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多発性骨髄腫は,単クローン性免疫グロブリンを産生し,隣接する骨組織に浸潤し破壊する形質細胞の悪性腫瘍である。一般的な症候としては,骨痛,腎不全,高カルシウム血症,貧血,および再発性感染症などがある。診断にはM蛋白(時に尿中にみられ,血清中ではみられない)の証明ほか,溶解性骨病変,L鎖蛋白尿,過剰な骨髄形質細胞のいずれかの証明が必要である。骨髄生検は通常必要とされる。特異的治療には,従来の化学療法(通常はアルキル化剤,コルチコステロイド,アントラサイクリン系,またはサリドマイドによる)および高用量メルファランの後に行う自己末梢血幹細胞移植がある。
多発性骨髄腫の発生率は10万人に2〜4人である。男女比は1.6:1であり,大半の患者は40歳を超えている。黒人の有病率は白人の2倍である。病因は不明であるが,染色体および遺伝因子,放射線,化学物質が示唆されている。
病態生理
形質細胞腫(プラスマ細胞腫)は,骨髄腫患者の約55%においてIgGを,約20%においてIgAを産生する;これらの患者の40%は尿中において遊離単クローン性L鎖κまたはλであるベンス-ジョーンズ蛋白尿症も有する。患者の15〜20%においては,形質細胞はベンス-ジョーンズ蛋白のみを分泌する。これらの患者は,溶解性骨病変,高カルシウム血症,腎不全およびアミロイドーシスの発生率が,他の骨髄腫患者より高くなる傾向にある。IgD骨髄腫は症例の約1%を占める。
通常は骨盤,脊椎,肋骨,頭蓋にびまん性骨粗鬆症や孤立性骨溶解性病変が生じる。病変は拡大する形質細胞腫による骨の置換により,または悪性形質細胞により分泌され破骨細胞を活性化するサイトカインにより引き起こされる。骨溶解性病変は通常多発性であるが,時に孤立性髄内腫瘍として起こる。骨以外の形質細胞腫は一般的ではないが,特に上気道を中心にどの組織にも起こりうる。
一般的に,高カルシウム血症および貧血が発現する。腎不全(骨髄腫腎)が起こりうる;機序には,尿細管中の大量の円柱形成,尿細管上皮細胞の萎縮および間質の線維化がある。
細菌感染に対する感受性は,正常免疫グロブリンの産生低下およびその他の因子に起因する。続発性アミロイドーシス(アミロイドーシス: 二次性アミロイドーシスを参照 )が骨髄腫患者の10%に起こり,ベンス-ジョーンズ蛋白尿症を伴う患者に最もしばしば起こる。
多発性骨髄腫には様々な非典型的病型がある(
形質細胞疾患: 多発性骨髄腫の様々な発現形態表 2: 参照)。
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表 2
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多発性骨髄腫の様々な発現形態
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型
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特徴
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髄外性形質細胞腫
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骨髄の外部に生じる形質細胞腫
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骨の孤立性形質細胞腫
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通常M蛋白を産生しない単一の骨の形質細胞腫
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骨硬化性骨髄腫(POEMS症候群)
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多発ニューロパシー(慢性炎症性多発ニューロパシー)(Polyneuropathy),臓器肥大(肝腫,脾腫,またはリンパ節腫脹)(Organomegaly),内分泌障害(例,女性化乳房,精巣萎縮)(Endocrinopathy),M蛋白,および皮膚の変化(例,色素増加症,多毛症)(Skin
changes)
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非分泌型骨髄腫
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血清中や尿中にはM蛋白が存在しない;形質細胞中にM蛋白が存在する
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症状と徴候
持続性の骨痛(特に背部と胸郭において),腎不全,再発性細菌感染症が最も一般的な症状である。病的骨折が一般的であり,脊椎圧迫骨折は脊髄圧迫や対麻痺へ進展することもある。貧血症状は症状の大半を占め,一部の患者の評価に対する唯一の理由づけとなる。少数の患者に過粘稠度症候群の症状がみられる(形質細胞疾患: 症状と徴候を参照 )。末梢神経障害,手根管症候群,異常な出血,および高カルシウム血症の症状(例,多尿症,多渇症)が一般的である。リンパ節腫脹や肝脾腫はまれである。
診断
多発性骨髄腫は,40歳を超え,特に夜間または安静時にみられる持続性の説明のつかない骨痛を有する患者や,その他典型的な症状がみられる患者,または血液もしくは尿中の蛋白値の上昇,高カルシウム血症,腎不全,貧血などの説明のつかない検査異常を呈する患者において疑われる。臨床検査評価には,ルーチンの血液検査,蛋白電気泳動,X線,および骨髄検査などがある。
ルーチンの血液検査には,血算,ESR,および生化学検査などがある。貧血は80%にみられ,通常は積み重なって生じる3〜12個の赤血球の集塊である連銭形成を伴う正球性-正色素性貧血である。白血球数および血小板数は通常正常である。ESRは通常100mm/時間を超え,BUN,血清クレアチニン,血清尿酸がしばしば上昇する。アニオンギャップは時として低い。診断時に高カルシウム血症が患者の約10%にみられる。
蛋白電気泳動を血清に対して実施し,結果が結論に達しない場合は,24時間採尿した濃縮尿サンプルに対して実施する。血清の電気泳動により,患者の約80〜90%においてM蛋白が同定される。残りの10〜20%は通常,遊離単クローン性L鎖(ベンス-ジョーンズ蛋白)かIgDのみである。これらはほぼ必ず尿蛋白の電気泳動によって検出されるM蛋白である。免疫固定電気泳動はM蛋白の免疫グロブリンクラスを同定できるほか,血清免疫電気泳動が偽陰性の場合にしばしばL鎖蛋白を検出できる;血清検査が陰性であっても多発性骨髄腫が強く疑われる場合には実施される。β2ミクログロブリンの血清値がしばしば上昇し,骨髄腫細胞量と相関する。
X線は骨検索を含む。打ち抜き像の溶解性病変,またはびまん性の骨粗鬆症は症例の80%にみられる。放射性核種骨スキャンは通常有用ではない。MRIではより詳細な内容が得られ,痛みか神経症状がみられる場合および単純写真では診断がつかない場合に実施する。
骨髄穿刺と生検は通常実施される。これらにより,骨髄腫の診断につながる形質細胞の層または集塊が明らかになる。しかしながら,骨髄浸潤は斑状であり,判明するのは成熟の様々な段階にある形質細胞数の増加のみの場合もある。骨髄形質細胞数が正常なことはまれである。形質細胞の形態は,合成される免疫グロブリンのクラスと相関しない。
血清M蛋白をもつ患者において300mg/24時間を超えるベンス-ジョーンズ蛋白尿,骨溶解性病変(転移性癌または肉芽腫性疾患の証拠を除く),骨髄形質細胞の層または集塊の存在は骨髄腫を示唆する。
予後と治療
この疾患は進行性であり,生存期間中央値は従来の治療法の場合は約3〜4年であり,高用量療法および幹細胞移植による場合は4〜5年である。治療は患者の約60%において,生活の質と生存期間を改善する。診断時にみられる好ましくない予後の徴候には,血清中または尿中の高レベルのM蛋白,血清β2ミクログロブリン値の上昇(> 6 μg/mL),びまん性の骨病変,高カルシウム血症,貧血,および腎不全などがある。
様々な支持療法を必要とする。歩行運動を続けることは骨密度を保つのに有用である。鎮痛薬および症状緩和を目的とした線量の放射線療法(18〜24Gy)により痛みを軽減できる。しかしながら,放射線療法は患者が全身化学療法の細胞毒性用量に耐える能力を損ねてしまうことがある。全ての患者は,骨部病変を減らし骨痛を緩和するビスホスホネートの投与も受けるべきであり,これにより抗腫瘍効果も得られうる。
十分な水分補給は,腎臓がさらに損なわれるのを防ぐ。高度のベンス-ジョーンズ蛋白尿症(10〜30g/日以上)が長期間続いている患者でも,尿排出が2000mL/日を超えていれば,腎機能が正常なままの場合もある。高浸透の静脈内造影剤の投与とともにみられる脱水症は,ベンス-ジョーンズ蛋白尿症の患者において急性の乏尿性腎不全を促進することがある。
水分補給およびビスホスホネート,時にプレドニゾン60〜80mg,経口にて1日1回投与との併用は,高カルシウム血症の治療に用いられる。大半の患者にはアロプリノールの投与は必要ではないが,腎不全を呈する場合や高尿酸血症が症状を引き起こす場合には,300mg,経口にて1日1回の投与が適応となる。
感染症予防には,肺炎球菌およびインフルエンザのワクチンが適応となる。抗生物質は明らかな細菌感染症が証明された場合に適応となるが,予防的な使用はルーチンには推奨されていない。予防的な免疫グロブリンの静注は感染のリスクを低下させるが,再発性感染症の患者のために用いるのが一般的である。
遺伝子組み換えエリスロポエチン(40,000単位,皮下に週毎)は,化学療法では貧血が十分に軽減されない患者に用いる。貧血が心肺症状を引き起こす場合には,濃厚赤血球を輸血する。過粘稠を来す場合は,プラスマフェレーシスが適応となる(形質細胞疾患: 症状と徴候を参照 )。化学療法の反応は,血清中または尿中のM蛋白の減少によって示される。感染症は特に,化学療法誘発性の好中球減少時に起こりやすい。
従来の化学療法は,経口投与のメルファラン(0.15mg/kg,1日1回)およびプレドニゾン(20mg,1日3回)を6週のサイクルとし,3〜6カ月で反応の評価を行う構成である。多剤併用化学療法を様々な静注薬物の組み合わせを用いてもよい;これがメルファランとプレドニゾンに比べ全治療成績を改善することはないが,腎機能不全の患者において,より迅速な反応をもたらしうる。自己末梢血幹細胞移植は,70歳未満で心臓,肝臓,肺,腎臓の機能が十分であり,特に,従来の化学療法を数コース受けた後に疾患が安定しているか,または反応がみられる患者に対して考慮される。これらの患者は初めにビンクリスチン,ドキソルビシン,およびデキサメタゾン,またはデキサメタゾンおよびサリドマイドの併用による化学療法を受ける。補助として骨髄系の成長因子を投与し,アルキル化剤およびニトロソウレアなど幹細胞を死滅させる薬物は避ける。メルファランの複数回コースが自家移植の結果を改善するか否かについては,研究中である。骨髄非破壊的療法(例,低用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンまたは放射線療法)後の同種幹細胞移植は,毒性の低下とドナーの同種免疫の抗骨髄腫効果により,一部の患者において骨髄腫の再発のない5〜10年の無病生存をもたらす。この治療は生理的予備能が良好な55歳未満の患者に適応となる。再発性または難治性骨髄腫において,新たな治療法(例,サリドマイド,免疫調節薬,プロテアソーム阻害薬)は反応をもたらすことがある;これらの薬物は初期の疾患の第一ラインの治療法としても評価中である。
維持療法は,インターフェロンなどの非化学療法薬を使って試行されているが,インターフェロンは寛解を延長するものの副作用がある。コルチコステロイドについては評価中である。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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