|
悪性腫瘍は疼痛,衰弱,ニューロパシー,悪心,食欲不振,発作,高カルシウム血症,高尿酸血症,または閉塞を引き起こす。死亡は,典型的に1つまたは複数の器官系の突然または進行性の不全の結果として生じる。
転移癌の患者の疼痛は多くの場合,骨転移や,神経,神経叢への浸潤,腫瘍腫瘤や滲出液による圧迫によって起こる。積極的な疼痛管理は癌の治療において,また生活の質の維持のために不可欠である(疼痛: 疼痛の治療を参照 )。
心タンポナーデは悪性心嚢液に起因することがあり,しばしば突発的に起こる。最も一般的な原因は乳癌,肺癌,そしてリンパ腫である。先行する滲出液は,漠然とした胸痛や,仰臥位になると悪化し立つと改善する圧迫感を引き起こすことがある(心膜炎: 心タンポナーデを参照 )。タンポナーデを伴う患者は,心拍出量減少の徴候および症状を経験することがある(例,めまいまたは失神)。身体診察において,心臓の徴候として心音鈍化が認められ,また摩擦音や奇脈がみられることもある。X線写真は球状の心陰影を示す。診断と治療目的のために心膜穿刺を行うべきであり,また心胸膜窓や心膜切除術を検討すべきである。
胸水については,症状があればドレナージを行い再貯留を監視すべきである。滲出液が再び急速に溜まるようであれば,胸腔切開チューブドレナージ(肺の診断と治療に関する手技: 胸腔ドレナージを参照 )と硬化剤,またはカテーテルドレナージの繰り返しが検討されるべきである。進行した悪性疾患における難治性の胸水には,緩和目的の胸膜切除術が行える。
脊髄圧迫(脊髄障害: 脊髄圧迫を参照 )は侵攻性の癌の拡散と増殖に起因しうるものであり,即時の注意が必要である。症状には背痛,下肢の感覚異常,腸および膀胱の機能不全などがある。診断はCTまたはMRIで確認する。治療は直ちに開始すべきであり,通常はコルチコステロイド,放射線療法,手術,またときに化学療法で構成される。
診断
完全な病歴聴取と入念な身体診察が,初期の癌の予想外の手がかりを明らかにすることがある。
病歴:
医師は罹患しやすい因子を認識し,家族の癌,環境暴露(喫煙歴を含む),以前または現在の病気(例,自己免疫疾患,以前の免疫抑制療法,B型肝炎およびC型肝炎,HIV感染,パパニコロウ検査での異常,またはヒトパピローマウイルス感染)に関して具体的に質問する必要がある。潜在癌を示唆する症状には,疲労,体重減少,発熱や寝汗,咳,喀血,吐血や血便,排便習慣の変化,持続性疼痛などがある。
身体診察:
身体診察では,特に皮膚,リンパ節,肺,乳房,腹部,精巣に留意すべきである。前立腺,直腸,腟の内診も重要である。
検査:
検査は症状を呈する患者に実施され,血清腫瘍マーカー,分子検査,画像診断法,生検などがある。
血清腫瘍マーカーは特異的な悪性腫瘍を示唆する所見がみられる患者において,裏づけとなる証拠を示すものである(腫瘍免疫学: 腫瘍免疫診断を参照 );これらのマーカーはスクリーニングとしては有用ではない。αフェトプロテインは肝細胞癌および精巣癌において,癌胎児抗原は結腸癌において,βヒト絨毛性ゴナドトロピンは絨毛癌や精巣癌において,血清免疫グロブリンは多発性骨髄腫において,DNAプローブ(例,第22染色体の変化を同定するためのbcrプローブ)は慢性骨髄性白血病において,CA 125は卵巣癌において,CA
27-29は乳癌において,前立腺特異抗原および前立腺酸性ホスファターゼは前立腺癌において上昇する。腫瘍マーカー試験を特異的な臓器関連の評価に限定することは,偽陽性検査結果を最小限に抑えることであり,腫瘍の見落としにはつながらない。
分子検査では,腫瘍の亜型(例,リンパ腫,白血病)を明示し,原発不明癌(例,肺癌)由来の転移癌の起源を明らかにし,遺伝的(または後天的)な化学療法耐性の認識に役立つように,遺伝子発現プロファイリング(ゲノミックスマイクロアッセイ法)およびプロテオミクスを用いる。
画像診断法には,しばしば単純X線や音波検査,CTスキャン,MRIが含まれる。これらの検査は異常の同定,腫瘤の質(固形または嚢胞性)の判定,大きさの呈示,周辺組織との関係の確定に役立ち,手術または生検を検討中の場合は,これらの検査が重要になる。
診断と起源組織を確定するための生検は,癌を疑う場合や検出する場合にはほぼ常に必要である。生検部位の選択は通常,到達のしやすさと浸潤深度で決定される。リンパ節腫脹がある場合は,細針生検またはコア生検により腫瘍の型を得る;診断がつかない場合は,直視下生検を行う。その他の生検経路には,縦隔または中央の肺腫瘍に到達しやすい気管支鏡検査,肝病変がある場合の経皮的肝生検,CTガイド下または超音波ガイド下の生検などがある。これらの手技が適さない場合は,直視下生検が必要となる。腫瘍医と外科医に意見を求めるとよい。
病期分類
一旦組織学的診断がなされれば,病期分類(すなわち,疾患の広がりを決定する)が治療法および予後を決定するのに役立つ。臨床病期分類には,患者の病歴,身体診察,および非侵襲性検査から得たデータを使用する。病理学的病期分類には組織標本が必要である。(特定の腫瘍の病期分類に関する詳細は,臓器関連の章を参照のこと。)
縦隔鏡検査(肺の診断と治療に関する手技: 縦隔鏡検査および縦隔切開を参照 )は特に非小細胞肺癌の病期分類に有用である;この検査により縦隔リンパ節の浸潤が示される場合,通常その患者は開胸と肺切除から恩恵を得られないが,化学放射線療法とその後に行う腫瘍切除からは恩恵が得られる。
骨髄穿刺と骨髄生検は,特に悪性リンパ腫および小細胞肺癌からの転移の判定に有用であり,また乳癌および前立腺癌においてその役割が広がりつつある。骨髄生検は,悪性リンパ腫(低悪性度および中悪性度)の患者の50〜70%と小細胞肺癌患者の15〜18%において診断時に陽性である。骨髄生検は,他の機構では説明がつかない血液学的異常(すなわち,貧血,血小板減少,汎血球減少)を呈する患者に,または既知の血液悪性腫瘍を有する患者に実施すべきである。
リンパ節生検は通常,リンパ節の評価の一部を成す。所属リンパ節に対しては,前立腺癌および乳癌の治療期間中にしばしば生検が実施される。
血清化学と酵素は病期分類の助けとなる。肝酵素(アルカリホスファターゼ,LDH,ALT)の上昇は肝転移の存在を示唆する。アルカリホスファターゼと血清カルシウムの上昇が,骨転移の最初の証拠となりうる。酸性ホスファターゼ(酒石酸で阻害される)の上昇は,前立腺癌のカプセル外浸潤を示唆する。絶食性低血糖はインスリノーマ,肝細胞癌,または後腹膜肉腫を示す。BUNやクレアチニンの値の上昇は,骨盤部腫瘤に続発する閉塞性尿路症,骨髄腫蛋白の尿細管内析出による腎内閉塞,リンパ腫や他の癌による尿酸腎症を示す。骨髄増殖性またはリンパ増殖性疾患では尿酸値がしばしば上昇する。
画像診断法,特にCTとMRIは,脳,肺,脊髄,または副腎,後腹膜リンパ節,肝臓,脾臓を含む腹部臓器への転移の検出が可能である。MRI(ガドリニウム造影剤を使用)は,原発性および転移性双方の脳腫瘍の確認と評価に選択される手技である。PETスキャンは癌が疑われる腫瘤の代謝活動の判定に利用が増えており,病期分類,治療,および予後に不可欠な情報を提供する。CTとPETの併用は,特に肺癌,頭頸部癌,乳癌,およびリンパ腫において利用価値がある。他の癌への画像診断法の利用については研究中である。
超音波検査は眼窩,甲状腺,心臓,心外膜,肝,膵,腎,後腹膜領域の検査に使用される。超音波検査のガイド下で経皮生検を行うことができ,悪性腎細胞癌と良性腎嚢胞を鑑別できる。
核スキャンは転移のいくつかのタイプを同定できる。骨スキャンは,異常な骨成長(すなわち骨芽細胞の活性)を単純X線上で見える前に同定する。したがって,この技術は純粋に溶解性の腫瘍(例,多発性骨髄腫)の場合は役に立たない;そのような疾患にはルーチンの骨のX線撮影が選択される。
悪性度分類
悪性度分類は,腫瘍の侵攻性の組織学的な尺度である。これは核酸,細胞質,核小体の外観;有糸分裂の頻度;壊死の量など,腫瘍細胞の形態学的外観に基づく生検から判定される。多くの癌の悪性度分類のスケールが開発されている。
スクリーニング
スクリーニング検査はリスクがある無症状の人に実施される。その理論的根拠は,早期診断が癌死亡率を低下させ,過激な治療を減らし,医療費を下げうるからである。しかしながら,偽陽性の結果により確認のための検査(例,生検,内視鏡検査)が必要となり,そのことが不安や有意な病的状態,医療費増大を招いたり,あるいは偽陰性の結果により誤った安心感を与えて患者にその後の症状を無視させかねないリスクもある。
以下のときに癌スクリーニングを実施すべきである;明らかなハイリスクグループ(例,特定の感染症,暴露,または行動がある者)が同定でる;無症状の時期に治療することで結果が変わる疾患;罹病率が著しい;病態の自然史を変えるうえで受容可能かつ有効な介入が利用できる。
スクリーニング検査自体は以下の基準を満たすべきである:
推奨されるスクリーニング計画は,進行中の研究に基づき常に進化している(
癌の概要: 米国癌協会推奨の平均的リスクのある無症状の人におけるスクリーニングの手技表 4: 参照)。
|
表 4
|
 |  |  |
|
米国癌協会推奨の平均的リスクのある無症状の人におけるスクリーニングの手技
|
|
癌の種類
|
手技
|
頻度
|
|
乳癌
|
乳房の自己検査
|
20歳以降は毎月
|
|
|
乳房の身体診察
|
20〜39歳は3年毎;その後は毎年
|
|
|
マンモグラフィー
|
毎年,40歳から開始
|
|
子宮頸癌
|
パパニコロウ(Pap)検査
|
性的に活発な女性は全て毎年,または18歳で開始*
|
|
子宮頸癌,子宮癌,および卵巣癌
|
内診
|
18〜40歳は1〜3年毎;その後は毎年
|
|
前立腺癌
|
直腸診および前立腺特異抗原のための血液検査
|
50歳(またはハイリスクグループにおいては45歳)以降は毎年
|
|
直腸癌および結腸癌
|
便潜血反応検査または
軟性S状結腸鏡検査または
大腸鏡検査
|
毎年,50歳から開始
5年毎,50歳から開始
10年毎,50歳から開始
|
|
*診察で正常が3回以上続いた後は,医師の裁量でパパニコロウ検査の頻度を減らしてもよい;65歳以上の女性のほとんどはパパニコロウ試験をあまり頻繁に必要としない。
|
|
Modified from the American Cancer
Society guidelines published in Cancer J Clin 2002;52:8–22.
|
|
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
|