,特に60歳未満の患者の強化療法として行うと寛解持続期間を延長できる。全身性白血病がうまくコントロールされるようになれば,中枢神経系白血病が合併症として頻発しなくなるため,中枢神経系白血病の予防は通常行われない。強化療法を受けたAML患者における維持療法の役割は立証されていないが,他の局面ではある程度有用である。骨髄外の部位における単独再発はあまりない。

最終改訂月 2005年11月

最終更新月 2005年11月

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