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原発性ヘモクロマトーシスは,組織損傷を引き起こす過度の鉄の蓄積により特徴づけられる遺伝性の障害である。症状は,臓器障害がしばしば不可逆的となるまで出現しない。症状は,疲労,肝腫,青銅色皮膚色素沈着,性欲消失,関節痛と,肝硬変,糖尿病,または心筋症の呈示を含む。診断は血清鉄検査および遺伝子検査に基づく。治療は連続的に瀉血を行う。
病因と病態生理
原発性ヘモクロマトーシスは,ほぼ全てがHFE遺伝子の突然変異により引き起こされる。非HFE原発性ヘモクロマトーシスはまれであり,フェロポルーチン病,若年性ヘモクロマトーシスのほか,ごくまれに新生児のヘモクロマトーシス,低トランスフェリン血症,および無セルロプラスミン血症などが含まれる。これらの鉄過剰の臨床結果は全てのタイプにおいて同様である。
HFE関連のヘモクロマトーシスの80%以上は,ホモ接合体C282YまたはC282Y/H63D複合ヘテロ接合体変異により引き起こされる。この障害は常染色体劣性であり,北ヨーロッパ人ではホモ接合体をもつ頻度が1:200,ヘテロ接合体をもつ頻度が1:8である。これは黒人には一般的ではなく,アジア人ではまれである。臨床的ヘモクロマトーシスの患者の83%はホモ接合体である。鉄過剰のメカニズムは,消化管からの鉄吸収が増加し,組織内での鉄の慢性的な沈着に至るというものである。ヘプシジンという最近同定された肝臓由来のペプチドは,鉄吸収に対して重大な意味をもつ制御メカニズムである。ヘプシジンは正常HFE遺伝子とともに,正常な個体において鉄の過度の吸収と貯蔵を予防する。
全身鉄量は50gまで上昇することがあるが,正常値は女性で約2.5g,男性で約3.5gである。臓器内の鉄沈着は,反応性遊離ヒドロキシル基の生成を触媒する。
症状と徴候
症状が中年以前にみられることはまれである。罹患した男性の80〜90%において,症状が発現する前の全身鉄貯蔵量は10gを超えている。女性では,症状が閉経前にみられることはまれであるが,これは月経時と妊娠中の鉄喪失によってヘモクロマトーシスがいくらか防御されることによる。
鉄は複数部位に蓄積されるため,症状は可能性のある多くの臓器に起因して,または全身的に発現しうる。女性では,疲労や非特異的な身体症状が初期に発現する;男性では肝硬変や糖尿病がしばしば初発症候となる。性腺機能低下症は男女ともに一般的にみられるうえ,他の症候よりも前に発現することがある。肝疾患は最も一般的な合併症で,肝硬変に進行する症例の約20〜30%はさらに肝細胞癌へと進行する。未治療患者の10〜15%に心不全が;90%に過度の皮膚色素沈着が;65%に糖尿病とその後遺症と考えられる疾患(腎症,網膜症,ニューロパシー)が;そして25〜50%に関節症が発症する。
診断
ヘモクロマトーシスは典型的な症状,特に説明のつかない肝臓の異常を呈する患者と,家族歴のある患者において疑われる。症状は組織が損傷して初めて発現するため,症状発現前の診断が望ましい(が,困難である)。仮にヘモクロマトーシスが疑われる場合は,血清鉄,血清トランスフェリン飽和度,血清フェリチン,遺伝子検査などの検査を行う。
血清鉄が増加する(>300mg/dL)。血清トランスフェリン飽和度は通常50%を超え,しばしば90%を超える。血清フェリチンが増加する。遺伝子検査で診断を確定する;先天性溶血状態(例,鎌状赤血球貧血,サラセミア)などの鉄過剰の非遺伝的メカニズムを除外しなくてはならない。肝臓の鉄量は,撮像可能な場合には,MRI像の高信号により推定できる。肝硬変は予後に著明な影響を与えることから,血清フェリチンが予想外に高値(例,1000を超える値,ただしカットオフ値は年齢および肝酸素レベルにより調整する必要がある;年齢は血清フェリチン値を上昇させ,肝酵素レベルの上昇は血清フェチリン値を低下させうる)の場合には,肝生検を行う。肝臓の鉄量を測定することで,組織への鉄沈着をさらに裏づけることもできる。
原発性ヘモクロマトーシスを有する人の第一度近親者は,スクリーニングを受けるべきである。C282YおよびH63Dについての検査で同定される症例は,95%を上回る。
治療
瀉血は,ほとんどの症例において過剰な鉄を除去する最も単純な方法である。これは生存期間を延長するが,肝細胞癌を予防するものではない。診断がなされたらすぐに,約500mL/週の血液(約250mgの鉄)を,血清鉄の値が正常になり,トランスフェリン飽和度が50%未満になるまで毎週除去する。数年間は瀉血を毎週行う必要がある。鉄の値が正常になっても,トランスフェリン飽和度を30%未満に維持するため,瀉血は実施する。糖尿病,心臓の異常,勃起機能不全,およびその他の二次性症候は,適応に基づき治療する。
フェロポルーチン病
フェロポルーチン病は主として南ヨーロッパ人に発生する。これはSLC 40
A1遺伝子において,常染色体優性変異により生じる。10歳未満において,トランスフェリンが低値または正常のまま血清フェリチンが増加し,20〜30歳代で漸進的なトランスフェリンの飽和が起こる。臨床症候はHFE疾患より穏やかで,中等度の肝疾患と軽度の貧血を呈する。強力な瀉血への忍容性は不良である;ヘモグロビンとトランスフェリン飽和度の継続的なモニタリングが求められる。
若年性ヘモクロマトーシス
若年性ヘモクロマトーシスはまれな常染色体劣性疾患であり,転写蛋白質ヘモジュベリンに影響を及ぼすHJV遺伝子の突然変異による。この疾患はしばしば青年期にみられる。フェリチン値は1000を超え,トランスフェリン飽和度は90%を上回る。症状と徴候には,進行性の肝腫および低ゴナドトロピン性性腺機能低下症などがある。
トランスフェリンおよびセルロプラスミン欠乏
(低トランスフェリン血症/無トランスフェリン血症;無セルロプラスミン血症)
トランスフェリン欠乏では,吸収された鉄が非トランスフェリン結合鉄として門脈系に入り,肝臓に沈着する。続く赤血球産生部位への移動は,トランスフェリン欠乏によって低下する。セルロプラスミン欠乏では,Fe2
+からトランスフェリンに結合するのに必要とされるFe3
+への変換が,フェロキシダーゼの欠如により阻害される;これにより鉄の細胞内貯蔵から血漿輸送への動きが損なわれ,組織に鉄が蓄積する。
この移動障害は,年齢の早い段階で発症する鉄過剰を呈する患者において,または遺伝子検査の結果は正常ながら鉄過剰が判明する時点で疑われる。診断は,血清トランスフェリン(すなわち,鉄結合能)とセルロプラスミン(ミネラルの欠乏症および中毒症: 先天性銅中毒症を参照 )の測定に基づいて行う。治療は実験的である。
ヘモクロマトーシスの常染色体劣性の型は,トランスフェリン飽和度を制御するとみられる蛋白質のトランスフェリン受容体2の突然変異とともに生じる。症状と徴候はHFEヘモクロマトーシスに類似している。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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